↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を救ったのは剣豪でもなく陰陽師でもなく薬師?だったんですよ!  作者: 氣愛注入


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/122

届け!滅魂打


「ざ、ざ、残念だったなぁ……」


柞雷は二体の屍武者を背後へ庇い、四本の刀を交差させた。


ギュイィィィン!!


二つの回転ノコギリが石畳を削り、砕けた石を跳ね上げながら左右へ開いた。


村正宗が玄武の盾を構えたところへ、一本目の刀が上から振り下ろされた。


ギィン!!


盾を傾けて刃を横へ滑らせた直後、二本目が右から叩き込まれ、続く三本目が盾の脇から腹を狙った。


透明な結界が切っ先を止め、白い亀裂を走らせた。


「村正宗殿、右から来ますぞ!」


空海の声と重なるように回転ノコギリが迫り、村正宗は玄武の盾を正面へ戻した。


ギャリリリリッ!!


回転する刃が盾へ食い込み、火花が横へ流れた。


柞雷は右の回転ノコギリで盾を押し込みながら、左の回転ノコギリを武蔵へ突き出した。


武蔵が太刀を打ちつけて刃の向きを変えると、石畳を抉った回転ノコギリが破片を巻き上げた。


「小次郎、右の腕を開かせろ!」


小次郎が柞雷の側面へ入り、


「瞬燕流 飛燕返し!」


最初の一閃で刀を持つ腕を外へ弾き、返した刃を隣の手首へ走らせた。


柞雷の右側が開いた瞬間、武蔵が二刀を重ねて踏み込んだ。


「天魔剛衝斬!」


太刀と脇差が腕の付け根へ叩き込まれ、巨体が左へ傾いた。


村正宗は回転ノコギリを盾で押し返し、そのまま柞雷の胸へ玄武の盾をぶつけた。


ドンッ!!


柞雷が後ろへよろめき、二体の屍武者から離れた。


「そのまま押さえておけ! 今度こそ打ち込む!」


村正宗は玄武の盾を石畳へ置き、背中の金槌を抜いて倒れた屍武者へ駆けた。


柞雷の四本の刀が村正宗を追ったが、武蔵と小次郎が左右から割って入り、二本ずつ受け止めた。


回転ノコギリが村正宗の背後へ向いたものの、空海の結界が立ち上がり、回転する刃を受け止めた。


ギュガガガガッ!!


結界へ白い亀裂が走る中、村正宗の金槌が屍武者の胸元へ振り下ろされた。


「食らえ、滅魂打!」


ドゴォォン!!


鎧が大きく潰れ、白い光が全身へ駆け抜けた。


屍武者の魂が身体から引き抜かれ、白い光の中で砕け散った。


兜の奥から黒い瘴気が噴き出し、砕けた骨と鎧が内側から崩れ始め、石畳には錆びた破片だけが残った。


「や、やめろぉ……!」


柞雷は黒い小瓶を取り出し、その場で握り潰した。


「く、黒の雫……!」


瓶から溢れた黒い靄が、屍武者の残骸へ流れ込んだ。


砕けた兜も、折れた骨も動かなかった。


黒い靄は残骸の上を漂い、白い光に触れた端から薄い煙となって消えていった。


「な、なぜだぁ……黒の雫が……」


村正宗は金槌を柞雷へ向けた。


「滅魂打で魂を断ったんだ。二度と戻らねぇぞ!」


残った屍武者が刀を振り上げ、村正宗へ踏み込んだ。


刀が振り下ろされる寸前、武蔵の太刀が横から刃を弾いた。


「次はこいつだ!」


武蔵が脇差を鎧の腰へ叩き込み、屍武者の身体を横へ崩した。


小次郎が背後へ抜け、肩口から斬撃を走らせると、胸当ての裂け目から黒い瘴気が噴き出した。


屍武者は刀を振り回して二人を退けようとしたが、晴明の鬼が正面から金棒を振り下ろした。


ドゴンッ!!


