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魔法の宝石を手に入れたら聴覚障害になった  作者: はにょ
第三章 カナタの闘病生活
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■■

 カナタが気が付いたとき、いつものベットに点滴をつながれ寝かされていた。

「…………ぁ」

 話そうと声を出そうとしたのだが声が出ない。咳が原因で気管支炎になっているのだろうか。


「カナタ、気づきましたか」

 覚醒に気づいたのか、虫の羽音ほどの声が届いたのか不明だが、シロが声を掛けてくれた。


「あんた、死にたいんですか? そんな体でタバコを吸うなん…………。そもそも付き添わなかった俺が悪かったです。ごめんなさい。教会のシスターが知らせてくれたんですよ? カナタの入れ墨を見て、暗黒盗賊団だって知ってくれていたみたいですね」

 暗黒盗賊団はこの村で医療行為を行っている。

 拠点としては、カナタが療養している小屋とは別に、ホームのドッグの近くのクリニックで手伝いをしたり、天幕を張り臨時営業している場所がある。

 村全体に名前が知れ渡っていたのだろう、教会のシスターが暗黒盗賊団が手伝っているクリニックに電話をくれたのだ。なので、シロがすぐに駆けつけられたのだった。


 この日をきっかけに、声が出なくなったカナタは自ら言葉を発することが出来なくなった。



<数か月後>


 カナタはあれから極端に行動範囲が狭まった。自身の間抜けな行為を恥じたのだろうか。ベットの上ですべてを完結させた。


 少しは歩きましょう。リハビリですリハビリ!! と何度もシロらが声を掛けてくれたが乗り気せず、無視し続けた。やがて、無理やりベットから引きずり出される前に、呼吸の筋肉を含めて全身の筋肉がやせて力がはいらなくなり、一歩たりとも歩けなくなった。


 完全にベットに寝たきりになった。よだれや痰が増えた。

 食べ物をかむのに疲れ、食事に時間がかかって疲れてしまい、食べ物が誤嚥してしまう。

 食事の楽しみはなくなり、点滴にて栄養を取るようになった。


 腕の力が弱くなり物をつかむことも困難で、自身で水を飲むことすらできない。

 シロが定期的に様子を見にやってくる。シロはおれ専属の看護師になっていた。そんなことさせるために盗賊をしていたわけじゃないのに……。


 のどの筋肉の力が入らなくなり、構音障害で声を出しにくかったり水や食べ物ののみこみもできなくなる。


「カナタ、水です」

 シロが言いながら水差しをカナタの口元に持ってきてくれる。

 嚥下障害が起き、上手く呑み込むことが出来ないため飲みこむことに集中する。しかし……。


「ぅ、っ、ゲホッ、ゲホゲホ、ゲホゲホゲホ」

 噎せて水を口から噴き出してしまった。大丈夫ですか、と言いながらシロが一定のリズムで背中を擦ってくれる。水差しをテーブルに置き直し、タオルで口元を拭いてくれた。



 関節に炎症が起こり、骨に痛みや全身の臓器や組織に異常が現れるようになった。

 手足や顔面の筋肉がこわばって固くなったり、手足がふるえたり、動作がきわめて鈍くなる。また顔の表情に変化がなくなる。筋肉、腱、靱帯などに非常に激しい痛みやこわばりを伴う。全身の疲労感、倦怠感、睡眠障害なども起こる。


 一般に、温めることで症状を緩和できる。関節周囲の組織の緊張が解けこわばりがとれ、関節がゆるみ動きやすくなる。

 また血管が広がって血行が促進され痛みやこわばりがとれるといった効果がある。


 体のこわばりを緩和させるために、全介護でお風呂で体全体を温めて血行を良くしたり、膝かけやカイロを使って冷やさないように工夫してくれた。



<数か月後>


「……はぁ……はぁ、は、……う、」

 呼吸筋が弱まると呼吸も十分にできなくなる。ずっと横になっていたからか息苦しい。カナタはそう思ったが、体を起こしたいが腕に力が入らない為、うまく体を起こすことが出来ず、ベットから落ちてしまった。


(くそ、思うように動かない体にイライラする……)

 ドンッ! という音でうたた寝していたシロが起きた。カナタは地べたに突っ伏してしまった。


「カナタ! 大丈夫ですか?」

「はぁはぁ……ヒューッ……ぅ、ッ、ぁ」

 息が苦しいから起きたいと伝えるために何とか声を出そうとするも、喉は詰まった息を喘ぐようにしか鳴らないし、手話をするにも手が震えてできない。


「は、は、……かっ、ふ、」

 何とかシロに自分の意思を伝えようと目で訴えながらもだえ苦しむ。

 シロはカナタを床から持ち上げ自身に正面から抱えるように抱く。

 言いたいことが伝わったのだと心なしか安心した。


「大きく息を吸って……吐いて……」

 シロが背中をゆっくりさすりながら、整わない息を鎮めるために、一緒に落ち着かせるように呼吸をし続けてくれた。呼吸困難に陥りかけたがシロの助けがあって、悪化せずに済んだ。


 呼吸が正常に戻ったのだから、もうシロの抱擁は必要ない、なのに苦しかったからか、弱音なんて吐きたくないのに不安感が襲う、さびしい。


「……ペ、ン……」

 もう大丈夫だと胸を押し返すべきなのに、あろうことか抱擁しかえしていた。

(おれは一体なにを……)

 子供がママのぬくもりを求めるように欲望のまま行動していた。


「ん? どうしました? まだ苦しいですか? どこか痛いですか? 温めましょうか?」

 シロが安心させる声質で質問する。シロが態勢を変えることなく背中を擦り続けてくれる。もう落ち着いたのだから労力の無駄だ、特に用はない、というかさんざん看病してもらい用は終わったはずだった。


 ふいに昔のことを思い出した。盗賊になる前のまだ出会って間もない頃だ。

 当時はお互い子供だった。今でも十分若いが。

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