↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を救ったのは剣豪でもなく陰陽師でもなく薬師?だったんですよ!  作者: 氣愛注入


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/121

工場を潰せ! 黄泉の住人を救い出せ!

阿国、しん吉、きゅうすけは収容所と工場から離れるため、根の国の乾いた大地を走っていた。


「この辺りでいいかしら♪」


「でも、誰も追ってこないよ。」


「もう少し収容所の近くを回ってみる?」


三人が進路を変えた直後、枯れ木の向こうから鎧や武器のぶつかる音が近づき、やがて暗闇の中から数十体の屍兵が次々と姿を現した。


「ダァァァレェカァァイルゥゥゥゾォォォ!」


「アゥゥゥ! トォォボォォウシャョァァアダ!」


「やっと来たわね♪ しん吉、きゅうすけ、逃げるわよ!」


阿国たちが収容所から離れる方向へ駆け出すと、数十体の屍兵が鎧を鳴らしながら一斉に追いかけてきた。


「いっぱい来てるよ! なんて数だよ!」


「このまま遠くまで連れていくわよ♪」


三人は枯れ木の間を縫うように走り、背後から追ってくる屍兵たちを引き連れたまま暗闇の奥へ消えていった。


その頃、ワイチ、武蔵、村正宗、ナリア、エレナは収容所へ到着していた。


広い収容所の中に残っていた屍兵は数体だけで、阿国たちを追った大半の屍兵の姿はすでになかった。


「ずいぶん減ってるな。」


「阿国たちがうまく引きつけてくれたみてえだな。こいつらは俺たちで片づけるぞ!」


武蔵が二刀を構えると、村正宗も玄武の盾を前へ出し、出口を塞ごうと近づいてきた屍武者たちの前へ進み出た。


「ナリアさん、エレナさん、中の人たちを早く外へ!」


ワイチも二人とともに収容区画へ駆け込み、エレナが閉じ込められていた人々へ声を飛ばした。


「皆さん、こっちです! 早く外へ!」


その声に人々が一斉に動き出し、金網の中から次々と出口へ向かう中、一人の男がエレナの姿に気づいた。


「エレナ、エレナじゃないか!?」


「助けに来ました! ここから逃げられます!」


人々が出口へ殺到すると、残っていた屍武者が刀を振り上げてその列へ迫ったが、武蔵が正面から飛び込み、振り下ろされた刀を太刀で弾き上げると、そのまま脇差を胴へ走らせた。


「そっちは行かせねえぜ!」


斬られた屍武者が崩れ落ちる横から別の一体が住人たちへ回り込もうとしたが、村正宗が玄武の盾を突き出して進路を塞ぎ、そのまま正面から押し返したところへ武蔵が踏み込み、太刀と脇差を続けざまに叩き込んだ。


「逃げる連中に手ぇ出すんじゃねえ!」


屍武者が倒れ、その横を人々が次々と駆け抜けていった。


「外へ出ても止まらないでください! 収容所から離れて!」


ナリアが出口へ向かう人々を先へ進ませる中、ワイチとエレナはさらに奥へ入り、まだ動けずにいた者たちを見つけた。


「まだです、奥にも人がいます!」


ワイチが残っていた数人のもとへ駆け寄った。


「もう大丈夫です。皆さん、早く外へ!」


最後の人々が出口へ向かう頃、武蔵と村正宗の前に残っていた屍兵も一体だけになり、屍武者が刀を振り下ろした瞬間、村正宗が玄武の盾で受け止め、その脇から武蔵が一気に飛び込んだ。


「おらぁっ!」


太刀が屍武者の刀を押し退け、続けて振り抜かれた脇差が身体を斬り裂くと、最後の一体も地面へ崩れ落ちた。


「これで全部です!」


「だったら長居する必要はねえ! 俺たちも出るぞ!」


救出された人々が収容所から離れていく中、ワイチたちもその後を追って外へ向かった。


その頃、晴明、小次郎、空海は工場へ入っていた。


工場の奥では、何人もの屍が巨大な歯車へ身体を押しつけるようにして歩き続け、その力でゆっくりと回る歯車からいくつもの軸が伸び、黒い雫を作る装置や、魂を抜かれた者たちを処理する設備へ繋がっていた。


