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クリスタル・ロード 0282  勇者・登場

「その国の名は・・ 仮にシルビア王国としておくか、冬になるとパウダースノーに覆われる少し寒い国の事だ」


レフの話が始まった。

馬を馬車に近づけ歩を進めながら、窓から顔を出して聞く幼い兄妹に話を続ける。


「どうして・仮・なの?」

「それは噂が広がると政治的に揉める元になるからだ、貴族の子ならわかるよな?」

「インボウとか、タクラミ だよね」

「戦争になっちゃう? 」

「そうだ、誰に利用されるかわからんぞ。  だからだ」


子供達に顔を寄せて囁いているが、もっともらしいようで凄く胡散臭(うさんくさ)い。   

良いのだろうか、続けさせて。


 しかし街から徐々に離れ景色は単調になり、天気は良く風が弱く穏やかでありこれから先はますます殺風景で退屈になることだろうから、子供達には辛いだろうか。

怪しげな話でも無いよりはましかとも思う。


 「そしてその国の王様は名を白嶺(はくれい)といい、お妃様の名は氷華(ひょうか)、でどちらも雪にちなんで付けられ、娘の名は同様に白雪(しらゆき)となった」

「変わった名前~~」

「うむ、異国の話だからな。 変わっている事もある」


兵士達は少し呆れながらも子供達にワガママ言われるよりは良いと思っているだろうか、黙って聞き流しつつ同行している。   


 「そこの王家は貧しい民にも食料や家を与え、国全体が幸せになるようにと考え経済や農業など偏り無く学び武力も付けて国を守り、栄えた」

「すご~い」

「へ~~~~」


・・・・・ その話は少し耳が痛い。  


「しかも姫、白雪(しらゆき) は、優しくて城の使用人達にワガママ言うこと無く接して感謝を忘れず、街の人たちにも同様で、孤児たちの世話まで気を使っていた」

「いいひと~~」

「そうだ、だから国民から凄く好かれて王家は尊敬された」


 ・・・・・・・・・・   


 「ところが、だ、 その王のそばに悪い奴がいた!」

「「え~~~ 」」

「そいつは心の底まで悪に染まった貴族で、 名をブラック・ブラディアス。 いつか王位を簒奪(さんだつ)してやると狙いながら王に仕えている公爵だ」

「サンダツ って何?」

「自分が王になるために悪事をなすことだ」


 事故死に見せかけるとか、毒殺等だが・ 子供達は薄々わかるのか黙って聞いている。

妹の方は両手を口に当てながら。


「そいつ 悪の公爵は、悪魔の力を用いて王家の使用人達を操り始め、王と王妃の食事に毒を入れ始めた。 徐々に体調を悪化させ病気のように見せるためだ」   

「え~~、 ひど~~い」

「姫様も~~~?」


子供達がますます窓から体を乗り出すので危なっかしく、レフが押し戻した。


「大丈夫! 姫様の食事には入っていない。 なぜなら悪の公爵は姫を妻にする気だから!」

「お姫様、取られるの? 悪いやつに!」

「そうだ、 王たちは病気だから自分が代わると称する為だ。 正当な王だとな」


きゃ~~ とショックを受ける二人。  どこかで聞いたような話だが二人には初めての事か?

政治的なことを知ってはいても、やはり子供かな。


 「だが、 姫様は思った。 両親は健康面も常々考えているのに二人とも病とはおかしいと。 そして厨房で二人の食事から少しずつ取って、花壇の土に混ぜた」   

「毒見だね、花で試したんだ!」

「そう、すると花はすぐ枯れてしまった!!」


 わ~~~~~~っ とひときわ兄妹の声が大きくなり街道ですれ違う人がちらりと見ていくが、兵士達は黙って歩を進めていく。

まあ、微笑ましいと言えなくもない。



 「それで姫様はどうするの? 王様に言う?」

「まあ、待て待て!  王たちは既に体調が悪いし、使用人達は悪魔の力で操られている。 故に姫は悪魔に対抗できる強い人を呼ぶことにした」

「勇者・だね」

「そうだ!」  

「ゆうしゃ~~~!!」


 そうだ・の声と共に指を立てたレフは、胸を張り左手で剣を握る。

ここで勇者様の登場というわけだ。


グロフ達も呆れた顔をしつつ、横目で見ながら頷いている。


 「姫様は自分の部屋の窓から鳩を飛ばした。 勇者への手紙を託して」

「伝書鳩~~~」

「鳩は孤児たちのいる教会へと飛んでいった。 姫は神の導きを信じたのだ」

「神様、お願い!」


 子供等が夢中で聞いているので止めるわけにもいかない。 周りもそんな顔だ。


「勇者は現れた。 教会に寄付するために来ていた優しく、そして強い剣士が・だ!」   


キャーーー と妹は大喜びで両手を上げて飛び跳ねる。




まだ暑い日があります

もっと涼しくなると良いですね。

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