クリスタル・ロード 0269 竜との交戦中継
領主の館、会議室にてざわめきが起こった。
被害拡大とはどちらだ?
「聖剣帝国、城下町外の畑に火災発生し迎撃機動隊が出ましたが全滅。 増援部隊もかなり押されています」
会議室中央には大きな机が置かれ、そこにある紙に地図が描かれ木の駒が並び戦況が示されていて小さな赤旗が立てられた。
あれが被害の印らしい。
そのそばには竜の小さな陶器が置かれている。
「ドラゴンは2頭か、畑程度に2頭とは奮発したな。 これで続くかな?」
グロフがこちらへ囁く。
「畑を狙うのは長期戦狙いなら有効ですよね、食料を減らす意味で」
「しかし備蓄があるだろ、3ヶ月から半年分はあるはずだぞ」
「もっと長ければ有効ですが、そこまであの国が考えているか怪しいですね」
王子もそうだがあの国の王も短気だ。
計画的な勝利より暴れることを好むため続かなくなり、撤退することになりがちだ。
だからこそ助かる国もあるのだが、被害を受けるのはたまったものではない。
「全くだ、そこがなければあの国もっと大きくなっているだろうがな」
「しかしあそこの王子がムキになると自国の犠牲覚悟で攻め込みそうな気がします」
「そう言えば王は最近体調が悪くて、その分王子の権力が増してるそうだな。 取り巻き達が戦利品目当てで煽っているそうだぞ」
さもありなんだ。 王子が成金趣味だと取り巻きもそうだろうし、同好の士が戦の準備をしているに違いない。
だとすると今回の戦が長引くことも有りうるか・・
「もしやドラゴンを全部出すなんて言い出すのでは?」
「全部か? しかし竜だってタダで動くわけじゃ無いだろ、魔力や食い物もそれなりにいるしな。 奴隷じゃないんだから待遇が悪いと暴れるぞ」
待遇! 従うと言ってもそれなりの利害があるわけか、 だから大国でも数頭が限度とな。
あの強力な竜だからそれはそうだろう。
向こうからすれば 「貢物を出せば望みを叶えてやろう」 なんてか?
「なるほど・ 確かにそうですね」
思わず笑いそうになる話だが、会議中に笑っていると怒られるのでこらえる。
あの王子が竜の反乱で逃げ回る姿を想像してしまったが、そうなれば面白い。
ぜひそうなってほしいぞ!
「更に被害拡大! 増援部隊の半数壊滅。 畑が延焼し森が火災中」
またもざわめきが起き、連絡兵が部屋の外へと走っていった。
領主への連絡だろうか。 あの人は現在不在なので都へ出かけているはずだ。
そしてここの兵士達も徐々に会議室に集まってきた。
ほぼ見学者のようだが他人事では無いからだろう、竜王国の動き次第ではこの国へも来るのだ。
そこへレフ達もリーシャを連れて入ってきた。 フレアも一緒である。
「今どうなってるんだ?」
レフがグロフの隣に来て囁いた。
「聖剣帝国が押されているな、街の外でだが。 静かに聞いてろよ、特にフレア!」
「わかってますわよ」
フレアは少しむくれて声をひそめる。 暴走したせいで謹慎を食らったので大人しくしているな。 今度やったら締め出されるだろうから。
「竜が暴れてるの? 被害はひどいのかな」
リーシャが隣に来て心配そうな顔をする。
「今のところは街の外の畑を焼かれたのと、森への延焼だけどね。 被害が広がっている」
あえて兵士の犠牲は言わずにおいた。 いずれは知ることになるだろうが聞かせることもない。
「畑を焼いて食料を減らすつもりらしいね」
それを聞いてリーシャと隣のフレアが眉をしかめる。
フレアまでとは意外であるが、元貴族なので領地での戦経験があるのだろうか?
そしてその隣ジョーイは伸び上がって中央のテーブルを見つめ、目を輝かせている。
好奇心なのか冒険者感覚なのか、戦の状況を知ろうとしているらしい。
目と耳が良く偵察役なのでなおさらなのか、机の上の旗や竜の事をグロフに聞きながらだ。
懐から紙を取り出し、メモまでし始めた。
「ドラゴン一体に機動部隊から攻撃し、命中! 一体が後退。 他方が街に接近」
おおっ と声が上がるが、街への接近にざわめきも起きた。
しかし街を囲む壁には大型兵器があるはず。 竜といえどもすぐには入れないと思うが。
高度を取っても攻撃の際には降りねばならないのでは・・?
「森への消火部隊が向かっていますが、大型の魔物が出現。 交戦が開始されました」