ギィ……ギィ……。


重い歯車が回るたびに軸が軋み、その脇では黒い液体が管を伝って小瓶へ流れ落ちていた。


晴明たちが足を踏み入れると、歯車を押していた屍たちとは別に、奥から数体の屍兵が刀を抜いて迫ってきた。


「やはり残っていましたね。」


屍武者が小次郎へ斬りかかると、小次郎は振り下ろされた刀を受け流し、その勢いのまま脇を抜けながら胴を斬り裂いた。


屍武者が床へ倒れるより先に別の二体が左右から迫り、晴明が式紙を取り出した。


「天狗召喚!」


式紙から天狗が現れ、晴明が一体を指し示すと、天狗の周囲で風が渦を巻き、そのまま鋭い風の刃となって屍兵へ襲いかかり、身体を斬り裂きながら後方へ吹き飛ばした。


残る一体がその風を抜けて小次郎へ迫り、刀を振り上げた瞬間、小次郎の姿が掻き消えた。


「瞬燕流――飛燕!」


一瞬で懐へ潜り込んだ小次郎の刀が屍兵の身体を斬り抜け、背後へ駆け抜けると同時に屍兵が床へ崩れ落ちた。


「では、始めましょう。」


「こんな場所は二度と使えんようにせねばな。」


小次郎が黒い雫を作る装置へ駆け寄り、そのまま刀を振り下ろすと、金属板が大きく裂け、内部を通っていた管が断ち切られ、黒い液体が床へ流れ落ちた。


「あちらの設備も破壊してください!」


天狗の周囲に再び風が巻き起こり、放たれた風の刃が隣の設備へ殺到すると、何本もの管が千切れて跳ね上がり、歯車から伸びていた軸が断ち切られた。


「まだ奥にもあります!」


小次郎はそのまま次の装置へ走り、朱雀の力を宿した刀身が炎に包まれると、燃え上がる刀を設備へ振り下ろした。


刃が金属板を斬り裂き、その切れ目から炎が内部へ入り込んでいった。


「炎で燃やしなさい!」


天狗が火術を放つと、炎が別の設備へ叩きつけられ、管や内部の部品へ燃え広がった。


「ワシも手伝いましょう!」


空海も加わり、三人が工場の奥へ進みながら設備を次々と破壊していくと、巨大な歯車から各装置へ繋がっていた軸が次々と断ち切られ、歯車を押し続けていた屍たちが歩いても、その力はどこにも伝わらなくなった。


最後まで残っていた黒い雫の製造設備へ小次郎が駆け込み、朱雀の炎をまとった刀を振り下ろした。


ガギィィンッ!


装置を支えていた金属板が大きく裂け、繋がっていた管がまとめて断ち切られると、小瓶へ落ちていた黒い液体も途絶えた。


「よし、これでもう使えないでしょう。」


「ここで作られていた屍兵も、黒い雫も、これ以上増やすことはできませんね。」


「ならば急いで阿国殿たちと合流しましょう。あちらは数十体を引きつけておりますからな。」


三人が出口へ向かおうとしたとき、空海の目に、破壊された装置の陰に残っていた一枚の札が入った。


「おや? これは……」


装置の一部に貼りついた札には、空海が見たことのない文字がいくつも書き込まれていた。


「空海さん、どうしました?」


「妙な札が貼られておりますな。何に使うものかは分かりませんが、少し気になります。」


「調べるのは後にして、今は阿国さんたちとの合流を急ぎましょう。」


「そうですな。では、これはワシが預かっておきましょう。」


空海が札を剥がして持ち出し、三人は破壊した工場を後にした。


その頃、阿国たちは屍軍団を引きつけたまま、枯れ木の間を走り続けていた。


「もうかなり離れたわね♪」


「まだ全部ついてきてるよ!」


「このくらい離せば、もう大丈夫かな。」


背後から聞こえていた足音は遠く、三人と屍軍団の間には十分な距離が開いていたが、その軍団の中から派手な衣装をまとった屍歌舞伎者が前へ出た。


「ニガァァスンジャャャネェェェゾォォォ!」


屍歌舞伎者が笛を吹くと、軍団が地面を蹴る無数の足音が一気に速まり、鎧を鳴らしながら走る屍兵たちがみるみる距離を縮めてきた。


「えっ!? 急に速くなった!」


「ちょっと、何よあれ! どんどん近づいてくるじゃない!」


「阿国さん、あの派手な奴が阿国さんみたいなことして、速くしてるんだよ!」


「私と似たようなことするじゃない♪ って、感心してる場合じゃないわね!」


その直後、軍団の中から一つの黒い影が飛び出し、屍忍者が他の屍兵を一気に追い抜いて阿国たちとの距離を詰めると、走りながら吹き矢を構えた。


シュッ――!


