クリスタル・ロード 0290 次の目印
魔物の胃から小さな石が転がり落ちてきた。
ピンクや薄い緑など、宝石のようなものもある。
「おっと、手を出すなよ。 胃液で手がかぶれるぞ」
石細工士がそう言って止め、懐から道具を取り出しそれで石をつまんで日にかざした。
「なかなか良いぞ、 これも、こっちもだ。 傷が少ないからワシが買い取ろうじゃないか、宝石では無いがな」
「確かに、宝石と言うには透明度や色がいまひとつだ」
「でも磨けば良さそうよね、イヤリングとか」
グロフとジョーイが見ている所へリーシャも寄っていくと肩越しに伸び上がって見つめる。
「ホント綺麗、それなら私に買えるかな?」
「おう嬢ちゃん、安くしとくぞ。 あとで見に来い、他にもあるしな」
「私も買おうかな、指輪~~ お姫様みたいなの~」
貴族のお嬢様も興味あるようだ。 子供には宝石でなかろうが関係ないのだろうか、貴族なら宝石は見飽きているのではと思うが・・ フレアは興味なさそうな素振りだし。
「それじゃ他の素材もさっさと集めよう、 すぐ済ませて次はお宝探しだ」
「じゃあ我々も手伝うよ、皆で済ませるぞ」
兵士達も解体をしてくれてすぐに済むことになった。
素材も回収し、食料も余りそうなほどになった。 まだ海産物も残っているのだ。
「やっと私の出番ね、それではしゅっぱ~つ。 急ぎましょうね~」
ミミィが元気良くなって馬に飛び乗り手を挙げて叫んだ。 今まで堪えていたかのようだ。
案内の石細工士も良い石が入ったと機嫌が良く、大きなアルマジロを急かして動き出した。
馬車に魔物による損傷はなく、軽快に進んでいく。
天気は良く、空へ舞い上がっていた砂は徐々に薄くなり、夕方には青空になっていた。
その後、丘で夜を過ごした後やや荒れた地を進んだ頃に目印の場所に着いた。
「ほら、あれじゃないか? あんたの見せた図に似てるだろ」
案内人の指さす先には、岩場がありその出っ張った部分が文字のように見える。
ただ、人口的では無い。 自然にできたように見えるので偶然なのだろう。
「へえ、なるほど。 多分あれがそうね」
「あともう一つの目印か? そりゃあの岩場の上から見えると思うが、登るか? 回り込んで行くこともできるがな」
その岩場は高さ100mほどあるだろうか、歩いて登ることができるとは思うが少し危なそうだ。
「自分が行こうか、岩場なら慣れてるし」
「ワシも行けるぞ、こう見えて山歩きは得意でな。 若いもんには負けんぞ」
日が落ちるまでには戻ってこれるだろう。 ケガさえしなければ。
「じゃあネビィとおじさんに私ね、 確認するだけだからすぐ戻るし」
ミミィを先頭に登ることになって、馬車を中心に他は野営の準備となった。
「暗くなる前に戻れよ、晩飯の準備はしとくから」
「気を付けてね、ネビィ」
「ああ、この程度なら問題ないから」
リーシャが料理の準備をしながら見送ってくれる。 材料は十分あるし美味しい夕食が待っていそうだ。
「この程度なら半時もかからないよね、さて行きますか」
ミミィがスタスタと岩場を登り始めると案内人も身軽そうについていく。
二人とも意外に山歩きに慣れていそうだ。
自分は念ため剣と槍を持って、辺りを警戒しながら慎重に登ることにする。
岩場にも小さい魔物が住んでることがあるのだ。
幸い魔物が出ることもなく、岩場を上がり切ることができ夕日はまだ高く時間は十分だ。
「ほれこの少々先、見えるかな? あんたの言った次の目印、あれだろ?」
見ると少々と言うには遠いところに細い岩が立っているのが見える。
「思ったよりも遠いね、言われないと見落としそう」
「そうか? あの程度よく見えるし近いだろ。 ワシならすぐ行けるがな」
「ほぼ北、やや西かしらね。 距離は一時程度ね、マップに描いておこう」
ミミィが自分の地図を出し、次の目印を描いているが宝の地図とは別の物だ。
横には薬草の絵まで描いてそれらしく偽造している。
表向きは薬草探しだからだ。
その時岩場の脇に花が咲いているのが目に入った。 少し変わった色だがどこかで見たような気がする。
あれはどこだったろうか?
「さて、目印が見つかったし、あとは降りるだけね・・ ネビィは何してるの?」
「ああ、この花ね。 確か良いお茶になるそうなんだ、リーシャに見せられた事があって」
「お茶? 花が? そ・!」
そこまで言ってミミィの言葉が途切れ、驚いたように固まっているが視線は花を越えてその先だ。
何かと思うと、そこには一抱えもありそうな大きく灰色の丸いもの・・ 滑らかな・・・
あれは、 卵だ。
あそこまで大きな卵だと親はどれほどなのか?
「まずい、降りよう!」
「そうだね、ヤバそう。 早く」
「前に来たときはあんな物無かったがな」
慌てて岩場の縁へ向かったその時、後ろから大きな鳥がやって来るのが見えた。
ようやく涼しくなりましたね。




