クリスタル・ロード 0244 妙な結末
サメのような大口を目一杯開けて向かってきたとき、槍を口の真ん中に向けて全力で投げて飛んだ槍が喉まで入りそうなタイミングでワイヤーを引いた。
それはあえて槍の先の方へ付けてあるのでワイヤーを引くと槍の向きが変わり、口の中でつっかえ棒のようになり穂先が刺さる、更に引くと食い込んで固定される。
クラゲザメの一本釣りの出来上がりだ。
「かかった!」
そしてワイヤーの反対側を馬車に向かって投げた。
「ジャンヌさん、これを馬車に繋いで引っ張ってください」
馬車の上で弓を構えていたジャンヌが意図を察してくれたか、馬車の後ろにワイヤーを掛けすぐに手綱を持って走らせる。
「な、何ぃ?」
敵召喚士が動揺して叫んでいるが、構わず進めてしまう。
まあ見ていろ、どうなるかお楽しみにだ。
強力な馬車に引っ張られた獣魔は口を開けたまま、いつもの数倍の速度で飛ぶことになり風を受けて空気を吸い込み膨らんでいった。
するとどうなるか? 柔らかい体に張りが出て斬りやすくなる!
しかもジャンヌは意味を察したのか円を描いて召喚士達の回りを走らせ、見せつけるかのようだ。
これなら敵を逃さないことにもなるし、実に気が利いている。
「リーシャ、こっちを逆回転で飛ばせてくれ」
「逆回転? わ・わかったー」
そんなことを指示してリーシャの目が回らないかと一抹の不安があるが、そこは頑張ってもらいたい。 自分は鍛えてあるから大丈夫・・のはずだ。
言った通り円を逆に回って、大口を開けたまま向かってくる獣魔を避けつつ剣を振ると硬い顎から体まで一気に切り裂くことになった。
相対速度もあるので今度は浅くならず十分な深手になったろう。
裂けた体から体液が吹き出して地面を濡らしていく。
「な、何だと・・・・ そんな・・」
ますます動揺する召喚士の前で二度、三度と斬撃を繰り返し獣魔の傷が増えると奴の顔色がどんどん青くなっていく、さっきまでの威勢はどこへやらだ。
弓兵が馬車を狙って矢を射たが速度を上げた装甲車に効くわけもなく、あっさりと跳ね返される。 ジャンヌの前にも装甲があるしあんな矢にやられる彼女ではない。
魔法士も攻撃を仕掛けてきたが、フレアの氷魔法で跳ね返された。
いつもなら強すぎる彼女の魔力だが今は疲れているらしく、程々の力で済んでいる。
敵にとって幸いなことにだ。
斬撃を繰り返した獣魔の体はどんどん裂けて、すだれのような、それとも吹き流しとも言うような形状になっていく。
体液が抜けていくせいもあり細長くなった。
「や、やめてくれ、 あれは・・ あれは・ 我が国の秘宝なんだ・・」
ん? なんだか召喚士の様子がおかしい。 呆然と見上げているが、なんだって?
飛んでいるため風切り音でよく聞こえない。
「やめてくれ! あれは秘宝なんだ、あれが死んだら我が国は・・ 降伏する!!
降伏だ! だからもうやめてくれー !!」
召喚士の叫び声がこだまし、構えていた剣を下ろすと体の速度が落ちていく。
馬車も徐々にその勢いを緩めゆっくりとした足取りになり、辺りに静けさがもどって来た。
「送還、送還だ! 戻れ、送還だ!」
ふらふらと獣魔に寄っていく召喚士が魔石を差し出すと、切り刻まれた獣魔がそれに吸い込まれて消えていき、それを見届けた召喚士はバタリとそこで倒れた。
小型の獣魔達もそれに合わせるように消えていく。
場に静けさが戻った。
召喚士が、倒れた? 魔力の枯渇か?
ピクリとも動かないが・・・・ ついさっきまで叫んでいたのに、なぜだ。
自分の体がゆっくりと地面まで降りるとフレアが小走りに寄ってきた。
「ざまあみなさい、ですわね。 召喚獣が傷を負ってるからと引っ込めたら召喚士までダメージを受けるのですよ」
「そんな事があるのか・・・ 呪い返しのようだ」
装甲馬車が止まるとリーシャがドアを勢いよく開けて飛び出してきた。
「お母さんは?!」
そうだ、リーシャの母さんが攫われたのではなかったか。
「リーシャの母さんは・・向こうの馬車ですか!」
敵の馬車はひっくり返り、壊れているのもある。
あの中にいるとしたら・・・・・・・無事か?。
「は? リーシャのお母さん? 誘拐されたのは私ですよ」
フレアがポカンとした顔をする。
そしてこちらもそんな顔だろう、訳が分からない。
「あの・・・ そもそもはリーシャが攫われたと連絡が来たんですが」
「え? 、あ、 ああ~~」
フレアが複雑な表情をしているが、 一体何がどうなっているのだろう・・・・・ 説明して欲しい。
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