クリスタル・ロード 0275 天上の音
歓迎会の後、楽器を見せてくれたがどれもよくできていて美しい。
鍛冶師だけ有りどれも金属製だが、材質が違うのか金や銀、青みがかったのや銅色のも有りそれぞれ微妙に音も違う。
薄い金属板やパイプの物、弦の物もあり指で弾いたり棒を使い叩いたりこすったり、それが様々な音色で響くのだがなんとも言えず良い音なのだ。
「へえ~~」
「綺麗な音ね~~~」
「天使の楽器? 天上の調べとでも言いましょうか、見事な・・」
皆が感嘆するようにこれほどの音は聞いたことがない。
「ごつい男が造っとるとは思えんだろ、わははは!」
「おじさんてば、私だって考えたんだから一緒にしないでよ。 細かいところを何度も直してるんだから」
「おう、 わかった、わかった」
村長の姪だったか、彼女が言ったようにごつい男だけではこうはならないだろう。
よく見ると小さな部品が取り付けてあったり微妙な加工があったりで、おそらく音色の調整や響きを良くする工夫があるのだろう。
金属のハンマーが当たるのに少し柔らかい音なのは、塗物があるせいなのか。
「お? そこに気づいたか?!」
しげしげと見つめていると村長が嬉しそうに言ってきた。
「それには音をソフトにする工夫がな、ある樹脂を厚めに塗って・・」
「もう、それだって私が色々試してるのに!」
「元の案はわしだろうが、 わははは」
まるで手柄の独り占めのような、村長が大人気ないと思うんだが。
「それにしても鍛冶の村というから剣や盾が並んでるとばかりかと、これは意外な」
「本当ですわね、これでは貴族の館か教会のようですわ」
グロフ達の言う通り、これを鍛冶師が考えたとは想像しにくい。
眼の前にごつい御大がいると、なおさらだ。
「数年前に始めたばかりで、まだ販売はしとらんでな。 欲しがる者に少し分けた程度なんだがそろそろいいかと思っとる、な?」
「まだ直すところはあるかなと思うけど、まあまあじゃない? ねえ」
はにかみながら姪が見つめて同意する。
「これは貴族たちが欲しがりますわよ。 売れますわ、必ず。 私が売り込みたいぐらい」
「お、そうかね。 だと良いんだが」
「武具ならともかく販売ルートをどうしようかも悩んでいて、ねえおじさん」
「ワシラは貴族とのコネなんぞ無いからなあ、商人を通して少しずつやるしかかねえか」
二人の話を聞きフレアの目が光っている。
まるで目ざとい商人のような顔つきになっているが、本当に売り込むつもりなのだろうか。
しかしここは外国。
フレアが元貴族とはいえ、ここにコネが有るわけは・・ 有るのか?
「私に少しあてがありますのよ。 すぐに買うとは言えませんが、そのときにはよろしくお願いしますわね」
「おお、そうか。 それじゃちっとばかり期待させてもらうよ、急ぐわけじゃ無いから!」
「それなら私達、演奏の練習ももっとやらなきゃね。 他の曲も覚えないと」
鍛冶師の二人は破顔してずいぶん乗り気だ。
それにしてもフレアはあんな事を言って大丈夫なのか? 外国との取引では密輸にならないかな? ここの貴族とのコネがあるとでも?
「しかしな、他の曲と言ってもお前・・ 楽譜がわからんだろ? 聞いて覚えるか?」
「うう、そうなのよね。 そこが素人の悲しさ、 どうしようか」
「あら、では先程の曲はこちらのですか」
「そうなんだ。 あれはここの古くからある歌でな、それに適当な伴奏を付けた。 だから楽譜は無くてな」
などと話しているそばではテーブルに並べられたいくつもの楽器を、リーシャをはじめジョーイやミミィさんが興味深げに見つめ、特にリーシャは鳴らしたくて仕方なさそうだ。
話の邪魔をしないようにとこらえているのが見て取れる。
「おお、嬢ちゃん。 鳴らして構わんぞ、試してくれ。 さあ、皆もな」
言われてリーシャが鳴らし始める。
「はあ~ 、いい音。 アイリスのだけでなく私の分も欲しいな」
「そうね、 うちにも有ると良いわね」
「私も練習しようかな・・・ 優雅だし」
「おいおい、 ジョーイが楽器かよ。 本気なのかそれ」
「確かに別人のようだな、反対はせんが」
その隣ではミミィがたどたどしいながらも曲を奏でている。
「私少し楽器をしてたから。 これとは違うけどだいたい分かる」
その時、遠くでドラゴンの咆哮がまた聞こえた。
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