クリスタル・ロード 0263 忌まわしき剣技
左脇に痛みが走り、力がが入らない。
ケガをしたのは向こうもだが手加減して勝てる相手ではない。
呼吸するだけでも痛み、からだを捻るとなおさらだ。
「しかし俺に傷を負わせるとは、こんなことは初めてだ。 なんて奴だよ全く!」
男も顔をしかめて痛そうに伸びをする。
だが痛みには慣れているらしく戦意を喪失した様子は皆目感じられない、それなりの傷のはずだし出血していると思うが。
槍の強度が落ちているのも心配だし、後どれほど持つだろうか。
向こうの武器はまだまだ健在のようだしさてどうするか? 槍の仕掛けは未だあるがいつまで使えるか怪しいから出してしまうか。
「それにしても毒針・か? 素人とは思えんが、ちと甘いな」
毒針とすぐわかったとはやはりあいつは暗殺兵かな、どうも言動がそれらしいとは思ったが・・それなら女の方の態度も納得で、多分同業者なのだろう。
「これは毒と言っても麻痺毒だろう? その程度では俺には効かん。 殺傷用の猛毒でなければな」
余裕の笑みからすると毒耐性をつけてあるか、暗殺業なのが見え見えだな。
それならなおさら遠慮はいらんな、おかげで気が楽になったよ。
煙や針を使うなど武術ではないと気が引けていた所で、悪人になったような気分だったから・殺し屋相手なら構わないな。
次の瞬間男が無言で踏み込んできたがその程度は予測していた。 相手の虚を突くのが暗殺の基本なのはわかっているから。
対してこちらは槍の尾から引き出した金属網を投げた。 絡まりやすく金具をつけた物である。
しかし網が腕に絡んでも構わず奴は棍棒を振るって、しかも柄がまた伸びた。
網で勢いが落ちたが槍に当たりまたミシッ と音を立て寿命が縮む。
だがまた網を投げ、次には細いワイヤーが数本、こちらは槍と繋がり刃のように肉を切れるもので絡まればこちらの有利となる。
あいつは腕に絡んだ網を取ろうと反対の手で掴んだ。
今だ!
相手の両腕に絡まるよう槍の尾を回しながら突くとその意を察したか、足の棍棒を振ってこちらの頭を狙ってきたのでかいくぐろうとしたが奴は反対の足を振り上げ更に頭を狙い、両腕は地面につけていた。
なんて器用な動きなんだか!
次に受けたとき、ついに槍が音を立てて砕け散った。
しかしまだ使える、砕けたのは中程で一方は短い槍だし他方はワイヤー付き。 そちらを引っ張ると逆立ち状態の敵はバランスを崩し、そこめがけ槍を突いた。
「おっと」
しかしそれでも奴は両膝で受け金属音が響く。
ズボンの下は金属防具のようで平気な顔、だがこちらは穂先が折れた。 しかも足を腕に絡めてきて関節を決められた。
「しまっ・・」
その瞬間ゴキッツと音がして右腕に痛みが来る。 折れたか外されたかしたようだ。
男は器用に飛び跳ねるかのように両手、両足で後転しながら間合いを取って絡んだ網を外している。
「これで決まりかな? 俺の勝ちだと思うぞ・・・だよな!」
確かにこれはまずい、利き手をやられ槍を折られた。
あちらの武器は全て健在、出血はあれどまだ体が持ちそうだし戦意もスタミナも有るか。
段々と痛みが強くなり力が抜けていく。
腫れてくれば動かすのも難しくなるだろう、どうする?! これは・・・・・・?
「これで終わりなの~ 本当にそれでいいの~? お仲間が死んじゃうよ、ねえ」
あの女がからかうような笑みで声を掛けてくる。 目は実に嬉しそうな、期待のような、不気味な色で満ちている。
良いわけがない。 あんな奴らの好きにさせるわけにはいかない。
首を締められたレフとジョーイの顔色が悪化しているのが見える。 早くしなければ。
槍からワイヤー部分を外し、腰の剣を抜いて右腕を鍔と縛りつけ、槍を捨てた。
「おお?」
男が攻撃せずにそこで見つめているのはなぜかと思ったが、しかし準備できるのは助かる。
何を出すのかとの好奇心だろうか。
ならばあと一手、出掛けにリーシャから渡された魔石、これに魔力を込めたそうだがまだ実験程度で効果は身体強化。
剣は遺跡から持ち出した物で切れ味と丈夫さは名刀以上。
後はこの腕が持ちさえすればいい、そして技は残虐さで有名なあの流派の・・・・
自分が使うなどおぞましく鳥肌が立つほどの、忌まわしき。
「これで最後、 解身剣・ 参る!」
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