耐えろ正宗!勝機はお前にかかってる!
赤狐の里の鍛冶場に響いていた槌の音が止まり、村正宗が完成した玄武の盾を持ち上げた。
中央が大きく膨らんだ盾の裏には、持ち手を支えるバネとクッションが組み込まれ、その隣には内側へ無数のバネを仕込んだ鎧が置かれていた。
「待たせたな。これで完成だ」
村正宗は鎧を身につけると、巡喝油を表面へ塗り広げ、玄武の盾を構えた。
「作ったはいいが、黒雷の一撃を受ける前に試しておきてえ。晴明、酒呑童子を出してくれ」
晴明が札を放つと、立ち昇った煙の中から酒呑童子の巨体が姿を現した。
「こいつがいりゃ心強えな!」
武蔵が酒呑童子を見上げる横で、晴明の額には早くも汗が滲んでいた。
「さすがにこれほど強い式神となると、霊力をかなり持っていかれますね。長く出していると、私の方が先に参ってしまいそうです」
「なら、さっさと試すぞ。まずは盾だ」
村正宗が玄武の盾を正面へ構えると、酒呑童子が巨大な拳を握り締めた。
拳が唸りを上げて振り抜かれる。
ドゴォンッ!
盾の中央へ拳が叩き込まれ、膨らんだ表面から衝撃が左右へ流れた。持ち手のバネが深く沈み、村正宗の足元がわずかに後ろへ滑った。
「おおっ、酒呑童子の一撃を受けやがった!」
村正宗は盾を下ろし、握っていた手を開いてから再び握った。
「腕に来る衝撃が全然違う。これなら前よりずっと楽に受けられる」
盾を脇へ置き、今度は鎧の胸元へ巡喝油を塗り足した。
「次はこいつだ。殴ってくれ」
酒呑童子が拳を振り抜くと、村正宗は直前で半身になった。
拳が鎧の表面を捉えた瞬間、巡喝油の上を滑って脇へ逸れ、それでも残った衝撃が身体へ伝わると、内側に仕込まれたバネが一斉に沈んだ。
「ぐっ……!」
村正宗の足が地面を擦りながら後ろへ流れたものの、倒れることなく踏みとどまった。
「まともに食らえば効くが、滑らせた分とバネでかなり殺せてる。これならいけそうだ」
晴明が札を戻すと、酒呑童子の巨体が煙の中へ消えていった。
「よし、行くか」
ワイチたちは赤狐の里を発ち、黄泉坂の社から転移陣を通って根の国へ戻り、第一門へ続く漆黒の大地を進んでいた。
瘴気を含んだ風が枯れ木を揺らし、乾いた枝が擦れ合う音だけが暗闇の中に響く。
やがて前方の闇に、巨大な第一門の輪郭が浮かび上がり、以前来た時より、禍々しさが増したように見えた。
足を進めるにつれて、前回の戦いで金棒に抉られた地面や砕けた岩が目に入り、村正宗は玄武の盾を握り直した。
「これでどこまで耐えられるか……あとはやってみるしかねえな」
第一門へ近づくと、瘴気の向こうから巨大な影が浮かび上がり、その周囲には屍盾武者、屍薬師、屍武者たちが並んでいた。
「ガハハハハハ!」
腹の底に響く黒雷の笑い声が闇を震わせた。
「やっと来やがったか!」
黒雷は肩に担いでいた巨大な金棒を振り下ろし、地面へ叩きつけた。
ドゴォンッ!
土が弾け、足元から伝わった振動がワイチたちの身体を揺らした。
「今度は逃げるなよ、俺をもっと楽しませろよ!」
「さぁ始めようか! 恐怖と絶望が交わる戦いを! この根の国じゃ、お前たちの叫び声を聞きたがってる奴らが今か今かと待ってるんだ!」
黒雷は金棒を振り上げた!
