クリスタル・ロード 0279 大きなぬいぐるみ
食事が終わりとりあえず宝の地図の、わかりそうな場所へと移動することになった。
そうは言ってもこの国と地形が似ているだけでさだかではないのだが、それは仕方がない。
それに地図の分析にはまだまだ時間が掛かりそうとのことだ。
描かれたのがいつ頃なのか、地形が変わっているのもありうるし文章の謎解きもある。
しかしここにとどまって考えるわけにはいかないのだ。
竜がまた来るまでになるべく離れるようにとの依頼なので、さっさと出立せねばならない。
自分達が止まっている間、街道を走っていく馬車が数十台あったのは街を離れる商人や避難する人々と思われ、皆大きな荷物を山程積んでいる。
「では忘れ物は無いな、出発するぞ~」
馬車とそれぞれの馬に乗りゆっくりと歩き出した。
いざ、宝探し! とは言わないが意気揚々。 先程までとは目の色が違うのが子どもと男達。
女性達は仕方がないなと苦笑気味だがそれは考えないことにする。
「食料は当面、肉とパンがあるが他の物はどうするかな。 途中小さい町があるはずだからそこで補給するか」
「野菜と果物が欲しいですわね、山や森でも採れますけど」
「俺達はともかく、貴族様がいるとな。 味も違うだろうし街で買うほうが良いか」
「それじゃ買い物は手早く済ませて、郊外で野宿だな」
「野宿は良いけど、お風呂に入りたいよね。 体を洗いたい・・・ 汗臭くなるし」
良い天気だし温かいけど、その分汗をかきそうだ。 川で洗うのは水がかなり冷たいし。
「温泉ならこの先の街の近くにあるぞ」
「えっ」
「本当ですの?!」
兵士の一人が前を指さしながら言ってきた。
「この国は温泉が出やすくてな、宿では温泉付きがざらだ。 郊外でもあるしな」
「あら!」
「それはいいね」
「おんせん」
リーシャまでも目を輝かせる。 女性陣は本当に風呂が好きだな。
「でも竜は来ませんかね、安心して入っていられたら良いけど」
「同じ街を数週間は狙うそうだからそれまでに一度入ればだな、次はどこになるか不明だが」
「郊外なら竜は来ないはずだぞ、狙うのは街だろ? 金目の物を求めてだろうし」
噂によると竜王国は街を焼くと脅迫し金を出させることもあるそうだ。
まるで盗賊のような態度だが戦になるよりはと、金を出すこともあるらしい。
兵士達が苦々しくそんな事を話していた。
「まったく強欲な国だな、今でも十分豊かだろうがまだ欲しいのかね」
「そうだな」
そして日が落ちる頃、次の街が見えてきた。
小さめの街で宿はいくつかあるようだが、店は少ないように思う。
「野菜や果物程度は買えそうね、お菓子もあるし」
街に入ると思ったよりは屋台や小さな露台に品物が並んでいる。
避難民を当て込んで急遽に店を始めたようなところもある。 商売っ気豊かというか逞しい。
「あ~、 山苺のパイもある。 美味しそう」
「うん、 なかなか良く焼けてるわ。 香りもいいし」
リーシャ達がお菓子の方へ惹かれ、フレア達は果物屋台へ、 そして貴族のお子様達も物珍しげに屋台を見て回るが、兵士達に囲まれてなので住人に注目されてしまっている。
「買った買った!」
「お菓子も果物も、いっぱい」
「お前達、買いすぎじゃないか?」
「いいのよ、子供もいるし。 貴族のお仕事なら払いが良いしね、問題なしよ!」
「まだもらってないけどな。 赤字にするなよ」
子ども達も兵士達に言って色々買わせているので、荷物が多めだ。
両手で抱えてる兵士がいるほどだ。
「では郊外へ向かって、泊まりの準備だな」
兵士によるとこの辺に温泉があるらしいが、暗くなりかけだから今日は無理かな?
暗くなってからでは見つからないような気がする。
そう思いながら街を出たところで、脇から大きな動物(魔物?)が急に現れた。
「わ!」
「「「きゃっ」」」
慌てて剣に手をかけるとグロフ達も同様に反応している。 リーシャ達も杖を出す。
「あ~~ そいつは大丈夫、おとなしいから。 温泉好きでな、温泉ウサギなんて呼ばれてる」
兵士の一人が手を上げて制止した。
それは丸顔で耳の長い二足歩行の動物であり白い毛皮で・・大きい。
大きなぬいぐるみのような、人が入れるようなサイズだが愛らしい顔つきである。
「か、可愛いけど・・・大きいね」
「温泉ウサギ? 始めて見た」
「私は噂で聞いたことはありましてよ、 見たのは初めてですが」
リーシャの好きそうな動物ではあるが、サイズが大人の人間並みだ。 それも男の。
抱きつくのは躊躇するだろう。
「そいつが温泉に案内してくれそうだな、頼むとするか」
頼めば聞いてくれるのか? 本当に?




