クリスタル・ロード 0306 アイリスの母、帰還する
アイリスの様子を見るためにリーシャとともにギルドに向かっていると後ろから勢いよく蹄の音が響いてきた。
「危ないぞ~ どいたどいた~~~っ !!」
こちらは道の端を歩いているので問題ないが、威勢よく駆け抜けて周りの人等は驚いている。
早馬だろうか、緊急事態でも起きたか? もしやこちらにも戦火なのか?!
「アイリス、アイリスはいるか~~っ 」
馬から飛び降りた人が、ギルドのドアを勢いよく開けて叫びながら駆け込んでいった。
「いま、アイリスって言った?」
「言ったな、 知り合いだろうか」
ギルドの前に残された大柄で逞しい馬は息が絶え絶えで可哀想なほどだ。
手綱を繋いで水桶を前に置いてやると飲み始めた。
「何を騒いどるか、静かにせい!!」
奥から怒鳴り声が聞こえて来た。 あれはギルド長である。
入っていくと先程の人(女性?)にギルド長が向かって睨みつけている。
「アイリスはどこだ? 会うために帰ってきたぞ、いるんだろうな? どこだアイリスは?!」
「やかましい! 帰ったら挨拶ぐらいしたらどうだ。 この放蕩者が!」
「アイリス~~ 母さんが帰ってきたよ~~っ お土産あるぞ~~~っ」
ギルド長の脇を抜けて奥へ行こうとしたところ、襟首を掴まれた。
「待てい、 アイリスに会う前に説教と風呂だ! 汚れたなりをしおって」
「何だよ兄貴、離せよ~~ アイリス~~~っつ」
その人はギルド長に引きずられるように奥へと消えていった。
周りの大半の人はポカンと見守り、数人は呆れたような顔で頷いている。
「いまのがアイリスのお母さん? なんか想像と違うと言うか・・・」
「うん、 なんだかワイルドな人だな」
始めは男かと思ったほどで、皮の上下、ジャケットとズボン。 少し汚れているし、髪は短め。
カウボーイのような雰囲気だから。
「アイリスのところ、行って良いかな? 私達」
「良いんじゃないかな? ついでにあの人に挨拶できれば済ませよう」
二人でゆっくりと奥へ進むと、職員に止められることもなくいつものように入ることができた。
アイリスのいる二階へと階段を上がっていくと、ドアを開けて廊下に顔を出したアイリスがいる。
「今、お母さんの声が聞こえたような・・」
寝ていたのだろうか、夢うつつのような顔で立ち尽くしているアイリスに今のことを話すと、慌てて階段を降りていくので二人で追いかけギルド長のドアの前まで来た。
「なんだよ、風呂も説教も後でいいよ! アイリスに会わせろ。 どこだ~」
「黙らんか、 こんな汚いのを会わせられるか。 洗濯してやる、徹底的に!!」
ドアから声が盛大に漏れてくるのでアイリスが勢いよく開けた。
「お母さん!」
「あっ 、アイリス~~ 帰ってきたよ~~~っっ、 お母さんだよ~~~っ お土産あるよ~」
ギルド長に捕まっているのをものともせず、大きな袋を開けるとアイリスにそれを差し出した。
「雪大猫のぬいぐるみ、どう?」
「おっきい」
それはアイリスの体より大きいほどの猫のぬいぐるみ。
白い毛に薄い水色の模様、あれは雪や氷の保護色だろうか。 可愛いと言えば可愛いが大きいな。
でもアイリスはしっかりと抱えて嬉しそうだ。
「ちょうどいい、二人でアイリスを見ていてくれ。 ワシはこいつを洗ってくる!」
「あーもう、そんなの後でいいのに~」
「アイリスの無事は確認できたろ! お前こそ死んでるんじゃないかと思ったぞ、まったく」
風呂場へと引きずられていくのを見てアイリスはホッとしたような顔でぬいぐるみを抱きしめている。
「お母さん、帰ってきた」
「うん、 すごく元気なお母さんだね」
「ギルド長の妹さんだっけ? 意外なほどの元気さだ・・・」
小一時間ほどすると二人が戻ってきた。
簡素な服(男物?)に着替え頭から湯気が少し上がっているあの人が、アイリスの元へと走る。
「元気だった~? 相変わらずお姫様みたいな服だね。 可愛らしいこと!」
「お前に任せとるとアイリスが山賊みたいになっちまうからな」
「おじさんが買ってくれる。 他にも色々ある」
アイリスの服はギルド長が選んでいるとは。 それも凄く意外だが、何も言うまい。
リーシャは暖かく見守っているし。
「この二人はな、いつもアイリスの面倒を見てくれとる、お前からも礼を言え。 今まで一体どこで何をしておった、全部話せ!」
この人、遠くの街で働いているとギルド長から聞いたような気がするが、違ったのか? なんだか想像したのと随分違うようだ。
「あ、ありがとね~ 。 私ずっと修行の旅に出ていたもんだから」
ギルド長に頭を押さえつけられたその人から、そんな言葉が出てきた。 修行とは・・
「最近入った国で戦が始まったから慌てて出国し帰ってきたのよ、危うく死ぬとこだった。 まいったよまったく!」
最近寒くなりましたね、2ヶ月前までは暑いと思ったのに。