一本の吹き矢が三人の横を抜け、前方の地面へ突き刺さった。


「危ない! 次も来るよ!」


続けて二本、三本と飛んできた吹き矢を避けるため、三人が左右へ進路をずらすたびに背後の足音が大きくなり、屍忍者はさらに距離を詰めながら吹き矢をしまうと、今度は手裏剣を投げ放った。


数枚の手裏剣が闇の中を回転しながら飛び、きゅうすけの頬をかすめた一枚が前方の地面へ突き刺さり、さらに別の刃が足元へ次々と落ちた。


「こんなの聞いてないよ!」


「私だって知らないわよ♪」


阿国たちは飛び交う手裏剣をかわしながら走り続けたが、そのたびに進路を変えさせられ、すぐ後ろでは鎧と武器のぶつかる音が激しさを増していった。


「まずいよ! もうすぐ追いつかれる!」


「とにかく走って! ここまで連れてきたんだから、今さら収容所へ戻すわけにはいかないわよ♪」


屍忍者が再び手裏剣を放ち、三人が散ってかわしたところへ、屍歌舞伎者の支援を受けた屍武者、屍盾武者、屍陰陽師、屍薬師を含む軍団が地面を鳴らしながら迫ってきた。


「阿国さん!」


前方の枯れ木の間から晴明、小次郎、空海が駆け出してきた。


「小次郎様! 晴明様、空海様も♪」


三人が阿国たちと合流すると、小次郎はそのまま追いついてきた屍軍団へ向き直って刀を構え、晴明も式紙を取り出した。


「ずいぶん大勢連れてきましたね。」


「好きで連れてきたんじゃないわよ♪ あの歌舞伎者がみんなを速くするし、忍者は手裏剣と吹き矢を飛ばしてくるし、もう大変だったんだから!」


「話は後です。来ますよ!」


屍歌舞伎者の笛が鳴り響き、速度を上げた屍武者たちが一気に押し寄せる中、晴明が式紙を放った。


「天狗召喚!」


式紙から現れた天狗が風を巻き起こし、先頭を走る屍武者たちへ叩きつけると、数体が後ろから迫る仲間を巻き込みながら押し戻された。


その隙に空海が前へ出た。


「まずはワシが止めますぞ!」


淡い光が地面から立ち上がり、六人の前へ広がると、押し寄せてきた屍武者が刀を叩きつけ、続いて屍盾武者が盾ごとぶつかったが、結界は激しく揺れながらも軍団を押し止めた。


「これなら少しは時間を――」


「空海様、忍者が!」


阿国の声が飛ぶと同時に、屍兵たちの頭上を一つの影が飛び越え、屍忍者が結界の前へ着地すると、握っていた小刀がオレンジ色の光を帯びた。


「なんです、あの小刀は?」


小次郎が刀を構え直した瞬間、屍忍者はオレンジ色に輝く小刀を結界へ振り下ろした。


バキィィンッ!


