クリスタル・ロード 0270 領主・帰還
「大型の魔物? 街の近くに?」
ジョーイが思わず大きな声を出すが、周りも同様でざわめきが起きた。
「ドラゴンと火災とで魔物が混乱したか? そりゃ厄介だな」
「たまにあるとはいえ、運が悪いな。 消火が遅れちまう」
グロフとレフが心配する通り戦時の火災は非常にまずい。 放っておけば広がってしまうから攻撃と同じことだ。
よりによって大型魔物は何をやっておるのだ! さっさと森の奥へ逃げりゃいいのに。
「魔物などすぐに仕留めれば良いんですわ、全くじれったいですわね!!」
「し~~~っ 静かにしろフレア!」
また暴走しそうな人をグロフが口を塞いでなだめる。
視線が集まってしまい実に居心地悪く、知り合いと思われたくないので少し離れるか。
リーシャとジョーイは苦笑しながらフレア達を黙って見つめているが、どうしようもない。
すると会議室の入口から声が掛かった。
「なんならあの国へ行ってみるかい?」
室内の一同がそちらを見ると、領主が取り巻きを連れて入ってきたところだった。
王都から戻ったのだろう。
しかし行ってみるかいとは? あの国は戦争中なのに・・ え?
机を囲む幹部たちも冗談なのか本気か図りきれず、顔を見合わせている。
「お静かに、ね。 何も戦争に参加するわけじゃないから」
両手を上げて一同を鎮めながら彼は続けた。
「実はあの国へ入る目処がついてね、いわゆる密約だが非公式に入国できるようになって、転移門を設置してあるんだよ」
転移門?! 他国に? そんなことができるのかと思うがこの人ならあり得るかな、何をやりだすかわからないお方だから。
「竜王国の戦いを見てきてほしいのもあるけど、できれば魔物討伐とか消火を手伝ってほしいんだよ、旅の冒険者としてね。 危ないと思えば逃げて良いから、同盟ではないんで」
逃げて良い? そうか密約としてなので、貸しを作る程度? それにしてもよくそんな話をまとめたもんだ。
「この密約あってこそ今、向こうの情報が入ってるわけだ。 わかるよね? あちらの一派が協力しているし、いずれは同盟もと考え中なんだ。 そうなるかは不明だけどね」
皆が納得したように頷いてざわめきが収まった。
一派が・・か。 そりゃ反対する人等もいるだろう、伝統やらメンツやらがあるのだから。
理屈通りにはいかないのが戦なのだ。 冷静に考え動けば勝てる場合でも・だ・・・・
「では私が行きますわ! 魔物だろうが火災だろうが消し飛ばしてご覧にいれましょう!!」
フレアの声がその場に響き渡り、口を塞ぎそこねたグロフとレフが頭を抱えた。
そしてジョーイは目を輝かせ、リーシャはあっけにとられて見つめている。
これは・・自分も行かねばならないか? 仲間として。
*********************************************
やはり行くことになった。
「経験豊かな者ほど生き残る率が高い!」 とは父さんの弁であり、母さんも渋々同意した。
戦に参加するわけでは無いので実質は前回のようにスパイ活動なのだ。
ただドラゴンが襲来中ではあるが。
「私も行く!」
「しょうがないわね、では母さんも行くわ。 あなた一人だとまだ心もと無いし、鍛えてあげる」
これはリーシャ親子である。 大人しそうに見えて我が強いリーシャは母親に似たのだろうか、親の方は元優秀な魔法使いだがリーシャのために引退したのか? と、思う。
しょうがないと言いながら目が燃えているのが明らかなのだ。
「俺、畑仕事していて良いかな?」
「逃げる気か、それでも冒険者か? 農民に転職する気ならそれでも良いけどな」
これはレフとグロフ。
グロフはともかくレフは乗り気でない。 怖がるというより政治に関わりたくないらしい。
レフは自由に行動したいタイプだからだ。
憂鬱そうな顔で溜息をついている。
そしてジャンヌさん、彼女も参加することになった。 訳あってギルドの受付をしているが実は弓の達人であり元兵士、並の男など貼り倒せるほどのパワーの女性勇者が領主の依頼で同行することになった。 傭兵だな、 凄く頼もしい。
実はアイリス、幼い魔法使いも行きたがったのだがギルド長に止められた。
大事な姪を戦場に送るわけにはいかないだろう、まだまだ箱入り娘を抜けられないが仕方ない。
リーシャはお土産を買ってくるからと抱きしめているが、名残惜しそうだし可愛くて仕方ないらしい。
相変わらず仲の良い姉妹のようだ。
そして最後は・・・しばらく見てなかったあの人だ。
「私も行くよ。 ず~と、ず~っと、ず~~~っと、古代語解読ばっかりでもう飽きた! 師匠がダメだと行っても絶対行くから、絶対だからね!!」
呪術師の・・・・ しばらく会ってなかったから、名前が出てこない。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
暑いですが頑張っております。




