クリスタル・ロード 0258 撤収
木に直撃しそうな動きであり、自分ではどうしようもないほどの勢い。
ゆっくりに感じているがそう思っているうちにも幹が迫ってくるが、どうする?
う~~~ん、う~~~~~ん、 方向を変えようとしても直進の方が早く間に合わないか?
もう剣の間合いである。
そう思ったとき剣があるのに気づいて振りかぶった。
一閃で何度切ったろうか、限界の速さで繰り返し、輪切りにして衝撃を減らそうと試みる。
幹がいくつもに分かれるのが見えた瞬間、激突し体に衝撃が伝わった。
切った幹と一緒に体が飛んでいく・・・・・・・・
灌木や草の背景が迫り、視界が暗くなり顔を叩き目をつぶると体が転がり始めたようで、もう上も下もわからなくさらに進む。
地面を滑っているような感じがある、ああ、そうか濡れているかと思いつつも動き続ける。
そして気が遠くなった。
はっ ! 気絶してはだめなんだ。 リーシャたちを守らないと!!
「起きたかネビィ、もういいぞ」
グロフが落ち着いた声で言った。 もういい? え?
「フレアがみな凍らせたからな、おかげで寒くて仕方ないが」
周りを見るとリーシャ親子とフレア、そしてグロフがいる。
少し離れたところに他のチームが、 あれは治療中だろうか・・けが人が出ているらしい。
辺りは一面氷に覆われている。 森の端まで来たのだろうか、日が差し込んで少し明るい。
リーシャ達は無事だがグロフは手足に何箇所か血が滲んだ包帯をしている。
「おれの傷は大したことない、少し痛むだけだ。 ネビィこそ大丈夫か?」
「自分? え~~~と」
「強化魔法も掛けたからケガは無いはずだけど、すごい勢いでぶつかってたからね。 頭打ってない? どこも痛くない?」
リーシャが心配げに顔を見つめてくる。 すごく近い。
「だ、大丈夫。 問題ないよ」
フレアがいつの間にか起きて青い顔でせわしなく辺りを見回している。
「もうヘビ、いませんわよね。 全部凍ってますわよね、ですよね!!」
「ああ、お前が全部凍らせたろうが」
グロフが呆れたようにフレアを睨む。
「よくあの状態から起きましたね」
「早く起きないと蛇が来るぞと、耳元で怒鳴ってやったからな」
疲れた声でグロフがため息をついて自分の頭に手を当てた。
反してフレアは自分の体を抱くようにして青い顔でまだ周りを見ている。
「へびはいけません、あんなのがいると知っていたら絶対来なかったのに!」
「言っとくがあれはヘビじゃないぞ、あれも魚だ。 街で聞いたろう」
「あんな魚がいるもんですか! 絶対ヘビです。 断言しますわ」
「そんなことより、もう撤収しないと。 みな無事なようだし」
「そうですね、フレアがずいぶん森を荒らしちまったし街の兵士が調べに来るだろうな」
先生が言う通り状況が非常にまずい。
森は泥水が流れ、飛ぶ魚?の死骸がそこら中に落ちて、木々は痛み、おまけに一帯が凍りついている。
これは一騒動起きそうだ。 場合によっては国際問題か?
「ネビィ歩ける? 本当に大丈夫?」
ずいぶん無様なところを見せてしまった。 木に衝突とは・・・・・
「ああ、平気、平気 」
「馬車の所までもうすぐだから」
グロフはフレアの襟首を掴み引っ張っている。
「ほれお前も歩け、撤収だ。 撤収!」
「わかっていますわ、引っ張らないでください」
こうして初めての諜報活動はその幕を閉じたのだった。 これ成果あった?・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして無事帰投した。
数日後、領主の館にて報告。
結果として・・・・・・・・・成果はあった。
内容が内容なだけに、皆かなりのお叱りを覚悟の上だったのだが。
領主は一通りの話を聞いたうえで怒りもせず言った。
「まあまあだね」
・・・・・・ まあまあ? これで? ・・・・ 本当に?
「情報というのは、些細なことでも役に立つことがあるからね。 少し見ただけで面白いネタを得られたのは良い事だ」
面白いとは森の変わった魚かな? あれが役に立つと?
自分の知らないうちにあれを氷漬けで生け捕りにできたらしいが、それでいいのかと思う。
「後は分析班で考察するから、潜入班はゆっくり休んでくれ給え。 お疲れ様だね」
そしてこの件は意外に重要だと知ることになったのだが・・・ それは後の話だ。