刃が触れた場所から亀裂が走り、そのまま光の壁を駆け抜けると、結界が一気に砕け散った。


「ワシの結界を斬りましたか!」


砕けた光の向こうから屍武者たちが雪崩れ込み、小次郎が振り下ろされた刀を受け止める横で、屍盾武者が盾を構えながら押し寄せ、さらに後方では屍陰陽師が印を結び始めた。


その間を屍忍者が駆け抜けると、姿がゆらりと揺らぎ、一つだった身体が二つ、三つへ分かれた。


「増えたよ!」


「どれが本物なのよ♪」


三体の屍忍者が左右へ散り、そのまま一斉に小次郎たちへ襲いかかった。


屍忍者の三つの影が一斉に地面を蹴り、一体が正面から小次郎へ小刀を振るうと、小次郎は迫る刃を刀で受け流し、そのまま斬り返した。


刃が胴を抜けた瞬間、屍忍者の身体が白い煙を噴いて消え、その煙を突き破るように二体目が晴明へ手裏剣を投げ放った。


晴明が身をかわすと、背後にいた屍武者がその隙間へ飛び込み、振り上げた刀を一気に振り下ろしたが、小次郎が横から滑り込んで刃を弾き、そのまま斬り返そうとしたところへ屍盾武者の盾が突っ込んできた。


「くっ、邪魔された!」


小次郎が押し戻される横を三体目の屍忍者が駆け抜け、そのまま空海へ小刀を振り下ろした。


空海が刃をかわした瞬間、屍忍者は後方へ跳び、先ほど斬られた二体とともに三つの姿が煙を噴いて消えた。


「三体とも分身でしたか!」


シュッ――!


その直後、離れた場所から飛んできた一本の吹き矢が空海の頬をかすめ、背後の地面へ突き刺さった。


「本物はあそこだよ!」


しん吉が示した先では、屍忍者がすでに次の吹き矢を構えていた。


「もうっ、本当にいやらしい奴ね♪」


屍忍者を追う間もなく、屍歌舞伎者の支援を受けた屍武者たちが一気に押し寄せ、一体が小次郎へ刀を振り下ろした。


小次郎が受け流して胴へ刃を返したところへ屍盾武者が割り込み、甲高い音を響かせて盾で斬撃を止めると、その横から別の屍武者が斬り込み、小次郎は刀を返してその一撃を受け止めた。


「この盾をどうにかしないと、前へ出られませんね。」


晴明が印を結んだ。


「土術・岩砕波!」


屍盾武者の足元から岩が激しく突き上がり、その身体が盾ごと浮き上がると、小次郎は開いた脇へ一気に飛び込んだ。


「瞬燕流――神風牙!」


一直線に走った突きが盾の横を抜けて胸を貫き、屍盾武者が地面へ倒れた。


しかし、その傷へ後方から黒い光が流れ込み、貫かれた胸が塞がり始めた。


「あの薬師、邪魔だな!」


「だったら、あいつを先に落としますか!」


きゅうすけが屍薬師へ向かって駆け出した途端、屍陰陽師が印を結んだ。


「カァゲェヌゥイィ! ウゥゥゴォォクゥゥナァァァ……」


「くそっ、またこれかよ!」


きゅうすけの身体が途中で固まり、その正面から屍武者が刀を振り上げて迫った。


しん吉が横から飛び込み、振り下ろされた刀を癒爪で弾いたが、直後に屍盾武者の盾が脇から叩きつけられ、その身体が押し戻されたところへ、屍忍者の手から数枚の手裏剣が飛んできた。


「右から手裏剣が来るわよ♪」


しん吉が身を沈めると、手裏剣が頭上を唸りながら通り過ぎた。


「もうっ、前も後ろも邪魔ばっかりだよ!」


阿国が琵琶を鳴らすと、低く響く音色が屍軍団を包み込み、勢いよく押し寄せていた屍武者たちの足取りが次第に鈍っていった。


「そんなに急がなくてもいいじゃない、少しゆっくりしていきなさいな♪」


屍兵たちの勢いが落ちた隙に、晴明が印を結んだ。


「雷術・轟雷閃!」


轟音とともに雷が屍武者を貫いて地面へ叩きつけ、その横を小次郎が駆け抜けると、動きの鈍った屍盾武者の側面へ回り込み、盾の外へ出た胴を一気に斬り裂いた。


屍盾武者が倒れると、小次郎はそのまま屍薬師へ駆け出した。


「今度こそ、回復はさせません!」


その進路へ三体の屍忍者が飛び込み、正面と左右から同時に小刀を振るった。


小次郎は正面から迫った一体を斬り抜け、身体が煙へ変わる中で刀を返して右から飛び込んできた二体目も斬り裂いたが、そこでも刃が捉えた身体は煙となって弾け、その向こうから三体目の小刀が迫った。


小次郎は身体を捻りながら刀を振るって三体目を斬り払ったものの、その姿まで煙となって消えた直後、背後から吹き矢が飛んできた。


シュッ――!


