クリスタル・ロード 0224 更なる災い
「ひいいい~~」
ジョーイが奇妙な叫び声をあげる中、防壁からはガリゴリバキバキと噛み砕く音が響き、その顎の強さがどれほどかを際立たせる。
それもまだ一匹でだからあと数匹もいればすぐに破られてしまいかねない。
「おい、どうする」
「どうするったって、防壁を強化する以外に無いだろな。 フレアできそうか」
「もちろんですわ、まだまだ」
フレアが気丈に立ち上がり杖を構えるが顔色がやや悪く、疲労が見て取れる。
それを見てリーシャとアイリスが前へと出て同様に構えた。
「私達もするから・ 氷魔法は私苦手だけど全開で」
「ワタシ、補助と氷の同時展開・行きます」
同時? そんなことができるのか? アイリスが天才的なのは聞いてるが。
しかし彼女は本気らしく、小さな体ながら立って真剣に入口を見つめている。
ジョーイはすっかり腰が引けてグロフ達の影に隠れて怯えているのにだ。
そしてジャンヌは二人の脇で強力な弓を構え準備ができていて、いつの間にかツタから削り出した矢で補充をしそれを増やしていた。
寡黙ながらも流石に歴戦の勇士ですごい人だ。 冷静でもある。
そしてレフとグロフは武器を構え前衛に付き、アリの侵入に備え青い顔ながら皆の壁役として立っている。
おっと、自分も行かねばと遅ればせながら剣を抜き前衛へと歩を進めようとしたとき、後ろで妙な気配がする。
何かと見るとガサゴソと音を立てながらミミィが床の石板を急いでリュックへと詰めているところだった。
え?
もしかしてあの石板を持ち出そうとしているのだろうか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
しかし持ち出そうにも出口にはあの大型アリが構えているのだが、忘れている・のではないかな?
石板に夢中でそこまで考えていない・・かもしれない。
まあ今それを咎めている場合ではない。
気を取り直して剣を構えて配置につくことにしよう。
いざとなればドラゴンソードの威力に頼るが、攻撃前の溜めが長いのと威力の調整しにくさだがそれを心配してもしょうがない・父さんの武器を併用して補うとしよう。
「多重氷結、超重氷壁、極低温場、連刃大氷刀」
杖を振り上げ毅然としたフレアの詠唱が始まり辺りが急に寒く重々しい空気となり、防壁が更に凍りながら厚みを増し入口の蟻を飲み込んでいき、光を徐々に遮り初めた。
そしてリーシャとアイリスもそれに続く。
「氷大盾!!」
「~~~~~~~~・~~~~~~~~~~~」
アイリスの方はなんと言っているかまるで聞き取れない。
二重の詠唱なので高速言語と言うやつだろうか、自分はよく知らないのでわからないがフレアとリーシャ、それに防壁が妙に輝き出したように見える。
そんなふうに皆が緊張して迎え撃つ中、後ろではミミィが石板を持って右往左往しているのが視界に入った。
まだ持ち出そうとしているのだろうか・・・・・
一人だけ空気が違う。
防壁の向こうでは大型の蟻が壁とともに凍りつき、別の氷が体を潰し、更に別の氷が大きな剣のように切断をすると、かなりの音が響き床がビリビリと震えた。
「おおっ 」
「これはいけそうだな」
確かに、二人が言うようにこれはホッとした。
あのデカい蟻でもこれなら一撃で終わりだろう、数匹程度では揺るがない威力があるし回復しながら持ちこたえられる、皆がそう思っただろう。
氷が厚くなった分、中が暗くなり顔がよく見えないが安堵した息遣いを感じる。
蟻が動かなくなり静けさが戻ってきた。
「もう・・大丈夫? これで終わり・・・だよね」
後ろからジョーイの不安そうな声が聞こえ、顔をのぞかせ恐る恐る防壁の様子を伺っている。
フレアが深々と息を吸い込んで胸を張った。
「当然です、ワタシが本気を出したからにはあんなもの好きにさせませんわ」
杖を振り払うようにポーズを決めた。
アイリス達も頑張っているとは思うがまあ良いだろう、ここは好きに言わせておこう。
しかし事はそれだけでは済まなかった。