ピロー♪
阿国の笛から力強い音色が広がり、ワイチたちの身体を淡い光が包んだ。
「絶界!」
空海の結界が一行を覆い、きゅうすけとしん吉が村正宗のそばへ走ると、ナリアの魔法から生まれた光が村正宗の身体へ染み込んでいった。
晴明が五枚の札を放ち、酒呑童子と天狗、魔天狼3頭が戦場へ姿を現した。
「行くぜ、小次郎! まずはあの盾野郎からだ!」
「先に参ります!」
武蔵と小次郎が左右へ駆け、酒呑童子も屍盾武者へ突進した。
天狗はその頭上を飛び越え、黒雷へ向かう。
ワイチは戦いへ飛び込まず、黒雷の全身へ流れる気を追った。
前回、武蔵たちの斬撃をまともに受けても傷一つ負わなかった身体のどこから、あの異常な硬さを生み出す気が巡っているのか。
その間にも黒雷が村正宗へ迫り、巨大な金棒を振り抜いた。
「来い!」
ガァンッ!
金棒が鎧を捉えた瞬間、巡喝油の塗られた表面を滑り、そのまま脇へ流れて地面を抉った。
「な、なにっ!?」
「へっ、前と同じだと思うなよ」
黒雷の顔が歪み、金棒を握る手に力が入った。
「おもしれぇ、お前らおもしれぇぞ、ワクワクしてきたぞ!」
黒雷は金棒を振り上げると、そのまま自らの角へ叩きつけた。
ガァァァァァァァァァァァァンッ!!
角が音叉のように激しく震え、低く重い音が戦場を貫いた。
「なんだ、この音は!?」
次の瞬間、凄まじい衝撃波が黒雷を中心に一気に広がった。
ピキピキ……バキィィンッ!
絶界に無数の亀裂が走り、そのまま砕け散った。
武蔵と小次郎が耳を塞ぎ、阿国の笛が途切れ、ワイチも両耳を押さえながら膝をついた。
酒呑童子と天狗、魔天狼の動きまで止まり、屍盾武者、屍薬師、屍武者たちもその場で身体を硬直させた。
黒雷だけが金棒を担ぎ直した。
「ガハハハハ! いい音色だろ?気持ちいいだろ?さぁ、ドンドンいくぜ!」
耳の奥で甲高い音が鳴り続け、ワイチは地面に手をついたまま顔を上げた。
視界が小刻みに揺れ、黒雷の巨体が二重に滲む。武蔵は片膝をついたまま刀を地面へ突き立て、小次郎も耳を押さえながら身体を起こそうとしていた。
「ガハハハハ! どうしたどうした! もう終わりか? そんなんじゃ俺は全然楽しめねえぞ!」
黒雷の声が耳へ突き刺さるたび、頭の奥がズキンと痛んだ。
その横では屍武者が先に動き始め、刀を振り上げながら武蔵の背後へ迫っていた。
「武蔵さん、後ろです!」
ガキィンッ!
耳鳴りの残る身体に衝撃が走り、小次郎の腕が沈んだ。
「この程度で……!」
小次郎が刀を押し返すと、武蔵ももう一体迫っていた屍武者の斬撃を二刀で弾いた。
「ちっ、まだ耳がキンキンしやがる!」
阿国が笛を構え直した。
ピロー♪
一度途切れた音色が再び戦場へ流れ、淡い光がワイチたちの身体を包んでいく。
「今度はワシも簡単には破らせんぞ。絶界!」
空海が両手を広げると、新たな光の壁が立ち上がり、ワイチたちを包み込んだ。
「仕切り直しだ! 行くぜ、小次郎!」
「今度こそ、あの盾を崩します!」
武蔵と小次郎が屍盾武者へ迫った。
巨大な盾が前へ突き出され、武蔵の二刀を真正面から受け止める。その横から小次郎の刀が盾の縁を斬りつけ、鋭い金属音が続けざまに響いた。
ガキィンッ! ギィンッ!
屍盾武者が盾を横へ振って二人を押し返したところへ、酒呑童子の巨大な拳が叩き込まれた。
ドゴォォンッ!
