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異世界は勇者を待ち望んでいる  作者: 山本乃良
第1章:魔王城、決戦の火蓋は切られた
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シーン3:世界の命運を左右する話し合い

 魔王城、会議室。


 重厚な円卓を囲むのは、魔王、勇者、戦士、魔法使い、僧侶。全員、最終決戦で着ていた衣装や鎧のままだ。

 円卓の上には、お茶と茶菓子。そして配布資料。

 女将軍は記録を担当し、プロデューサーはハンチング帽を被ったまま進行表を広げた。メガホンは椅子の背もたれに引っかけてある。


「それでは、第256回、魔王城最終決戦通し稽古の反省会を始めます。まず本日の結果ですが、勇者パーティー、全滅です」

「知ってます」

「では、全滅に至った原因について、魔王様からご説明をお願いします」


 魔王は腕を組んだ。

 しばらくの沈黙。


「……気合が入った」


 女将軍が静かに筆を走らせる。


『原因:気合が入った(本人談)』


「毎回そうじゃないですか」

「いや、今回は最初こそ抑えていたのだ。お前たちの動きを見ているうちに、つい」

「つい?」

「……気合が」

「だから、それをやめてくださいって」


 魔王は申し訳なさそうに頷いた。


「次回は加減しよう」

「前回も同じことをおっしゃってましたよ」

「そうだったか」

「前々回もです」

「……むう。加減というのは、なかなか難しいものだな」

「そこからですか」


 勇者が天井を仰ぐ。


「はい。では次に、勇者パーティー側からご意見を」


 勇者は姿勢を正した。


「戦闘の組み立て自体は悪くなかったと思います。戦士が前に出て、俺が側面から攻める。魔法使いの援護も予定通りでしたし、僧侶の防御魔法も間に合っていました」

「魔法の発動にも、特に問題はありませんでした」


 魔法使いが頷く。


「そうだな。とりわけ魔法使いの詠唱は素晴らしかったぞ」

「……ありがとうございます。前世でも滑舌の良さには自信がありました」


 魔法使いは軽く頭を下げた。僅かに見える耳が赤い。


「ただ、あれほどの連携を見せられては、こちらも応えねばなるまい」

「応えなくていいんですよ!」


 勇者が身を乗り出す。


「こっちは全力で防御魔法をかけてるのに、まとめて吹き飛ばされてるんですから!」

「いや、防御魔法も見事だった」

「褒めてもらっても困ります!」


 僧侶まで声を張り上げる。

 女将軍が書き足した。


『次回改善事項:魔王様、攻撃魔法の威力を抑制(継続案件)』


「では、戦士さん」


 プロデューサーの声に、戦士が待っていましたとばかりに背筋を伸ばした。


「本日の崩れ方は、七十五点です。爆風を受けた際の右足の運びはよかったのですが、左肩の入りが少し浅かった。あそこで半回転を加えれば、さらに自然な倒れ方になったかと」

「……誰も聞いてないですよ」

「自己採点です」


 戦士は真顔だった。


「しかし、そこまで倒れ方にこだわらなくても……」

 勇者が呆れたように言った。


「それは聞き捨てなりませんね。前世で培った役者魂が、いい加減な芝居を許さんのですよ」

「……そうですか」


「大部屋時代は、斬られ役ばかりでした。今では魔王様直々に吹き飛ばしていただける」

「出世したみたいに言わないでください!」


 戦士は満足そうに頷いた。

「これぞ役者冥利に尽きるというものです」


「次回は、もう少し大きく飛ばされてみたいですね。できれば階段のある場所で」

「階段?」


 魔王が興味を示す。


「階段落ちという技法がありまして。うまく決まると非常に見栄えがよいのです」

「それは面白いな」

「ですよね。しかも段数が多ければ多いほどいいのです」

「では、次回の戦闘では階段を――」

「作らなくていいです!」


 勇者が叫んだ。


「魔王様も戦士さんも、反省の方向が違います!」

「では、階段落ちについては別途検討ということで」


 プロデューサーが進行表に書き込む。


「検討するんですか!?」

「進行が押していますので」

「……はい」


 勇者は椅子に沈み込んだ。

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