小次郎が刀で弾き落とすと、離れた場所に本物の屍忍者がいた。


「いやらしい奴だな……!」


そのわずかな間にも屍薬師から伸びた黒い光が倒れていた屍兵へ流れ込み、斬り裂かれた傷が塞がっていった。


「せっかく倒したのに、また起きてくるよ!」


さらに屍歌舞伎者の支援が強まり、阿国の琵琶によって鈍っていた屍兵たちの足が再び速くなった。


「もうっ、しつこいわね♪」


屍盾武者が前へ押し出し、その陰から屍武者たちが斬り込み、後方では屍陰陽師が再び印を結ぼうとする中、屍忍者の手裏剣が隙間を縫って飛び交った。


「あの忍者のせいで、薬師へ近づくことすらできません!」


その声をかき消すように、屍軍団の後方から激しい斬撃音が響き、一体の屍武者が前方へ吹き飛ばされて地面を転がると、開いた場所から武蔵が二刀を振るいながら軍団へ斬り込み、その横では村正宗が玄武の盾を屍武者へ叩きつけて押し飛ばした。


「待たせたな! ずいぶん面倒くせえ奴らと遊んでんじゃねえか!」


その後ろからワイチ、ナリア、エレナも駆けつけた。


「収容所の人たちは全員逃がした!」


「これで全員揃ったわね♪ だったら一気に片づけるわよ!」


前方の晴明たちと後方から斬り込んできた武蔵たちに挟まれた屍軍団が二手に割れ、屍盾武者が武蔵たちへ盾を向けると、その後ろから二体の屍武者が刀を構えて迫った。


「前の盾が攻撃を止めて、後ろの薬師が傷を治す! 陰陽師は影縫、歌舞伎者は全員を速くしてるわよ♪」


「忍者もいるよ! 分身して、どこから手裏剣が飛んでくるか分からないんだ!」


「上等じゃねえか! 片っ端からぶっ倒してやる!」


武蔵が屍盾武者へ踏み込み、太刀を盾へ叩きつけると、重い衝撃音とともに屍盾武者の身体が後方へ押され、そこへ脇差を続けざまに打ち込んだ。


二撃目を受けた盾が大きく傾いたところへ別の屍武者が横から刀を振り下ろしたが、村正宗が玄武の盾を差し込み、刃を正面から受け止めた。


「武蔵! そいつを先にやれ!」


武蔵の二刀が開いた盾の内側へ入り込み、屍盾武者の胴を続けざまに斬り裂いた。


屍盾武者が倒れた直後、後方の屍薬師から黒い光が伸びた。


「また治されるぞ!」


ワイチの声が飛ぶと同時に晴明が印を結んだ。


「風術・烈風刃!」


鋭い風の刃が屍兵たちの隙間を抜けて屍薬師へ直撃し、伸びていた黒い光が途切れた。


「今です、小次郎!」


「瞬燕流――飛燕!」


小次郎の姿が掻き消れ、次の瞬間には屍薬師の懐へ入り込んでおり、振り抜かれた刀が胴を斬り抜けると、その身体が地面へ崩れ落ちた。


屍陰陽師がすぐさま小次郎へ向けて印を結ぼうとしたが、横から癒炎をまとったきゅうすけが飛び込み、振るった爪がその腕を弾き飛ばした。


「もう好き勝手に止めさせるかよ!」


体勢を崩した屍陰陽師へ小次郎の刀が走り、その胴を斬り裂いた。


屍歌舞伎者が支援を続けようとしたところへ、阿国の琵琶が激しく鳴り響いた。


「人の真似ばっかりしてないで、少し休んでなさい♪」


屍歌舞伎者の動きが鈍ったところへ天狗の風術が襲いかかり、その身体を巻き上げて地面へ叩きつけた。


「そこだぁっ!」


武蔵の二刀が続けざまに屍歌舞伎者を捉え、その身体が斬り伏せられると、屍兵たちを速めていた力も消えた。


小次郎が屍武者の刀を受け流しながら懐へ入り、その胴を斬り抜ける一方、武蔵も別の屍武者が振り下ろした刀を太刀で弾き、開いた胸元へ脇差を叩き込んだ。


別の屍武者が村正宗へ斬りかかると、玄武の盾がその刃を受け止め、押し返されて身体を開いたところへきゅうすけが癒炎をまとって飛び込み、脇腹へ爪を叩き込んだ。