盾が大きくへこみ、中央から亀裂が走った。屍盾武者の両足が土を削りながら後ろへ押され、そのまま屍薬師の目前まで押し込まれた。
「やっぱり、とんでもねえ力だな!」
後方の屍薬師が杖を掲げると、先端から黒い光が伸びて屍盾武者の身体を包み込んだ。
酒呑童子の拳を盾越しに受けた両腕の皮膚が裂け、黒ずんだ肉が覗いていたが、傷口の奥から細い肉の筋が何本も伸び始める。筋は互いに絡み合いながら裂けた部分を引き寄せ、開いていた傷口がみるみる狭まり、剥き出しになっていた黒い肉も皮膚の下へ沈んでいった。
「もう傷が塞がりやがったか!」
武蔵の二刀が再び盾へ叩き込まれ、小次郎も反対側から斬撃を重ねた。
ガキィンッ! ガァンッ!
屍盾武者は二人の攻撃を盾で受けながら前へ押し返そうとするが、その正面から酒呑童子が再び踏み込んだ。
ドゴォォンッ!
拳が同じ場所へめり込み、先ほど走った亀裂がさらに上下へ伸びた。衝撃に押された盾が屍盾武者自身の胸へぶつかり、巨体が大きく仰け反る。
屍薬師の杖から再び黒い光が伸び、胸元から黒い血を流していた屍盾武者の身体を光が包むと、潰れた肉が内側から盛り上がり、歪んだ胸元が少しずつ押し戻されていった。
裂けた皮膚も両側から引き寄せられ、流れていた黒い血が止まった。
「回復は早え……だが、こっちは三人だ! 休ませるな!」
武蔵の二刀が盾の中央へ叩き込まれ、小次郎の刀が亀裂の走った縁を斬りつけた直後、酒呑童子の拳が再び盾を揺らした。
ドゴォンッ!
亀裂がさらに広がり、盾の表面から小さな破片が弾け飛び、屍盾武者が盾を振り上げて酒呑童子へ殴りかかった。
酒呑童子は巨大な腕で受け止め、そのまま力任せに押し返し、両者の足元で地面が軋む中、屍盾武者の足がじりじりと後ろへ滑っていく。
「おいおい、力比べでも負けてんじゃねえか!」
「このまま続ければ崩せます!」
三頭の魔天狼は屍武者たちへ襲いかかり、振り下ろされた刀を一頭が牙で受け止めて横へ引くと、体勢を崩した屍武者の脇腹へ二頭目が飛び込み、そこへ三頭目が正面から巨体をぶつけて地面へ転がした。
別の屍武者が刀を振り下ろすと、魔天狼たちは一斉に散り、左右から再び飛びかかっていく。
その上空では天狗が黒雷へ向けて扇を振り抜いた。
ゴォォォッ!
渦を巻いた風が黒雷の巨体へ襲いかかり、胸元で弾けた。
「おおっ! ガハハハハ! こいつは効くじゃねえか! いいぞ天狗! もっと撃ってこい!」
天狗が再び扇を振ると、幾重もの風の刃が黒雷へ飛んだ。
シュバッ! シュバッ! シュバッ!
黒雷は避けることなく胸を張り、風の刃を真正面から受け止めた。
「ガハハハハ! そうだ、それだ! もっと俺を楽しませろ!」
胸や肩に細い傷が刻まれ、黒い血が滲んでいく。
「あははははは! 痒い痒い! もっとだ、もっと撃ってこい!」
ワイチは黒雷の身体を巡る気を追い続けた。
天狗の術が胸へ当たるたび、全身を覆う白い気が激しく揺れ、傷ついた場所へ集まって風の刃を阻むと、すぐに全身へ広がって厚い層を作る。その内側では黒い気が腹から胸を抜け、肩から腕へ流れ込んでいた。
「あれだけ術を食らっても、気で全身を守ってるのか……なら、この気の流れを止めれば」
「さぁ、今度はお前だ! せっかくそんなもん作ってきたんだ、それを俺がしっかり壊してやるよ!」
巨大な金棒が村正宗へ振り下ろされた。
「さぁ来い!」
ドゴォォンッ!