兜が潰れ、屍武者の両膝が石畳へ沈んだ。


摩天狼が刀を持つ腕へ噛みつき、地面へ引き下ろしたところへ、武蔵が二刀を重ねた。


「天魔剛衝斬!」


胸当てが大きく砕け、上半身が後ろへ折れた。


小次郎が正面から間合いを詰め、


「瞬燕流 神風牙!」


刀の切っ先が胸の割れ目を貫き、背中まで突き抜けた。


屍武者は残った腕を持ち上げようとしたが、鬼の金棒が肩へ落ち、身体が石畳へ叩きつけられた。


武蔵が首元へ太刀を振り抜き、兜ごと頭部を斬り飛ばした。


胴から瘴気が噴き上がり、屍武者の身体が崩れ落ちた。


その後ろで、屍薬師が杖を石畳へ突き立てた。


「オオオオオ……」


低い詠唱が門前を這い、倒れたばかりの屍武者を囲むように黒い線が広がった。


歪んだ文字が円を作り、鎧の隙間から漏れていた瘴気が中央へ引き戻されていく。


「屍武者を蘇生させるつもりです!」


晴明の鬼が屍薬師へ向かったが、柞雷の回転ノコギリが横からぶつかり、金棒ごと弾き飛ばした。


柞雷は続けて四本の刀を振るい、武蔵と小次郎を屍薬師から遠ざけた。


一太刀目を武蔵が太刀で受け、二太刀目を脇差で外へ流すと、三太刀目が小次郎の足元へ突き刺さり、四太刀目が退路を塞いだ。


二つの回転ノコギリが左右へ開き、屍薬師へ近づく道を覆った。


円陣の中央で砕けた骨が寄り集まり、斬り落とされた頭部が胴へ引き寄せられていった。


柞雷は玄武の盾を踏み越え、屍薬師の前へ出ようと右脚を踏み込んだ。


膝の歯車が大きく開いた。


「村正宗さん、右脚へ重みをかけさせて!」


村正宗が金槌を腰へ戻し、石畳の玄武の盾を拾い上げると、柞雷の左脇へ叩き込んだ。


巨体が右へ傾き、踏み込んだ右脚へさらに重みがかかった。


歯車が回り始めた瞬間、ワイチは霊杭を関節へ押し当てた。


杭管の先から伸びた針が歯車の奥へ刺さり、杭を固定した。


柞雷の刀がワイチへ振り下ろされたが、武蔵の太刀が横から弾いた。


ワイチは杭管の頭を金槌で叩いた。


カンッ!!


杭管が二つに割れて落ち、霊杭が右膝の奥へ打ち込まれた。


ギギギギギッ!!


回転した歯車が杭を噛み込み、右脚が前へ出たまま止まった。


「な、何をしたぁ……!」


柞雷が巨体を屍薬師の前へ戻そうとしても、右膝は軋むだけで曲がらなかった。


四本の刀が空を切り、回転ノコギリも屍薬師を守る位置まで届かなかった。


円陣の中央では、屍武者の胸へ骨が戻り始めていた。


「小次郎、薬師の詠唱を止めろ!」


小次郎が動かなくなった右脚の脇を抜けた。


柞雷が二本の刀を背後へ回したものの、傾いた巨体では刃が届かず、小次郎の髪を揺らして通り過ぎた。


屍薬師の詠唱が強まり、杖の先から黒い光が円陣へ落ちた。


「瞬燕流 神風牙!」


小次郎の刀が屍薬師の喉を貫いた。


「ガ……ア……」


詠唱が途切れ、黒い光が消えた。


円陣の文字が崩れ、組み上がりかけていた屍武者の骨が石畳へ散った。


屍薬師は喉を貫かれたまま杖を振り上げたが、小次郎が刀を引き抜き、胸元へ斬撃を走らせた。


骨と布が裂け、身体が後ろへ折れたところへ武蔵が踏み込んだ。


「今度こそ終わりだ!」


「天魔剛衝斬!」


太刀と脇差が杖ごと屍薬師の胸を砕き、黒い円陣の中央へ叩きつけた。


骨片が飛び散り、杖から漏れた瘴気も空海の後光に触れて消えていった。


柞雷は右膝を引きずりながら六本の腕を振り回した。


「ま、まだだぁ……!」


村正宗の玄武の盾が横から胸へぶつかり、巨体が右膝を軸に回った。


「屍武者も薬師も倒れた。あとはお前だけだ!」


晴明の二体の天狗が左右から術を放ち、刀を握る腕を外へ押し広げた。


鬼の金棒が一本の腕へ落ち、木と鉄の継ぎ目を砕いた。


腕が刀ごと石畳へ落ちると、小次郎が反対側へ回り込み、肩口へ刀を走らせた。


二本目の腕も途中から垂れ下がり、刃が地面へ擦れた。


柞雷は二つの回転ノコギリを左右へ突き出したが、村正宗の盾が右を受け止め、空海の結界が左を止めた。


「晴明殿、頭を焼き払ってくだされ!」


晴明が印を結んだ。


「豪火炎陣!」


炎の玉が柞雷の顔面へ激突し、木製の頭部を炎で包み込んだ。


ギギギギッ!!


炎に焼かれた頭部が崩れ、黒く焦げた木片が石畳へ散った。


頭を失っても胴の歯車は回り続け、残った二本の刀が武蔵へ振り下ろされた。


武蔵は太刀と脇差でそれぞれの刃を受け、そのまま外へ押し返した。


「人形ごとぶっ壊してやる!」


二刀を重ね、柞雷の胸へ叩き込んだ。


「天魔剛衝斬!」


木板と鉄板が大きくへこみ、腹に埋め込まれていた黒い結晶の表面へ亀裂が走った。


ギギ……ギギギギ……


からくり人形の動きが鈍り、残った腕が腹の前へ集まった。


「そこを守るってことは、あれが動力か!」


小次郎が右から踏み込み、結晶を覆った刀へ斬撃を重ねた。


鬼の金棒が上の腕を押し上げ、摩天狼が回転ノコギリの腕へ噛みついた。


村正宗の玄武の盾が胸へ叩き込まれ、柞雷の背中が空海の結界へぶつかった。


「小次郎、その結晶の表面を斬り開け!」


小次郎が盾の脇を抜けた。


「瞬燕流 飛燕!」


刀が黒い結晶の表面を斜めに斬り抜け、武蔵がつけた亀裂と交わった。


バキッ!!


