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クリスタル・ロード 0288  またもやドラゴン

「ドラゴンだ!」


大きな竜が高度を下げて迫ってくる。 もうすぐ真上に来るほどに近い。


「なんでこっちに?! まだあの領地にいるはずなのに」

「俺達を追ってきたのか?」

「まさか!」


もしやあの王子が自分に気づいて追ってきたとか? まさか匂いをドラゴンに覚えさせたか?


「まて! あれは違う、手を出すなよ!!」


誰かの声がひときわ大きく響き、攻撃に備えようとしていた皆の手が止まりそちらを見ると、石細工士が手を挙げて制止している所だった。


 彼を見ながら兵士達が動揺して、抜きかけた剣をどうするか戸惑っているがそんな剣でどうにかできるような相手ではない。

しかしこのままだと黙ってやられるしか無いのかと思う。  さてどうする?


竜は自分達の真上まで来て辺りは暗く、潰されそうな威圧感がのしかかり地面も体もビリビリと震えるような感覚に満たされた。


「うおおっ」

「キャア っ」


 息ができないほどのしびれた体が心さえ締め付けるような一瞬がすぎると、黒い影が通り過ぎその後を強い風が吹き抜けていった。

そして徐々に遠ざかっていく。


「ふう・・・」  

「攻撃じゃ無いのか?」

「そのようだな。 なんだったんだ?」


兵士達が呆然として見送るが、グロフ達は緊張しているとはいえ兵士より落ち着いている。


 「ヒヤリとさせるな、まったく」

「ありゃあ砂嵐を避けて低く飛んでるだけだ、上空はまだ砂が飛んでるからな。 竜てのは意外に繊細で砂嵐を嫌がるんだ」


皆を止めた石細工士が言った。


「へえ、本当かよ」


 レフが驚くように、それは自分も初耳だ。

あのでかく超強力なドラゴンが砂ごときを嫌がるとは、ちょっと信じられない程だ。


「おそらく砂嵐で予定が狂った上、迷ったんだろうし、ありゃ一度帰国するかな? それとも戦と関係有るのか・・ そこまではわからんがな」


 遠ざかる竜を見ながら彼が言うと、皆の緊張が解けて息を吐くのが聞こえた。

 

「そうでしたの、 危うく特大の魔法をぶちかますところでしたわ!」

「止めてくれて良かったな。 危うくこっちが丸焼きになるところだ」


 しかしリーシャ親子も杖をしまうところが見えるし、フレアだけでは済まなかったようだ。

それでもドラゴン相手では足りなかったと思うが。


 乗っていた馬も緊張していたのか、息が荒く少し落ち着かない様子でウロウロとしているがなだめると徐々に静かになってくる。


 「どうどう、どう。 大丈夫だぞ」

「まったく馬は繊細だな、ワシのこれなんて落ち着いたもんじゃろが」   


 そう言われてみると、彼の乗っているのは馬ではない。

サイズは馬程度だが体は甲羅に覆われアルマジロのような、四足の獣・獣魔だろうか? ゴツく重そうな体の割には足取りが軽く、早いので馬に遅れることは無い。


「変わった獣だな、早いし」

「そんなの初めて見たよ」


 グロフや兵士達が今更ながら見つめ、リーシャは可愛いと言うべきか迷っているかのような表情だが黙っているし、なんだか彼は皆の緊張を解してくれたように感じる。


「その獣魔、かっこいい。 早い? もっと早く走れる?!」

「乗りたい、それ乗りたい!」


 貴族の兄妹が馬車の窓から顔を出して騒ぎ始めた。   

二人も緊張が解けていつもの様子に戻ったらしい。


「ダメですよ坊っちゃん達、 知らない獣魔は扱いが難しいから」

「そうですよ、怪我させたら俺達が処罰されるんで」

「「ええ~~~」」


兵士達に言われて二人は思い切り顔をしかめて不満を溢れさせるが、ワガママは通らない。

二人を守るのが最優先の命令なので当然だ。


「そんな事より宝探しするんですよね、わざわざ地図を持ち出したんですから」

「そうそう、お宝を探さないと!」


 兵士達はワガママな二人をなだめるのは慣れたもんで、興味を他へ誘導していく。

宝探しが安全かはまだ不明ではあるが・・   



「そう言えばあの目印の場所、まだだいぶかかりそうなの?」


 ミミィが自分の馬を石細工士のアルマジロに寄せていく。


「おう、明日の昼までには着くと思うがの。 道に問題が無い限り順調だ! それよりも・」

「それよりも?」

「さっき現れたドラゴンな、アレのせいで獣魔が刺激されてなきゃ良いけどな、わかるだろ?」


 獣魔が刺激・・ ああ、それがあった。

竜の気配で獣魔が慌てて逃げ回り、混乱して暴走とかで巻き込まれたり家が壊されたり。


「ああ、あれねぇ。 なきゃ良いけど」


 その時ジョーイが馬の上で伸び上がって右前方を凝視しているのが見えた。


「右に土煙(つちけむり)! 魔物の襲来と思えるよ。 各自警戒!!」   


言ってるそばからこれだ。 まったく竜王国はトラブルメイカーだと思う。




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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