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クリスタル・ロード 0289  勇者のように

 「魔物・ 来るの?」


馬車の窓から顔を出した貴族の妹が目を輝かせている。


「どれほど? 大群?! 大物いる? 」


兄の方も勢いよく乗り出して上体がはみ出している。


「危ないから乗り出さず、馬車の中にいてください。 我らが撃退します」


 兵士隊長が剣を抜いて馬車を守るように移動した。 

ジョーイとジャンヌの弓担当と、リーシャ親子やフレアの魔法使いは後方を固める。


「おおっと、 わしは馬車の陰(かげ)に入らせてもらうぞい」


案内の石細工師は慌てて後ろへと向かっていった。 

大型のアルマジロ型獣魔は、こんな時も素早く手綱さばきに従っているしあの甲羅なら防御力がありそうだ。


 「俺たちは馬車から離れず仕留めるぞ、いいな」


隊長は兄弟二人を守るのが仕事だからそうせざるを得ない。


「ではこちらが前衛だ。 大物を狙うぞいいな!」


レフがそう叫んで飛び出していく。 まだ勇者の話が尾を引いているのだろうか勇ましい。


「勇者だ~~! 行け~~~、仕留めろ~~~」

「仕留めろー 真っ二つ~~~ 」


あの兄弟も勇者話に染まってノリノリだ。 馬車から落ちなければよいが。

魔物の危険よりソッチのほうがありそうで危なっかしい。


 土煙が段々と近づき大きくなってきた。

向こうは地面が少し低く、藪(やぶ)が遮(さえぎ)りよく見えないが足音が響いてそれなりの数がいる。

そして大きいのが見え始めた。


「来たぞ! 俺が中央のをもらう」


レフが躊躇(ちゅうちょ)無く馬を走らっせていくとグロフがそれに続く。


「では自分が左だ。  右はネビィに任せるぞ!」

「了解」


 そう言ってすぐ、その間から出てきたやや小ぶりの二頭に矢が突き立てられ膝からくずおれた。

ジャンヌとジョーイが既に狙っていたとは、早い。


「やるな! 先をこされたか。 じゃあ俺は大物を献上だ!!」


大型の野牛のような獣が先頭になって向かって来るのをレフがすれ違いざま、斬りかかるとその首から血が吹き出して頭から崩れ、馬車の兄妹から歓声が上がる。   


 グロフは槍を構え、飛び上がって向かってきた獣魔を突き刺し持ち上げて後ろの地面に叩きつけると、またもや兄妹がヤンヤの喝采(かっさい)である。

グロフさえ、なんだか演出しているような気がする。 派手にしていないか?

などと考えている間にこちらに向かってきたのは大きい割に姿勢が低く、地面を這うような走りだ。


 「逃すなよ!」


グロフから声がかかるが、自分とてそんなことはさせまいと馬をギリギリまで寄せて地面を切らんばかりに下に振って斬りつけると、真っ二つに近いような切れ方で頭から胴まで離れた。

またもや兄妹が大喜びだが、教育に悪そうで気が引ける。



 その後には一回り、二回り小さなのが集団で続いているが数が多く取り逃しが多そうに見える。

全部倒せるだろうか。  


 「フレアさん、麻痺魔法をやります、一緒に呪文を」  

「はい先生!」

「リーシャは馬車を防御」


馬車に向かってリーシャも詠唱して兄妹に防壁を掛けると二人の声が遮られて静かになった。

群れが迫り剣を構えたとき、リーシャの母さんが杖を掲げて叫んだ。


「麻痺術(スタン)!」


すると群れ全体が一瞬跳ね上がるように見え、足が止まってもんどり打ち全てが転がって来る。


「おおおお」


 まるで波が崩れるように低く遅く、後ろに広がっていく。

今度は兄妹が唖然として馬車の外を見つめている。

兵士達も同様に口を開けて眺めることになった。    



 「俺達、すること無かったな・・」

「全くだ。  冒険者ってのがこれほどとは、思ったよりできるんだな」


兵士達がぼやきながら麻痺した小物達を次々に仕留めていく。  トドメの後片付けだ。

グロフ達は既に大物の解体を初めていて、兄妹はその様子をコワゴワと眺めている。


「魔石があったぞ、そっちはどうだ」

「小さいのが一つ。  まあしょうがないね、楽な方だし」


 レフ達が魔石の話をしていると石細工士が後ろから寄って眺めている。


「魔石も良いが胃を開けてくれんかな、良い石を飲み込んでることがあるでな。 消化を助けるためで胃石と言うもんだが知っとるか?」


 胃石? 初めて聞いたが、本当だろうか。   


「ああ、聞いたことがあるな。 じゃあ胃を開いてみるか」

「良いのがあればワシが買うからな、よろしく頼む」


グロフは知っているのか・・ 胃の石なんてのを。


「ワシの爺さんから聞いたことがあるが、ドラゴンにもあるらしいぞ。 さすがにドラゴンの胃などめったに見られんがな」

「そりゃそうだな」


 レフが聞いて笑う。  が、ここで何か引っかかった気がした。

ドラゴンの胃にも石・・・・・・

消化を助けるための石が必要、 あの強大なドラゴンでさえ?


「あったぞ」   


 グロフの声がすると石がいくつもこぼれ落ちてくる。

中には宝石のような色のついたのも見えた。




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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