中央の膨らみへ金棒が激突し、衝撃が盾の左右へ走ると、裏側のバネが一気に縮み、持ち手のクッションが村正宗の腕へ食い込んだ。
「ぐぅっ!」
両足が土を抉り、村正宗の身体が後ろへ押されていく。
「ぐぅっ……やっぱり、とんでもねえ威力だな!」
「ガハハハハ! 俺はさ、耐える姿を見ると力が増すんだよ! 早く歪む顔が見たいからなー!」
酒呑童子が屍盾武者を押し込み、天狗が黒雷へ術を放ち、三頭の魔天狼が屍武者を翻弄する中、晴明の呼吸が次第に荒くなり、額から流れ落ちた汗が頬を伝った。
「さすがに……これだけ同時に動かすと、かなり霊力を持っていかれますね……」
黒雷の腹から白い気が全身へ広がる一方、黒い気は胸から肩を抜けて腕へ流れ込み、金棒が玄武の盾へ叩き込まれた。
ドゴォンッ!
白い気が黒雷の身体を厚く覆い、黒い気が集まった腕から放たれた一撃に、村正宗の両足が再び土を削った。
金棒が離れると、白と黒、二つの気が腹へ戻っていく。
「ここから全身へ流れてるのか……」
黒雷が金棒を高く振り上げ、また自らの角へ向かっていった。
「またあれをやる気だ!」
村正宗が玄武の盾を投げ放った。
ガァンッ!
回転しながら飛んだ盾が金棒へ激突し、その軌道を大きく弾いた。
「二度も同じもん食らうかよ!」
「ガハハハハ! そう来たか! 面白い、お前面白いな! 俺の技をそんな風に止めた奴はお前が初めてだ! そうでなくちゃ戦いはおもしろくねえ!」
黒雷はそのまま金棒を力任せに振り抜いた。
ガァンッ!
玄武の盾が押し退けられ、村正宗の身体が横へ流れた。
「さぁ歯を食いしばれよ!」
黒雷が身体ごと回転し、勢いを乗せた金棒を村正宗へ叩き込んだ。
ドゴッーーン!!
金棒が鎧を捉えた瞬間、巡喝油の上を滑って脇へ逸れ、それでも逃がしきれなかった衝撃が鎧の内側へ入り、無数のバネが一斉に縮んだ。
「ぐぅぅっ!」
村正宗の身体が大きく押し流され、片膝が地面についた。
「ガハハハハ! おいおい、もう降参か? 俺はやっと温まってきたんだぜ!」
黒雷の腹へ戻った白い気は再び全身へ広がり、黒い気は金棒を握る腕へ流れ込んでいく。
ワイチは二つの気が分かれていく、その中心を追った。
「……見つけた。腹、へその下だ」
その向こうでは、酒呑童子と屍盾武者がなおも真正面からぶつかり合い、屍盾武者が盾を押し出すたびに酒呑童子の拳が叩き込まれ、武蔵と小次郎の斬撃が左右から重なった。
ガキィンッ! ドゴォンッ!
盾の中央を走っていた亀裂が縁へ向かって伸び、へこんだ表面から細かな破片が次々と落ちていく。
屍薬師の黒い光が屍盾武者を包み、傷ついた腕や胸の奥から肉の筋が伸び、互いに絡み合いながら裂けた部分を塞いでいくが、その間にも酒呑童子の拳が盾を激しく揺らした。
「あと少しだ! 一気にぶっ壊すぞ!」
ワイチは杭管を握った。
「黒雷の気が集まっている場所を見つけました! 腹です!」
ワイチは杭管を手に黒雷へ駆け出した。
「ガハハハハ! 今度はお前か! そんな棒切れで何をするんだ?」
黒雷は避けようともせず迫ってくるワイチを待ち受け、ワイチはそのまま懐へ潜り込むと、へその下へ杭管を押し当てた。
「ん? なんかしたのか? ガハハハハ!」
そこへ、武蔵が一気に距離を詰め、
「晴明、合わせろ!」
「天魔剛衝斬!」
武蔵の二刀が霊杭の頭へ振り下ろされると同時に、酒呑童子の巨大な拳がその上へ叩き込まれた。
ドゴォォォォンッ!!
