クリスタル・ロード 0262 奇妙な殺意
遅くなりましてすみません。
今までとは気配が違う。
これは間違えようがない、殺意。 殺す気で来ると見える。
そしてこちらにもそれを求めている。
戦でもないのになぜそこまでするのか、もはや狂気としか言いようがないが冒険者や剣士にもそんなのはたまにいる。
だがコイツラも本当にそうなのだろうか、なぜかこの二人には違和感がある。
「余計なことを考えるな、少年よ。 仲間の命がかかっているぞ!」
そうだ、あいつの言う通り訝しんでいる場合ではない。
理由はどうあれ今は本気で戦わねばならない、稽古ではなく殺し合いだ。
暗殺用かと思うこの武器を本当に殺しに使うのはかなり気が引けるが、この際仕方がない。
「では望むままに、この全てを受けろ!」
自分の持つものをすべて出そう、普通の相手ではすぐに死んでしまうと思うが・・
槍の仕掛けを使う為、ロックを外す。 一度に全部など初めてだ。
そして分銅を薄くて重いものに変える、これは刃が付いて触れるだけで切れるほどの物。
あまりに危険なので対戦で使ったことはない。
ワイヤーの先についた刃を振り回すことで槍よりリーチがある物、これを槍先に装備することで攻撃力が数倍、リーチも同様だ。
投げるにも引くにも攻撃となる。
「うおっと」
敵は慌てて辛くも避けるが態勢を崩し、ふらついた所を槍を引いて分銅刃で頭を狙う。
鋭い金属音がして火花が飛ぶ。
かなり際どかったはずだが棍棒で弾いていた。 あの重そうな武器でよく間に合う!
耳の下へ流れて首が切れるかと思ったがそうはいかなかった。
「いいね、実にいい。 ただの少年とは思えんよ、殺し屋のようだ・・」
男は嬉しそうに目が輝く。 陶酔してるかのように。
「では俺も秘策を出すか、お互い手の内を吐き出そうや」
言うなり棍棒を突き出してくるとそれが急に伸びた?! 間合いの外のはずが棍棒が迫りこちらの耳に当たる。
鋭い痛みとともに血が垂れていくのを感じた。
今のは何だ? 棍棒が伸びて倍になったように見えたが、どんな仕組みなのか。
しかも戻っている? 鎖では無いと思うし・・
「どうだ、 驚いたろ? すぐに死ぬなよ、つまらんからな」
言い終わらないうちにお辞儀のように屈んだと思うと両手を地面に付いて足を振り上げ、いつ現れたのか両足に付いた棍棒を振ってきた。 これもどんな仕組みなんだ?!
手の物より少し細いが長めで足のリーチもありすぐに迫る。
しかも両足が違う角度で振られるのでギリギリで一報をかわし、他方を槍で弾くと重い衝撃で腕がしびれた。
こんな攻撃を受けていては腕も槍も持ちそうにない。
槍の柄は軽いが木製、対してあちらは重い金属。 よくあんな物を軽々扱う、なんて力だ。
それに今度は足を使い始めた。 腕を振り突いてきたかと思えば逆立ちのように両足で攻撃、手と足の上下攻撃もある。
足を狙われて飛び上がって避けると次は頭を狙われ、かわし切れないので槍で弾くがミシリと音がした。
そろそろ柄の限界が近い、小細工はしたくないが仕方ない。
仕掛けスイッチを入れると槍から煙が出て次には針が数本飛び出した。
「ぬっ?」
煙の向こうで男の声が聞こえたが、当たったろうか? 一本でも当たればいいのだが。
確かめてる余裕はない、煙の向こう、男へめがけて槍を突き出した。
ガギン と、鈍い音がし、槍が止まる。
柔らかい感触も混ざっていたので刺さっただろうか、煙が流れていくと見えてきた。
槍先を棍棒2本で受けているが肩に少し当たり血がにじみ、針が1本腕にある。
針も当たっている、ようやく攻撃が通った。
そして槍を引くときに横に出ている刃で服を切ろうとややひねる。
戦士の服は通常、鎧の意味があり防御を兼ねた丈夫なもので切れば効能が落ちるからだ。
しかしこれがまずかった。
思ったより丈夫で刃先が引っかかり動きが止まって、一瞬棒立ちになってしまう。
左脇腹に痛みが走り敵の足による棍棒を食らっていた。
とっさに肘で防御したが勢いを少し弱めた程度で骨をやられたらしい。
「くっ」
「お前もやられたな、おあいこというわけだ」
「うわ~~ 、凄い凄い、 いい勝負~~」
女は拍手しながらずいぶん嬉しそうだ。
仲間がやられようが意に介さないらしい。




