クリスタル・ロード 0252 年に一度の・・
戦が近い! 改めて考えるとどうするかと身が縮む思いだ。
ドラゴンソードはあるが使えるのは今のところ自分だけ・・しかもまともな勝負とは限らない。
住人を真っ先に狙われたり街を焼かれてはどうしようもない。
遺跡の兵器だってどの程度役に立つか、龍相手の実績などないのだ。
「ネビィ、何を考えている?」
宿でグロフと同室になって今は二人きりだった。
リーシャは別室で、親子水入らず、今は安全だしくつろいでいるだろう。
夕食が終わって眠くなっている頃でもあるし、もう寝ているかな。
「戦が始まるとしたらいつ頃か、そして規模はどの程度で被害は・・・と」
グロフは窓辺の椅子でワインを飲みながら干し貝をかじっているし、自分はベッドに横になっているが寝られるわけがなく短剣を磨いている。
グロフも兵士ではないが戦のことを考えていると見た。
「本当にお前って子供とは思えんな、戦いぶりもそうだがまるで歴戦の兵士じゃないか。 親父さんにどれほどしごかれてるんだ、末は衛士隊長か?」
酒が入っているからか冗談混じりの口調ではあるが少しドキリとした。
やはり少しは中身が出てしまうか? バレてはいないだろうけど、な。
「物心ついた頃からなので、でもはじめのうちはかなり辛かったんですよ。 嫌で嫌で一人泣いてたこともあったぐらいで」
「そりゃそうだよな、歩く凶器と噂の隊長のシゴキじゃ俺だって泣きそうだよ」
ワインを煽りながら笑う。
彼はワイン程度で酔わないらしく赤くなってもいず、お茶と変わらない様子だ。
グロフはいつも通りの彼だ。
だが今の話でなんだか引っかかる感じがした・が、何だ?
グロフの言葉ではなく、自分だ。 自分の何が引っかかったのか・・・?
「泣いていたこともあった」 だったか、 泣いていた? 自分が? いつ?
こちらの父さんに鍛えられていたことは知っている。
知ってはいるが・・・ 泣いていた記憶はない。
というより、物心ついた頃から鍛えられたのも、知っているが体験ではない。
体験ではなくいつの間にか知っていた? 教えられたような気がする。 教えられた?
教えられた・・・誰に? この体の元の持ち主に、か。
元の、持ち主。 その彼は、どこへ行った。
なぜ今まで考えなかっただろう、 違うな、 考えたか?
考えてもいつの間にか、霧に包まれてしまうような・・ そんな気がする。
なぜか記憶がぼやけるような。
「ほれ、お前も飲め。 ワイン程度なら飲めるだろう、ぐっといけ」
グロフはレフ達がいないと物足りないらしく、酒を勧めてくる。
いいけどね、ワインならなんとか飲めるし。
「ネビィ、起きてる?」
そこへノックの音がしてリーシャ、だけじゃないな、親子がやってきた。
「あ~~、 ワイン飲んでる! 私も、 私も!」
「二人とも起きてたのね、ぶどうジュースも持ってきたからリーシャ達は割ってね。 一緒に飲みましょう、オツマミもあるから」
そうなのだ、リーシャも意外に酒好きなんだった。 子供っぽい顔の割には強いんだよな。
「おお、これはすみませんね。 それじゃ遠慮なく酒盛りといきますか」
なんだか悩む雰囲気で無くなってしまった。
まあいいか。
「ここの水がすごくいから お酒もいいのよ。 うちの街のより良いわね、お土産に買っていきましょうね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日、酒で寝坊する人がいるのではと思ったがみな血色が良く元気だ。 リーシャまで。
顔を見つめていると 「なに?」 とキョトンとされてしまった。
街は昨日のドラゴン騒ぎから一変して静かで、住人が落ち着いている。
フレア達の一行は別行動になっているが街ですれ違うとき、「問題なし」の合図をしている。
そして向こうも皆、血色が良い。
街の中央付近、噴水のある広場に差し掛かると出店やステージの準備がされているらしく、すこし忙しそうに人々が作業をしている。
「なんだろ、祭りかな」
「そうみたい、ノボリに書いてある」
リーシャが指さす先に「水祭り」と書かれた布が掲げられている。
「お客さんたちも見に来るといいよ、ちょっとした見ものだから」
近くで作業をしていた住人が声をかけてくれた。
「そういや去年も祭り頃にドラゴンが来やがって、危うく中止になるとこだったが今年も無事で良かったよ。 ハラハラしたね」
その夜、広場で特大の噴水が吹き上がりその水が虹色に輝き、夜空を彩り、集まった人々から歓声が上がった。
年に一度、地下水の圧力が上がり屋根の遥か上まで水が吹き上がり広がり、輝くとのことでそれは見事な光景で旅行者達は呆然と見上げてしぶきを受けている。
「濡れちゃうけど、綺麗ね~~ すごーい」
「でもこれは・・・・・・・ 魔力? 何かしら、なんだか不思議な感じね、これ」
いつもお読みいただきありがとうございます。
暑くなってきましたが、この夏も乗り切りましょう