二つの力が重なった一撃に霊杭が黒雷の腹へ一気に打ち込まれ、巨体が大きく揺れた。
「ぐおぉぉぉぉっ!」
腹から全身へ広がっていた白い気が霊杭のところで途切れ、黒雷の身体を覆っていた厚い層が薄れていく。
「よし、気の流れが止まった!」
ゴォォォッ!
天狗の放った風が黒雷の胸で炸裂し、皮膚を裂いて黒い血を飛び散らせた。
「ガハハハハ!痛ぇでも、これが戦いの感触だぜ!やっと面白くなってきたぞ!」
小次郎の刀が黒雷の脇腹を斬り抜け、今まで弾かれていた刃が肉へ食い込んだ。
「刃が通ります!」
「ガハハハハ!そうだそうだ!俺をもっと痛ぶれ!この痛みを100倍に返してやるからな」
黒雷が金棒を大きく振り回しながら、正宗へ叩きつけた。
ドゴォォォンッ!!
金棒が村正宗の鎧を捉え、巡喝油の上を滑ったものの、逃がしきれなかった衝撃が身体を後方へ吹き飛ばした。
「ぐあっ!」
村正宗が地面へ叩きつけられ、きゅうすけとしん吉が駆け寄ると、ナリアの光がその身体へ染み込んでいく。
「ぐっ……なんだ、今の一撃……!」
ワイチの視界では、黒雷の腕へ流れ込む黒い気が先ほどまでより濃さを増していた。
肩から腕を伝う黒い気が膨れ上がり、金棒を握る腕を覆っていく。
「何故だ?黒い気が……さっきより増えてる?」
ドゴォォォォンッ!!
再び、黒雷の金棒をブンブンと振り回しながら、絶界へ叩きつけられた。
ピキッ……ピキピキッ!
光の壁に走った亀裂が左右へ伸び、空海の身体が後ろへ押された。
「ぬぅっ……!」
「攻撃力が異常には増している……!」
「ガハハハハ! どうした! さっきの威勢はどこいった?そろそろ本気の俺様をみせるかな!」
ドゴォォォンッ!!
再び金棒が絶界を揺らし、亀裂がさらに広がった。
「こいつは……そう何発も受けられんぞ!」
その向こうでは、武蔵と小次郎の斬撃が屍盾武者の巨大な盾へ重なっていた。
ガキィンッ! ギィンッ!
中央から伸びた亀裂が縁へ迫り、へこんだ表面から破片が次々と弾け飛んだ。
屍盾武者が盾を振り回して二人を押し返したところへ、酒呑童子の拳が叩き込まれた。
ドゴォォンッ!
亀裂が一気に広がり、盾の縁が大きく欠けた。
後方から屍薬師の黒い光が伸び、衝撃で裂けた屍盾武者の腕を包み込むと、傷口の奥から細い肉の筋が伸び始め、互いに絡まりながら裂けた皮膚を引き寄せていった。
「もうもたねえぞ!」
武蔵の二刀が盾へ食い込み、小次郎の斬撃が亀裂をさらに押し広げた。
ガキィンッ! ガァンッ!
盾の表面が崩れ、大小の破片が足元へ降り注ぎ、酒呑童子の巨大な拳が中央へ叩き込まれた。
ドゴォォォォンッ!!
バキィィィンッ!
巨大な盾が中央から砕け、割れた破片が四方へ弾け飛んだ。
「よっしゃあ! 盾をぶっ壊したぜ!」
その後方で晴明の呼吸が大きく乱れ、額から汗が流れ落ちた。
五枚の式紙のうち一枚が淡く明滅し、端から光の粒が零れ始める。
「これは……まずいですね」
次回予告
小次郎です!
黒雷の守りを崩し、屍盾武者の盾もついに破壊しました。
ですが、霊杭を打ち込んだことで黒雷の攻撃はさらに激しさを増し、晴明さんの霊力も限界へ近づいています。
このまま押し切るか、それとも黒雷の力が私たちを上回るか――勝負はここからです!
そして、この右腕に宿る鳳凰の力が、ついに……。
次回、第86話「炎燕、黒を断つ」。
ぜひ、お楽しみに!




