クリスタル・ロード 0264 解身
腕がズキズキと痛み力が入りそうもない。
しかし、だからこそのこの流派を選んだ。
この剣技に力は・いらない、必要なのは正確さ、切れ味、冷酷な魂。
切れ味はこの剣なら十分。 遺跡の剣が凄い切れ味なのはとうに確認済みだ。
問題は防御だな、魔石の身体強化が効いてくれればいいがこの腕ではあの武器を受けることはできそうにない。
体捌きで避けきることができるだろうか? しかしできなければ死ぬだけだ・仲間二人も。
「いいぞ、さあ来い!」
男が余裕の笑みで両手を胸の前でやや広げる。
これは正中への誘いの姿勢、あえて前に隙を作って導こうとしているのを感じる。
故にまっすぐ飛び込み上段右から斬りかかる・と見せて、左から近づき右腕で振ってきたところをこちらの左から横に斬りかかり腕を狙う。
左手も振ってくるがそちらは避けて奴の右へと回り込みあいつの腕を!
集中してお互いの動作がゆっくりに見え、男の腕、服の下・筋肉、健、血管、神経・が見えてくる。 これは前世から学んだこと、他流派の剣技とはいえ学ばねばばならなかった技。
筋肉を筋に沿って切りその中の神経を断つ。 これなら手に力が入らずともできる。
「くっ」
男が声を上げた。
痛みはそれほどではないがまずいことになったのは感じただろう、腕の防具が薄かった。
すぐに足の攻撃が来たので飛び退って間合いを取ろうとしたが、前転し詰めてきてそのまま体当たりとなり全身に衝撃が伝わった。
腕がきしんで激痛が起き、息が止まる。
一瞬眼の前が暗くなるが気絶するわけには行かない。 相手を回り込むように離れつつ今度は足を狙い防具の継ぎ目と思われる所から斬り込み神経と血管を狙う。
「うおっ」
防具の抵抗はあったが手応えが伝わり少し浅いがなんとか切れたと思うが、肋骨が軋むように響き痛みが走った。
さっきの体当たりで肋骨までやられたらしく、呼吸するだけで痛む・・
「あ~~らあら、どっちも痛そうね~~~ うふふ」
女は嬉しそうに眺め、仲間の出血が増えているのに止める気が無いらしい。
「ふっ こっちの傷は大したことないぞ。 向こうは骨をやってる」
確かに傷は小さいが足と腕一本ずつ、もう動かないし出血も有り終わりが近いのだが気づかないわけがない。 強がりだろうか?
「あんな事言ってるわよ、仕留めちゃいなさいよ坊や!」
「仕留められるのはどっちかな、いよいよ終盤だな~ おい」
そうだ、こちらも体が持ちそうにない・・ 次で決めなければ動けなくなる。
しかしこいつを殺して終わりとなるだろうか、もしそうしたら・・・・・
「俺もこちらの流派での決め技を使うぞ、受けられるかな?」
男はろくに動かない手足を引きずるように構えるが、残りの2本で技を出せるのか。
そう思った瞬間男の体が縮んで回転し始め棍棒が振り回されながら飛び込んできて、回転軸が傾きながら伸び上がりこちらの肩口から振り下ろされた。
しかしそれは相手の前面防御が空いた瞬間でもあり、こちらは剣を前に飛び込んでいくと腹の防具と腹筋の間に斬込み刃を滑らせて傷を伸ばす。
内蔵まで達しない程度に浅くして・だ。 二人の体が交錯する。
この時点でどちらも防御を捨て、攻撃に集中しているのを感じる。
そんな余裕がないからだ、今は自分の技を信じて決めるしか無い。
次の瞬間敵の棍棒が背中に当たり激しい衝撃が伝わってきたが、まだ終わりではない。
敵の残り手足へと斬りつけると、健が切れた硬い手応えがした。
今度は神経を斬る余裕がなかった。 背中の肋骨を砕かれたようだ。
息切れがする、呼吸が苦しい、 一呼吸ごとに激痛が走り意識が飛びそうになる。
だが相手は背中から倒れて動かなくなった。
「く、くそお、 俺はまだやれるぞ。 なんで体が動かない、これしきの傷で」
手足が動かないのは当然で、神経や健を切ってあるのだから。
それに腹の傷は・・・・・
「動かない方・・・が、 いいぞ。 腹の傷が裂け・・て ・・ 腸が飛び出る・ぞ 」
「あ~~ やっぱり? そうだと思ったのよね。 こりゃ終わりね」
「なにい? 」
男は気づかなかったのか? 切れ味が良すぎて? あるいは麻痺で感じなかっただろうか。
「今は麻痺毒のせいで感じない・だろうが、そのうち・・ 痛みが強くなる。 腹が裂ければ・・・なおさらだ・・ 」
男は呆然と腹を見る。 少し状況がわかったようだ。
「二人を解放・しろ、 早く治療しないと出血で・そいつは死ぬ・ぞ」
ごほっ と咳が出ると血が飛び散る。 肋骨が肺に刺さったらしくこちらも危ない。
「だってさ、こりゃもう終わりね」
女が頭に手を当てて、からかうように言う。
「しょうがねえ な、これは引き分けか ?」
「え~~? あんたのほうがひどそうに見えるけど・・ 坊やはそれでいい?」
「ああ」
もう視界がぼやけてきたが、こらえて息を整える。 ここで倒れるわけにはいかない。
女がレフとジョーイのツタを緩めるのが見え、二人は息をついて喉をさすった。
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