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クリスタル・ロード 0267  リーシャの特別治癒

 「地脈・て、何だろうな」


翌日、リーシャの家の前にて話の続きをする。 極秘事項だが辺りに人がいないのは確認済みで、リーシャの母さんは仕事で外出中なのでリーシャは留守番だ。 


「杖によると魔力とも違うそうなのよ、その元になる力? 魔力はその一部を使いやすくした状態とかで、昔は”精製”と言ってたんだって」

「精製? 昔はそんな技術があったのか。 先文明が戦に使ったということかな」

「多分そう、今ある魔力はその残りなんじゃ・・ と思う」


その、残り? それではいつかは無くなってしまうのだろうか。

ならその精製技術を取り戻せばと思うが、悪用される危険もあるし悩ましい所だ。


「ところでネビィ、傷はもう良いの? 骨折・・どころか砕けたんだよね」   

「治癒は終わってるけど一週間安静にしてろって言われて・ 痛ててて」


 リーシャが心配そうにそっと体を触ってくるが、それでも痛いんですけどリーシャさん。

心配してくれる優しさはわかるんだけどね。


「まだ痛いなら私も治癒しようか? 少しはできるから痛みが弱まると思う」

「でも、魔力をずいぶん使うとかで大変じゃないか? 」

「いいからいいから、ここ座って」


と、家の前の石造りのベンチに座るよう促され、リーシャが杖を取り出した。

それも遺跡から持ち出した特別製のほうだ。


「この杖からね、効率の良い治癒法てのも学んでるんだ。 でも一度も試せ耐えないのよね、母さんは全然ケガしないし私も使うこと無くて~」   


 ”人体実験” の言葉が頭をよぎるがそうは言うまい。 喉まで出かかったのを留める。

リーシャの優しさ故の行動だと思っておこう。

目をつぶって背もたれに体を預けて体の力を抜いた。


「あん、もう! 大丈夫だよ、杖は信用できるし私もずいぶん練習してるから」


 ? リーシャが苦笑しているような気配がする。 口には出さなかったが顔に出てしまっただろうか、そんなはずは無いと思うが・・ ないよな?


「うん、わかっている。 手間を掛けさせるけどよろしく頼むよ」

「・・・・・・ じゃあ、始めるね。 深呼吸して、ゆっくり」


 まだ微妙な気配だが気を取り直したようだ。 

落ち着いた声で始まり、その後に呪文らしき小さな声が聞き取れないながらも続いている。  

いつもの呪文とはだいぶ違う感じがするのは杖の特別指導だろうか。 


 抑揚が有り高低もついて、呪文と言うより歌の一部のような感じさえする。

歌・というより楽器だろうか? 喉を楽器にしているかのような響き、これは不思議な声で今まで聞いたのとは別人のよう・・ 小さな声でありながら体に響き染み込んでいく?


 薄く目を開けるがリーシャの姿が見えない。

いつの間に後ろへ回ったのか、後ろから声が体を包みこんで痺れるようでもあるが心地よい。

これは声のマッサージなのか? 

先程まで近くの鳥が鳴いていたのに今は静かで、鳥まで黙って聞いているような・・


 体が内側から温まるようだが熱くはなく、涼しいような爽やかさもあり、力が抜けていくようで元気が出るようでもある? 反する感覚が同時に流れ融合し広がっていく。  



 短いような長いような呪文の後、終わりとも言われていないのに目を開けていた。

辺りがずいぶん明るく鮮やかに見える、どうしてだろう。

今度はリーシャが前に立っている。


「どう? どんな感じ?」


リーシャは少し疲れたようだが笑顔で自信ありげに聞く。


「ん~ 体の緊張が解けて軽くなったような、温まって元気が出るような・・良くなった」

「痛みはある? どこか痛い?」


折れた箇所を軽く触っても痛まない、な。 問題なさそうだ。


「痛く~ない、 大丈夫。 うん」


 先程まで痛かったのが夢だったかのように、今はどこも痛まない。   

人体実験などと思って悪いことをした。


「えへへ~~ 、やった!  成功~~ 」


リーシャは笑顔のガッツポーズで小躍り。 

やっぱり実験だったような気がしないでもない。 言わないけど。



 ゆっくりと立ち上がるが、体が軋むような感じはなく伸びをしても痛まない。

やはり体がほぐれ力がみなぎるのを感じる。


「あ、無理はしないでね。 まだ完全では無いはずだから、軽い運動から初めて」

「わかった。 ありがとう」

「えへへ」


 照れたように笑うリーシャの顔を見、ふとその後ろに違和感を受けた。  

? なんだろう?


 目を開けたときも感じたが、妙に鮮やかな気がする。

庭が・・・若葉で? 新緑というか、芝生も青々として瑞々(みずみず)しい?

石のベンチが若いツタで飾られ、小さな紫の花まで・・? こんなのあったっけ?


 庭の木々も若葉に所々の花で綾取られているが、 咲いてたっけ? いつの間に?

見つめているとリーシャも気づいたらしく、見回し始めて落ち着かない。


「あれ? え? あれれ?」


リーシャにも予想外の事態のようだ。




いつも読んでいただきありがとうございます。

ブックマークや評価など大変励みになります。

これからも頑張りますのでよろしくお願いします。

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