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水仙に咲く彼岸花  作者: 雪村蓮
姉妹校交流会編
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第16話

 黄金水仙隊。

 邪蓮華の誕生に伴い台頭した自警団は、西都を中心に勢力を拡大した。

 教育機関と防衛省は黄金水仙隊と協定を結び、科目に訓練を組み込む学園を設立。


 黄金水仙隊の血族が多い、西の黄昏学園の方が層は厚いと言われるの当然であった。

 事実勝敗数は四十九対十一と黄昏学園の方が圧倒的に多い。強い人材を育成するための土台が最初から揃っていた西都と、一から組んだ東都では全く違う。

 剣術の支援が手厚いのが西都ならば、射撃術の支援ならば東都という具合である。


「只今より第六十一回目姉妹校交流会を開催いたします」


 アナウンスが聞こえた桃園はスマホを持つ力を強める。

 生徒会室で一人、椅子に腰をかける桃園の顔はどこか険しい。画面にはcoming soonの文字が浮かんでおり、現場の状況が映るのはまだ先だ。

 舞台の廃モールには複数のドローンと監視カメラが配置されており、リアルタイムで観戦できる姉妹校交流会。

 リンクを踏めば誰でも見られる生配信方式であり、アナウンスを担当するのは黄金水仙隊の徒花隊と朝凪隊の人間だ。

 この配信は暁天、黄昏のみではなく黄金水仙隊にも見られている。


「選手紹介を始めます。黄昏学園三年生九条一鶴くん」

「今日一番の注目株ですよねー」

「昨年での活躍は我々も目を見張るものがありますからねぇ」


 九条一鶴がスマホに映る。表情は和やかで有るが、やはり高校生とは思えない貫禄がある青年だ。不思議と下に見れないような威圧感がある。


「同じく三年、京極千鶴くん、二宮竜也くん」


 初めてみる顔がスマホに映し出される。二宮は槍を、京極はクロスボウを持ち待機している姿が見られた。

 交流会での殺害は勿論法に則り禁止されているのでクロスボウの矢にはクッションが装着されている。同様に拳銃はペイント弾を使用している。

 戦闘不能判断を下すのは、駐車場で待機する審判だ。


「続いて二年生、菊池鈴鹿くん、物部天馬くん、柳虎太朗くん。一年生、一ノ瀬蛍くん」


 次々に画面に映っていく黄昏学園の生徒を確認し、桃園はスマホを机の上に置いた。

 画面から暁天学園の生徒の選手紹介が始まるが桃園の意識は窓の外へと向けられている。五月にしては青々とした空が目に毒で、目を細める。


「ここにいたんだ飛鳥ちゃん」


 桃園が視線を扉にやれば、長身の男子生徒が立っていた。

 温和な笑みを見た桃園は先程までの険しい表情を緩めて笑顔で迎え入れる。


「どうしたの有明くん」

「クラス見に行ったらいなかったからさ、生徒会室に居るんじゃないかなって思って。当たっててよかった。隣、座ってもいい?」

「いいよ」


 椅子を桃園の隣に引き寄せた有明は、笑みを絶やさず自らのスマホを近くにあったファイルを使い立てかけた。

 遠くにいる幼馴染が画面に映ったのを確認し、有明は背もたれに背中を預ける。

 すっかりと初夏に染まった空と塗装の剥げたモールのチグハグさに違和感を感じながら、桃園は自分のスマホの電源を閉じて彼氏である有明の手を握った。


「珍しいね、学校で」

「ダメだった?」

「いいやー、嬉しいよ」


 有明が気恥ずかしそうに耳を染める。

 普段の彼からは想像できない程赤くなっており、幼馴染の朝凪ですら知らない惚れた相手にだけ見せる顔。

 桃園は有明の態度に眉を下げて画面に向き直った。


 

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