クリスタル・ロード 0249 家族の演技、開始
焚火から漂う気配が普通の炎ではないことを示している。
虹のように色とりどりで混ざりながら踊るようにその形を変える。
香りまで違い、甘いようなしびれるような不思議な感じが広がっていった。
「これは・・・ いわゆる精霊の加護ね」
「精霊て、魔力をつかさどるアレですの?」
「その加護と言われる、つまりかなり濃い魔力が木に蓄えられているのね。 水もそうだけどそれを吸う木にも長年で魔力を蓄えているのでしょう、私も初めて見たけど」
リーシャの母さんは魔法の先生で古代からの魔法を知っているそうだ。
その先生さえ初めて見る現象、それがこの国では起きるとは。
この国ではこれが普通なんだろうか、それともたまたまレアな場所に着いたのか?
「危険は・・なさそうね、焚火程度なら大丈夫でしょう。 魔力酔いでもしない限り」
炎がフワフワと踊るように形と色を変え渦を巻く。
まるで精霊がいたずらをいているかのごとくで、だから「精霊の加護」なんだろう。
魚を焼いても問題ないかなと串を刺した一尾を近づけると避けるように炎が分かれて、それからゆっくり巻き付くように一つになり包み込んで焼き始めた。
「あ、いい香り」
リーシャが言ったように香草をまぶしたような、さわやかな香ばしさが広がっていく。
魚だけではない澄み切った香りの、食欲をそそる良さがある。
今までで一番うまい魚になりそうだ。
「おお、これは美味いな。 これほどの魚はめったに食えないぞ」
「本当、高級レストランでもこうはいきませんわね」
グロフたちも感動するほどの美味さ、これは持って帰りたいほどだがお土産にできるだろうか。
干し魚ではこの新鮮さはでないか? 生では帰りまでもたないかな。
「水の国と呼ばれるだけあってずいぶん良い水なんですわね、だから魚もおいしいし魔力まで込められるほどなんて」
「そうだな、だからあの妙な魔物も生まれたのか。 面白いぞこれは」
皆の服が乾き、休憩終了すると街へ向けて馬車を走らせた。
濡れただけで馬車にも異常はなく、近くの町まで数時間で着くだろう。
とりあえず急ぐ必要はなく、3台の馬車が少し離れてゆっくりと走り続ける。
芝や低い木々が見える程度の見通しの良い草原を横切っていく。
昼を少し過ぎるころ小さな町が見えてきた。
「じゃあみんないいか~、 俺たちは別々のグループだ。 町に入れば別行動だがなるべく近くにいろよ」
グロフがほかの馬車に声をかけて街に入る準備を始めた。
リーシャが少し緊張しているか、そわそわと服を点検している。
「私の服変じゃ・ない? 急いで着替えたから・・大丈夫かな」
「なんともない、きれいだよ」
「母さんも見たから問題なしよ、帽子かぶる?」
日除けとなるレースの帽子をかぶると少し子供っぽいがお嬢様のようだ。
そして馬車が緩い検問を済ませ街へ入っていき、宿屋の前で止まった。
「荷物を置いたら少し街を見て回ろう、大きな町までは1日ほどかかるはずだから明日の朝出立の予定で、な」
「はいはい、父さん」
どうも慣れんなと、グロフはぶつぶつ言うが仕方ない。 そういう役なのだ。
リーシャは笑いをこらえているが、先生は微笑む程度で黙っているのが大人の余裕か。
小さな町だが賑わいは自分等のところとさほど違わず、出店では魚や川ガニなど新鮮な物が売られている。
街に水路があり、近くに橋が何か所もあるほどここも水が豊富なのがわかる。
しかも透き通って魚が泳いでいるのがよく見える。
「見て見てネビィ、すごくいい魚よ艶があって元気良くて・・小さいのは透き通ってるみたい、向こうのは凄くきれい」
リーシャが指さすのは赤や金色の混じった輝くような魚、それが数匹踊るように泳いでいた。
それがぴたりと止まってこちらを見つめると、少ししてスイと体を翻して離れていった。
「あ、行っちゃった」
「大きな声出すからよ、驚いたんでしょ」
先生はそう言ったしそう考えるのが普通だが、今の動きは何か引っかかるような気がした。
しかし何がだろう、なにか妙な気がしたが自分でもなぜなのかわからない?
「あの色付きの魚は食用に向かないよ、身が少ないから。 観賞用に買ってく人がいるけどね」
近くの出店の主が教えてくれる。
そこにも新鮮な魚が並べられ焼かれて良い香りを煙とともに漂わせている。
「ここは川の幸が自慢だよ、さあ買っとくれ」
隣の屋台ではエビやカニに似たものを焼いているが、あれはなんだ? ザリガニとも違う。
何やら変わったのが並べられている・・・・・。
「少し買っておくか、宿で食べるとしよう」
グロフがそんなことを言うが初めて見るものだ。
形がアレなんだが。
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