クリスタル・ロード 0274 初めて見る物
その晩のこと、見張りから報告があり、消火帯で火災が止まったとの事だ。
「良かった良かった、一安心だな」
「冒険者さん達が来てくれたおかげだ、助かったよ。 ありがとうな」
自分達は村長の家に招かれ、歓迎会となっている。
今度は焼肉だけでなくそれなりの料理や酒が並び、レフ達が満面の笑みである・・
本当に正直な人たちだ。
「大したものは用意できんがうちの食料庫を開けたから、いっぱい食ってくれ。 酒もなるべく出すからどんどん飲んでな」
そう言った鍛冶師の脇には酒樽が置いてある。 しかも2つ。
樽でとは剛毅なことだ。
「おう、金ももらってるし十分だよ。 ありがたく頂くとしよう」
「あんた達、気前良いな~ 、鍛冶でかなり儲かってるかな。 いいねえ」
グロフとレフが調子よく応じる。
さすがは生粋の冒険者でサマになっている。
「そうでもないけどな、私等は大国の下請けみたいなものでこき使われとるよ。 金払いは悪くないが急げだの、細かい注文だの面倒なことばかり言いおってのう」
「そうそう、それで徹夜仕事もあるんだ。 参るぞまったく」
そう言えばそんなこと言っていたな、 大国からの仕事か・・ 竜王国ではないよな?
「大国とは、竜王国? ではないか」
「違う違う、 南の国の・ あれだよ」
「ああ、向こうも鍛冶が盛んな国だったか・? そうか、それで下請けか」
南のあの大国との繋がりがると。
「でもよ、あそこと繋がりあるなら竜王国から守ってくれるんじゃないのか? ソイツラは来ないのか、同盟国だろうが」
レフが盃を掲げて言う。 もう酔い始めているようだ。
「あ~~ 、同盟ってほどじゃねえ。 ここは体よく盾にされてるだけでな・・ 盗らせはしないが守ってくれるわけじゃ無いんだ! 竜王国だってそれがわかっていて少し叩いては獲物を持っていくわけだ。 わかるかな、この違い?」
「「なるほどな」」
村長も少し酔って口が軽くなり、勢いよく話す。
つまりこの国は大国の盾、板挟みというか緩衝地帯であるわけだ。
後ろだての大国はここを守るほどでは無く、利用しているだけか。 それでも仕方ない立場だろうが嫌な話だ。
「だから竜王国も本気で盗りに来ないのは良いんだが、暴れていきやがる。 まったく!」
「でも森まで焼くのは今まで無かったよな、 畑だって少しだったのに今年は・・・」
「うむ、どうも今年は様子が違う。 調子にのっとるのか、考えていないような?」
様子が・・ それはなんだかあの王子のせいな気がするぞ。
血の気の多いあいつが、国王の不調でタガが外れ暴走し初めのような気がする。
そうでなければ良いのだが。
「竜の国のオイタが過ぎればあんたがたのボスが出てくると。 そこまでするかねえ?」
「そこまではしないと思うが・・ 本格的な戦になっちまうぞい」
その時村長の奥さんだろうか、おかわりの酒を持ってテーブルに持ってきた。
「まあまあ、あなた。 政治の話はそのへんにして、お酒をどうぞお客様もね、 それに音楽もどうですかね?」
「おう、そうだな。 準備できとるか? 」
「はいはい」
音楽? ここで?
「ワシラは武器防具の他に、楽器も作っておってな・・ これも元は面倒な依頼じゃったんだが、今は夢中になっとる若いのがいてな。 色々考えとるんだ、 聞いてやってくれ」
そう言い終わると奥さんがドアを開けて招き入れ、女性数人と若い男が来て何やら持っている。
あれが楽器だろうか、見たことの無いものだ。
「うちの姪達と若い職人がな、自分達の楽器を作るなんて言って色々やっとる。 楽団なんてこさえてな練習しとるんだ。 まだ素人だがな~」
彼女らの持っているのは金属製の縦笛、横笛、それに鈴の付いた優美な棒? あとは打楽器か、長さの違う金属パイプを並べたもので、小さいのと大きめのが有りそれを抱えて床に座った。
「では良いぞ、始めてくれ」
村長が言うと演奏が始まり、鈴の棒を持った娘が踊り出した。
鈴もそうだが金属製の楽器が、涼しげで軽やかというか細くだがよく響いて良い音だ。
「わあ・・!」
今まで黙っていたリーシャが声を上げ、ジョーイ、フレア、ミミィが目を輝かせた。
これは・・・ 女性受けする音だ。 優美と言うか繊細と言うか だな。
そして鍛冶師の男達が歌い出した。
ゴツい男達だが良い声でなかなかの歌だ、 レフ達が思わず手拍子を始める。 自分もだ。
三曲歌い終わったところで踊っていた女性がお辞儀をして、拍手喝采となった。
「うまいじゃないか、演奏もだが歌もいい! これで素人? 嘘だろ?」
「まったくだ、これなら金を取れるよ。 立派なもんだ」
レフやグロフが拍手しながら称えると、踊りと演奏の女性達が照れたように笑顔となった。
「私あの楽器欲しいな! アイリスへのお土産にしたい。 いくらだろう?」
「なんなら同じ物をあげるよ、タダで良い。 あんた達には世話になったし」
「そうだ、宣伝してくれるとありがたいから無料にしよう」
リーシャの言葉に村長達が応じる。
気前が良いようだが商売人の言葉だ。
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