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クリスタル・ロード 0268  平穏から喧騒へ

 「あら? え? 庭がなんだか眩(まぶ)しいわね」


リーシャの母さんが帰宅して開口一番、庭の変化を感じ取っている。 さすがだ。

対してリーシャは目が泳いで、やや挙動不審である。

両手を胸の前で合わせて指を閉じたり開いたりと、自分には無関係を装っているらしいが、これはすぐバレそうに思う。


「リーシャ、なにかした?」


やっぱりそう聞くよね。 

優しげな言い方だが、これは聞かれたほうはドキリとするだろう。


「え? 私、庭に手出しなんてしてないよ。 本当に!」


うん、それは本当、 手出ししたのは庭にではないな。  と、つい頷(うなず)いてしまう。

リーシャとこちらの顔を交互に見ながら、先生は少し考えているようだ。


「もしかして・・ 新たに覚えた魔法を試したかな? ネビィ、見てた?」


あ、こちらに聞きますか? なんと言ったらいいやら。


「ネビィのね、骨折を治癒したの! まだ痛むと言ってたからもっといい方法でと思って」


リーシャが言ってくれて良かった。


「治癒術ね~~ う~ん、  それで魔力がだだ漏れでこうなったと・・・」


ダダ漏れ・て、辺りの様子からそれらしいとは思いますけどね。 

言葉を選んでほしいな、リーシャは好意でしてくれたんだから。  お母さんてば。


 「おかげで痛みが消えたから楽になりましたよ、体がほぐれて軽くなったし」

「それは良いんだけどね、魔力が拡散すると問題が起きる場合もあるのよ。 治癒に限らず。 それにこの場合治癒と言っても生命力を放射してるようだし、使い方次第で死人が出るわね」


死人と聞いてドキリとする。


「え、ええ~~~ ?」

「ええ~~じゃないのよ、これ新魔術でしょう? いきなり人に使うなんてとんでもないわ、成功したから良かったけど何が起こったかわからないんだから」

「う~~ 、はい・・」

「まあまあ、自分は体が丈夫なので少々の問題は平気ですから。 そのぐらいで」


間に入ってなだめると先生からちらりと見られる。


「甘やかさないでほしいんだけどな~ 、もう、しょうがないわねえ」


先生は元優秀な冒険者だったそうでなかなか厳しい。 

自分の娘に対しても優れた術師にと思うのか言うときは、はっきりとしている。  

自分の父さんの場合は少し?脱線しているが、この人は正統派だな。


 叱責(しっせき)はとりあえずそれで終わり、新魔術を使うときは慎重に効果や影響範囲、危険性を見極めてからとの忠告にとどまった。


「ごめんね、よく考えなくて」

「いいんだ、おかげで痛みが無くなったんだから。 使い方は今後の課題ということで」


 それにしても杖のおかげとはいえリーシャは使える術を増やし、力をつけている。

これで先生からの指導が重なれば、いずれ大魔術師になるのでは? と思う。



  **************************




 そしてその数日後のこと、竜王国が戦争を始めた。



 朝から慌ただしく領主の館にて、情報が飛び交う。   

呼ばれて来てはみたが自分のすることがなく、じゃまにならないように隅で大人しく立っているしか無い。 


今までの話をまとめると、とりあえず仕掛けられたのはこの国では無く、竜王国の南の小さめの国、名を聖剣帝国という。 

小さめと言っても弱い国では無く初代の王は武を誇り英雄となり、聖剣帝と称えられたそうであり、剣術に秀でた国となり武器防具の製造が盛んである。


 要は竜王国に攻められたとてすぐに負けるような国ではなく、今まで何度も戦が起きているが長続きせず痛み分けになっていたそうなのだ。

そこになぜまた向かったのかと思うが、多分血の気の多いあの王子が突っ走ったのだろう。

王も好戦的だそうで止める気はないと思われる。   


 「よおネビィ、早いな」


グロフが部屋へ入ってきて手を上げる。

彼も呼ばれたらしくいつもより少し良い服で、髪も整っている。 冒険者より兵士に近い。

彼はそのうちに近衛軍に誘われるのでは無いだろうか、レフ・・はともかく性格的に向いていそうな気がする。


 「あの竜王国が動いたって? どんな様子だ」

「まだ情報が入り始めたところで詳しくは不明ですが、ドラゴン二体が戦端を開き城を焼き始めると剣帝国が応戦、対竜兵器を出して竜にも被害が出たところで騎兵が突入、投石機で攻撃。

今は歩兵を両国が出したとか」


 飛び交う情報を頭でまとめるとそんな様子が見えた。   


 「竜王国は王が健在ならまだしも、あの噂の王子様じゃな。 国を滅ぼしかねんぞ」

「王は体が悪いんでしたか? そんな噂が?」

「本人はまだまだやる気らしいが、若いときの無理が祟(たた)って体を痛めているとの事でな。 だから王子様が張り切っているんだろう」


 あの王子が・・・ 武具やアイテムは良いものだが剣術は今ひとつで、竜頼みな気がする。

だから王妃は戦を避けているはずだが、止められなかったか。

王は戦を後押しするだろうから一人では無理だろうな・・・・・・


 

 「被害、拡大!」


ひときわ大きな声で、一報が入ったがどちらの被害だろう?  やはり聖剣帝国・か?




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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