その向こうでは天狗の風術を受けた二体の屍武者がまとめて地面を転がり、起き上がろうとした一体へ小次郎が斬り込み、もう一体には武蔵の二刀が襲いかかった。


屍薬師を失ったことで傷を塞ぐ黒い光はもう飛んでこず、一体ずつ数を減らした屍兵の中で最後まで残った屍武者も、振り下ろした刀を村正宗の玄武の盾に止められ、押し戻されたところへ武蔵の太刀が胴へ食い込み、反対側から小次郎の刀が斬り抜けると地面へ崩れ落ちた。


残った屍忍者の身体が揺らぎ、一体だった姿が三体へ分かれ、さらに離れた場所へ三つの影が現れると、六体が一斉に散開してワイチたちを取り囲んだ。


「また増えたよ! どれが本物なんだよ!」


「全部斬れば、そのうち当たりが出るだろ!」


四方から手裏剣が飛び交い、武蔵と小次郎が刀で次々と弾き、ワイチたちへ向かった刃を村正宗が玄武の盾で受け止める中、その間を縫って二体の屍忍者が小刀を手に飛び込んできた。


武蔵が迫った一体を斬り裂くと煙が弾け、小次郎も振り下ろされた小刀を受け流して胴を斬ったが、こちらも煙となって消えた。


残る四体が一斉に別方向へ走り出したところで晴明が印を結んだ。


「風術・烈風刃!」


四方へ広がった風の刃が逃げる影をまとめて捉え、三体が次々と煙へ変わる中、一体だけが風に巻かれて地面を転がった。


「あいつだ!」


本物の屍忍者が跳ね起き、再び身体を揺らがせようとしたところへ右から武蔵、左から小次郎が迫った。


屍忍者は分身を作る前に二人の間から前方へ飛び出したが、着地しようとした先へ村正宗が玄武の盾を突き出し、その身体を正面から弾き飛ばした。


宙を舞った屍忍者は地面へ転がりながら小刀を構え直し、起き上がったところへ小次郎が一気に間合いを詰めた。


「瞬燕流――飛燕!」


小次郎の刀を屍忍者が小刀で受け止めた瞬間、横から武蔵の太刀が襲いかかり、小刀を弾き飛ばすと、返した脇差が胴へ食い込んだ。


屍忍者がよろめきながら手裏剣へ手を伸ばしたところへ、きゅうすけが癒炎をまとって飛び込み、その腕へ爪を叩き込んだ。


手裏剣が地面へ散らばり、屍忍者が後方へよろめいた。


「散々邪魔してくれやがったな!」


武蔵が正面から踏み込み、屍忍者が残った小刀を振り上げるより早く太刀で胴を斬り抜け、その身体が傾いたところへ小次郎の刀が反対側から走った。


二本の刃を受けた屍忍者は地面へ崩れ落ち、もう分身することもなく、そのまま動かなくなった。


「終わった……今度こそ全部倒したよ!」


「まったく、とんでもなく面倒な連中だったわね♪」


「一体ずつならともかく、これだけ連携されると厄介ですね。」


「しかも結界まで斬り破られましたからな。次に同じ忍者が出てきた時は気をつけねばなりませんぞ。」


周囲から屍兵たちの声が消え、収容所へ戻ろうとする者も残っていなかった。


阿国たちが引きつけた屍軍団はすべて倒れ、収容所から救い出された黄泉の住人たちは、その間に遠くまで逃れていた。

【次回予告】


晴明です。


収容所に囚われていた方々を救い出し、黒い雫を作っていた工場も破壊することができました。


しかし、これほどの騒ぎとなれば、いつまでも気づかれずに済むとは思えません。


我々の知らぬところで、何かが動き始めるかもしれませんね。


次回、第95話「怒り心頭、伏雷の命令」


どうやら、ここから先はさらに警戒する必要がありそうです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。