クリスタル・ロード 0276 伯爵様の依頼
ドラゴンの声でドキリとした。
皆が一斉に反応しそちらを見る。
「ここまでは来ない・・よね」
リーシャが不安そうに見つめて楽器を鳴らしていた手の動きを止めた。
「来ないと思う。 だいぶ遠くだし」
「ああ嬢ちゃん、ここまでは来ないよ。 森なんか狙う意味がないさ、狙うなら街の近くだ」
「そうだよ、こんな小さい村にドラゴン使ったって割に合わんだろ」
「そう・か」
そうだな、竜を従わせるのもタダじゃないと聞いた。
力ずくで従わせられるのが竜王国だと思っていたが、そうじゃないとしたらその辺りにあの国の弱点が有るのでは? これはよくよく考えるべきことに違いない。
2日ほど滞在しているとドラゴンが去ったので、自分達は鍛冶師の村から街へと移動することにした。
幸い街の被害はさほどではなく、焼かれたのは街の外、畑がほとんどである。
しかし例年こんな事があるという。
数日するとまた来るという予想なので我々が滞在するのは1日だけとする。
ドラゴンの襲撃が数日おきに5回ほど行われ、兵士により金品や食料などが奪われるそうだ。
「まるで盗賊団だな、まったく」
「そうじゃろ、本気で国を取る気は無いんだ。 少なくとも今まではな」
村は無事だし、レフ達は十分な報奨をもらえたのでご満悦だし、リーシャ等は楽器をもらった。
なんとあのジャンヌさんもだ。 小さめの弦楽器、ハープのような小さめのだが大きめの音も出るし、あの人の指の力なら多分余裕なのだろう。
しかも意外に似合う。 逞しいようで品がある・・・ 様になっているな。
街に入ると、想像より落ち着いている。
一度は店を畳んだのか片付いているというか、品が少なめでは有るが出店が並び客たちが歩いているどこにでもある光景で問題なさそうだ。
と、そこへまた案内の人物というのがやってきてグロフ達と話を始めた。
「ここの領主てのが、用があるので館まで来てほしいそうだ。 至急な」
「もう、買い物したいと思ったのに忙しないですね」
「ホントだな、一日はのんびりできると思ったのに」
「仕方ない、これも仕事だ。 鍛冶師の村で十分休んだろ」
領主の館では細身だが長身、少し逞しい男が待っていて伯爵だと名乗った。
かいつまんで言えば自分の子達の護衛を依頼とのことだ。
曰く、ドラゴンがまた来るのでしばらく街から離したい、かと言え他の街も危険ではと思い常に移動するのが良いかと商人のキャラバンを組み、ドラゴンが帰るまで移動している間の護衛を頼むと言われた。
その子ども達とはリーシャより下、アイリスより年上だろうか幼い男女で・・同じ年頃だろうか、どっちが兄か姉かはわからない。
まあそれはいいんだが。
そのキャラバンとは伯爵家の兵士達なので自分達は補助程度、子供の世話までは必要ないとのことなので問題なさそうだ。
「わかりました。 みんなもいいな?」
「君等は凄腕と聞いているんでね、よろしく頼むよ」
そして前金を渡されたが、なかなかの金額なのが袋のサイズだけでわかる。
「わかりました。 我々にお任せください」
話し方まで変わったレフの目の色が違っている。 成功報酬はどれほどもらえるのかと。
その子ども達は少し不安そうなのだが。
そしてキャラバンは早々に出発となった。
馬車は5台、兵士が20人ほど。 人数の割には馬車が多いが、いざ襲撃の際には分散して狙いを外す為と思う。
食料や水は十分積んである・・ さすがは伯爵様の馬車だ。
兄妹?は真ん中の馬車に乗り、自分達は個別の馬に乗る。
まだ昼を過ぎたばかり、昼食は済ませてあるし夕方までまだ時間が有るので暗くなる前になるべく街から離れるようにとのことだ。
「すこし慌ただしいが、ようやく一段落だな」
「だねえ、でも乗馬久しぶりだしたまにはいいね。 風が爽やかだよ」
「ですわね、旅を思い出しますわ。 ダンジョン巡りとか」
グロフ達は乗馬が慣れているようだが、リーシャ親子は二人乗りだ。
先生が手綱を握りリーシャはややぎこちない。
そしてジャンヌは弓を背負って颯爽と、最後尾を守っている。
しかしドラゴンの戦いを見るように言われたはずなのに、街から離れて良いのだろうか?
仕方ないか、案内人が来たからにはこれもお付き合いということで。
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