クリスタル・ロード 0225 重なる災厄
大木の広い洞の中がしーんと静まり返った。
「終わった? はあ、よかったあ」
グロフ達の後ろから顔だけ出して様子を伺っていたジョーイが息を吐くと、肩に掴まったままズルズルとひざまずいた。
よほど気を張り詰めていたらしい。 それは自分もだけど。
フレア、リーシャ、アイリスの魔法担当3人がやや上気させていた顔を緩めて詠唱を止めた。
アイリスは床に膝をつき息を乱している。
「ふう、疲れたね~ アイリス 息が切れちゃった」
「うん こんなに本気を出したのは初めて・・・ 」
語尾が息切れで掠れているほど、二人は力を使い切っているようだ。
氷の防壁の向こうは別の氷が幾重にもなり、そのせいで辺りはかなり冷えて空気がキラキラと光り空気の水分が凍っているらしいほどでかなり寒い。
足元まで冷気がただよって来る。
そのおかげであの大型アリが切断され、潰され、今はピクリともしないのだから仕方ないのだが。
「3人ともありがとうな、疲れただろう」
グロフが剣を鞘にゆっくりと収めて振り返った。
本当に感謝しか無い、こちらも出番の無かった剣をしまった。
「任せっきりでごめん、頼り切って終わったみたいだな」
「ううん、 久々だから張り切っちゃった」
「自分も、 実戦はやりがいある。 大丈夫。」
言いながらも息切れをして紅潮した顔の二人を見て、申し訳なく思う。
「そうですわ、自分の出番ともなれば力を振り絞るのが当たり前、しかもワタシは先輩ですから後輩たちを守るのが当然ですもの!」
おお~っ とレフが拍手をする。 フレアが胸をはって髪をかきあげポーズをとる。
この辺は仲間のお決まりらしい。 気の合うパーティだ。
「ところで空気は問題ないか、入口を塞いでしまったが」
「しばらくは持つだろう? この広さがあるからな、黙って座っている分には」
「でも・ ちょっと寒いね、毛布出そうか」
ジョーイが肩をすぼめてリュックを開こうとしたとき、脇の方で弓矢を収めようとしていたジャンヌの手が止まり防壁を見て呟いた。
「まだ、 います」
ーーーーーーーーーーー
「なに?!」
グロフが叫んだときズズンと音が地鳴りのように響き床を揺らした。
そしてフッとあたりが暗くなり防壁の厚い氷を通して太い柱のような影が見えた。
柱? なんでそんなものがと思ったその時、それが動いた。
違う、あれは柱では無い。 上の方が曲がっているし動いている。
そう思ったとき氷の壁の上から黒い球が降りてきているのが見えた・・・・
あれは・・ 頭だ。
外にかなり大きな蟻が来ていると悟った。
初めは足しか見えなかった、どれほどの大きさなのか? 頭を下げてようやく視界に入ったそれは先程の十倍はあるだろうか、そしてあの音はそれほどの重さかを示している。
その時またズシンと響いて床が揺れた。
「ひっ」
ジョーイの顔が引きつってリュックを抱き寄せる。
「また、ですの。 それになんてサイズ」
さすがのフレアも顔色が悪くなって囁いた。
「あれはボスクラスだぞ、やばいな」
「20人以上で対応ならともかくな、この人数では・・・・・」
レフ達が言うように半数しかいなければあの相手は厳しい。
しかもここは狭いから距離を取れない。 ドラゴンソードを全開にすれば味方を巻き込みそうでやりにくいし相手の数が不明だと、なだれ込まれる危険がある。
そしてまた氷の壁が暗くなりズンと鳴り響き壁や床が揺れて、防壁から氷がバラバラと剥がれ落ちた。
体当たりをしているらしい。
「ちょっと、どうすんの? なんとかしてよ~~~!!」
ジョーイがいよいよ切羽詰まって叫ぶ、 顔色がかなり悪くなり気絶しそうな程だ。
こうなっては仕方がない。
ドラゴンソードを抜いて念を込めることにした。
皆を巻き込んでしまいそうだが何もせずにやられるよりはマシだろう、剣を蟻に向けると呼応したように手に熱と振動が伝わりビリビリと力が漲っていく。
眠れる龍が目覚め、この大木すら切ってしまいそうな力が満ちていった。
だがそれより早くボスアリが防壁を崩し、砕けた氷がバラバラと落ちてくる。
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全員にお礼を言えていないと思いますが、誠にすみません。
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