クリスタル・ロード 0283 クライマックスへ
「勇者がやってきたからもう大丈夫? 悪を倒す? 」
馬車からまた身を乗り出し兄のほうが聞く。
妹は黙っているが目が輝いて期待している。
「おっと待て待て、いくら勇者でも一人では姫を守りきれないかもと考え、彼は仲間を呼んだ」
「そうか~ 、仲間」
「部下が操られているから敵が多いんだよね」
ここは妹が冷静な判断をしている。 小さい子なのになかなかだ。
「この頃には姫は見張られ外出はできない。 高い塔の部屋に閉じ込められて勇者に会えないんだ」
「ええ~ 、 姫様どうするの」
「窓からロープで降りる?!」
「部屋にロープなんて無いでしょ、 だよねえ?」
兄弟げんかのようになってきてレフに聞く。
「そうだ、ロープなんて無い。 それにかなり高いし普通のロープじゃ足りないだろ」
「じゃあどうする?」
「勇者は姫の場所がわかっている。 だから仲間とともに城へ乗り込むことにした」
「そうか、手紙に書いてあったんだ」
「あ~~ 私が言おうと思ったのに~~~ 」
妹が兄に掴みかかって肩を揺らすように動かすが、兄は得意げに笑っている。
「勇者は大鷲の獣魔を持っているからそれで飛んでいくことにし、仲間は大ザリガニの獣魔で城の門から攻めてそちらに兵を惹きつけるんだ」
「ヨードー作戦 ・ よね!」
「そうだ」
「ふふ~~ん!」
今度は妹のほうが先に言ったと得意げな表情だ。
今度は兄のほうがむくれて見つめている。
「しかしこれに気づいた悪の公爵は城に駆けつけ、悪魔の力でコウモリの羽を得て姫のいる塔へと飛んだ」
「え~~っ 、 ザリガニが門に来て兵士と戦ってるんだよね」
「そう! だが公爵は兵士など助けないんだ。 狙いは姫様だから放って行った」
「「悪いやつ~~」」
それにしてもザリガニの獣魔とは・・ 前に食べたアレからの発想だろうか。
そんな魔物がいるとは聞いたことも無いし。
「そして姫の部屋へ着いたとき、勇者は姫を連れて逃げようとしていた。 公爵は悪魔の力でパワーアップし、大男となって勇者を殺そうと向かって行った。」
「たいへ~~ん」
勇者、危うしだな。 ちゃんと演出を考えているらしい。
「勇者は2本の剣を抜いた。 一本は勇者の証となる名剣、他方は父の形見の剣だ。 強大な悪魔公爵と凄まじい戦いが始まった!」
おお、二刀流か。 あれは難しいし手首が強くないと痛めやすいが、さすが勇者だな。
父の思いを受け継いでいると・・・
「しかし悪魔の力は次第に勇者を圧倒し、仲間たちはまだ来られない。 勇者は必死に戦うが危なくなってきた」
「ええ~~~~っ」
「姫様は? 見てるしかできないの!? 何か方法は?」
ここで姫様登場だな。 さてどう出るか。
「そうだ! 姫は王家秘伝の魔術を使って大鷲と勇者を合体させてパワーアップした。 しかしこれは姫様の魔力をかなり使ってしまう、命がけの技だ」
「おお~~」
「姫様、凄~~~い」
そうきたか、いよいよクライマックスだ。 即席にしては考えてある。
「勇者は姫を巻き込まないようにと、公爵を窓から投げ飛ばし自分も飛び出した。 今度は外で空中戦だ」
「そうか、二人とも飛べるから!」
「姫の魔術と勇者の剣で互角となった勇者は、悪の公爵と城の上空で飛び回り次第に早く、目にも止まらぬほどに激しくぶつかり合う!!」
「キャーーーー」
妹は顔を赤くして手を叩いて応援、兄は握りこぶしで目を見張る。
と、その時街道の横手から馬車数台を含む隊列がやってきた。
大きめの幌付き馬車と、護衛の兵士の数から大商人の一行と思われるが・・ あれほどだと盗賊団の偽装なのもあり得る。
兵士の数はこちらとほぼ同じだが馬車の中にもいるとすれば、かなりまずい。
そう思うとグロフやこちらの兵士が剣に手をかけ、警戒しているのに気づいた。
「レフ、 ネビィも! 気をつけろ」
勢い込んで話を続けようとしていたレフが顰め面で振り返る。
「なんだよ、今いいところなんだがな!」
「え~~ 何~~~~?」
子供達もむくれてグロフを見つめる。 邪魔されたと言わんばかりだ。
すると向こうの商隊の先頭の一人が馬上で片手を上げて言った。
「止まれ~~~~ !」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
「面白い」、あるいは「まあまあだな」と感じた方は下の欄の
☆☆☆☆☆への入力、ブックマークに登録などをしていただけると
作者への強化や回復魔法となりますので、ご助力をお願い致します。
m(__)m




