クリスタル・ロード 0280 どちらがペット?
大ウサギの後を付いてきたら、本当に温泉があった。
しかも他にもウサギがいる。 小さめのもいるが更に大きいのも・だ。
先に湯に浸かっているのも当然いて、温泉を堪能しているように見える。
「本当に温泉が好きなんだ~」
「そうだね、 なんというか不思議な光景だけど」
「一緒に入って大丈夫ですの?」
フレアの心配は縄張り荒らしと思われないかとのことだろうか、それならもう怒ってるはずだが。
「邪魔しなけりゃ問題ないぞ、仲良くな~」
兵士はそう言うと離れていく。 まずは女性達からなので、その間自分等は離れて見張りだ。
「なかよく・・なれるかなあ」
リーシャがウサギを見つめると、つぶらだが何も考えていないように見つめ返した後、トテトテと湯船に向かって行った。
「入ろう入ろう、 私いっちば~ん」
「ジョーイ、 はしたないですよ。 服は脱いだらちゃんと畳んで!」
「ではごゆっくり」
「俺達はその間、泊まりの準備だな。 酒を飲みたいとこだけど」
「飲むなら風呂の後に少しだけだ」
寝る場所の草を刈り焚き火の用意や夕食準備をだいたい終える頃、女性達がやってきた。
一緒に大ウサギも何食わぬ顔でだが、仲間になったか?
「仲良くなった~」
リーシャと一緒にいるのは少し小さめの、と言ってもリーシャより大きいウサギだが当然のように付いてきて焚き火の前に座った。
他にも数匹がやって来るし、手を繋いでいるのも・・ もう友達なのかい?
「石鹸で洗ってたら不思議そうな顔で見に来るから泡を付けてあげたら面白がって真似するの。 だから毛皮を石鹸で洗うと気に入ったみたいでね、他のウサギも洗えって集まって来た」
「おかげで毛がふわふわよね、でも野生なのにいいのかしらねえ」
ますます白くなって毛並みが良く、デカいぬいぐるみとなったウサギは一緒に夕食にありつく気だろうか。 他のも焚き火に寄ってきた。
「かわいいから良いよね? 野菜食べるかな、生が良い? 焼こうか?」
リーシャに言われて首をかしげているが荷物を開けて野菜を出すと反応している。
とりあえず生のものをもらってかじるが、焼き始めると鼻を動かしつそちらを見つめる。
そして他のウサギが更に寄ってきた。
「焼くほうが好みなのでは? 私もやってみようかしら」
「どれどれ、私も~~。 待っててね~」
フレアたちまでも面白がってウサギ相手を始めた。
「料理の続きは私達がしているから、男達はお風呂に入っていらして。 よく洗ってくださいね」
「ウサギに全部食わせるなよ、野菜程度にしとけよ」
「酒は絶対にやるなよ、ダメだぞ!」
兵士達から笑い声が上がるが、さすがに酒は飲まんだろ。 だよな?
岩で囲まれた湯船にはまだ残っているウサギがいたが、焚き火からの匂いにつられてか入れ替わりで上がって行った。
あの体だと本当に全部食べられてしまいそうだ。
満点の星を眺めながらの温泉を堪能して上がると・・・・ ウサギは焼野菜を食べている。
貴族からお菓子をもらってかじっているのもいるが、貴族用の高級品を遠慮なく平らげていくのは少々腹立たしい。
「果物や肉は好みじゃないみたい。 野菜は三分の一食べられたけどね」
「お菓子も食べるよ、 硬めのが好きだねこれ」
「ハイ、あ~~ん」
貴族の娘がウサギに寄り添うようにお菓子をあげると、受け取りつつ娘の頭を撫でるように手を動かす。
どっちがペットなんだかわからんような光景だ。
と、その時遠くで魔物らしき雄叫びが聞こえた。 かなり大きな声でだ。
「今のはドラゴン か?」
「そのようだな、もう戻ったか? 少し早いな」
ウサギたちも反応し、耳を立てて伸び上がりそちらの空を見つめて静止している。
野菜やお菓子を咥えたままだが緊張しているらしい。
だがその一声だけで静かになっている。
「やれやれ、 竜王国め、いつもより張り切っているな。 他国からもそんな噂が聞こえるし」
「まったくだ、忌々しい国め。 なんとかならんもんか」
兵士達が顔をしかめてぼやく。 無理もない、あの王子が関わっているのだろう。
王妃は比較的まともなようだが、あんな王子達と王を抑えるのは一人では無理か。
「でも大丈夫、あいつらだってこの国を本気で取ろうとしてる訳では無いし、金がほしいだけですよ。 毎年の事だしな」
「そうそう、念のためにお二人を離しておくだけで」
兵士が二人を宥めている。 ドラゴンの声で子供達が心配していたようだ。
「さあそろそろ肉を焼こう。 酒もな、ワイン程度なら良いだろ」
「ああ、だがウサギにはやらんぞ」
しかし酒の瓶を出すと好奇心か、ウサギ達の視線が集まっている。
ようやく涼しくなってきましたね。