結晶の外殻が浮き上がり、内側から黒い瘴気が噴き出した。


阿国の横笛が門前へ響き、澄んだ旋律が武蔵と小次郎の身体を駆け抜けた。


腕へ力が満ち、踏み込む足が速さを増した。


「二人とも、浮き上がった外殻を剥がしてください♪」


武蔵の太刀が上側の亀裂へ振り下ろされ、小次郎の刀が横から外殻の縁を斬り抜けた。


バキィン!!


黒い結晶の外殻が胴の内側から弾け、破片と瘴気が一斉に噴き出した。


からくり人形の歯車が激しく回ったあと、一つずつ音を失った。


残った刀が地面へ落ち、回転ノコギリも止まり、六本の脚から力が抜けた。


巨大な胴が空海の結界へ寄りかかり、そのまま石畳へ崩れ落ちた。


「終わったか……」


砕けた黒い外殻の奥で、何かが動いた。


「くくく……まだだ。まだ終わらんよ……」


黒い破片が内側から押し退けられ、小さな手が腹の外へ伸びた。


皺だらけの顔が暗い空洞の奥から現れ、小柄な老人が破片にまみれながら這い出してきた。


「人が入っていたのか!」


「こいつが柞雷……」


柞雷は懐から二丁の火縄銃を抜き、片方を武蔵へ向けた。


「これで勝ったつもりかぁ!」


バァン!!


銃声とともに白煙が噴き出し、弾丸が武蔵の顔へ迫った。


武蔵が太刀を振り上げたが、弾丸は刃の脇を抜け、頬を浅く裂いた。


柞雷は間を置かず、もう一丁を小次郎へ向けた。


「次こそは頭を撃ち抜いてやる!」


引き金へ指がかかった瞬間、小次郎の姿が白煙の前から消えた。


「瞬燕流 飛燕!」


柞雷の目の前へ現れた小次郎が刀を横へ走らせ、火縄銃の銃身を斬り飛ばした。


火薬が手元で爆ぜ、黒い煙が柞雷の指を包んだ。


「ぎゃあっ!」


焼けた手から火縄銃が落ちた。


「風雷も同じだ! あの犬どもも、私の傀儡にしてやったから価値があった! 神社で石になっているより、ずっと役に立っただろうが!」


武蔵の太刀が石畳を擦った。


「貴様が気軽に風雷の名を呼ぶんじゃねぇ」


「わ、私を誰だと思っている! 八雷の柞雷だぞ! 犬二匹のために、この私を――」


「あなたは風雷の受けた苦しみを、その身で思い知りなさい!」


鬼と天狗が柞雷の左右を塞ぎ、摩天狼が背後へ回った。


武蔵が右から踏み込み、小次郎が左から間合いを詰めた。


武蔵の太刀が右肩から胸を斬り、小次郎の刀が左脇から腹を斬り抜けた。


「ぎゃあああああっ!!」


柞雷の身体が二人の間で宙へ浮き、晴明が右手を前へ伸ばした。


「もう消えなさい! 百鬼夜行!」


鬼が金棒を振り抜き、柞雷の身体を石畳へ叩き落とした。


二体の天狗が左右から術を重ね、逃げようとした身体を風の渦へ押し戻すと、摩天狼の牙と爪が全身を切り裂いた。


柞雷の絶叫が連続する打撃音に呑み込まれ、黒い瘴気が傷口から噴き上がった。


「風雷の仇だ!」


きゅうすけの癒炎が黒い瘴気を包み込んだ。


赤い炎は柞雷の身体から溢れる穢れを燃やし、黒い瘴気が炎の中で灰へ変わっていくと、石畳に残っていた老人の身体も跡形なく消えた。


ワイチは天を仰ぎながら、


「風ちゃん、雷ちゃん、仇は取ったよ」


ゴゴゴゴゴゴ……


巨大な門が左右へ開き始めた。


奥から冷たい風が吹き込み、灯籠の明かりが届かない漆黒の大地で、枯れた木々の影が揺れた。


草木の消えた地面を灰が這い、遠くから骨の擦れる音が流れてきた。


「ここから先が根の国か、嫌な空気だな。」


武蔵の声が暗闇へ入り、枯れ木の奥から青白い火が揺れた。


ワイチが第二の門を越えると、乾いた土が足元から灰のように舞い上がった。


「黄泉坂より強い魔物が待ってる。みんな、離れずに進もう。」


小次郎、晴明、空海、阿国、ナリア、村正宗、しん吉、きゅうすけも門を越え、黄泉坂の灯籠が背後へ遠ざかっていった。


枯れ木の間をいくつもの影が横切り、青白い火が闇の奥へ消えていき、一行は第二の門を背にし、根の国の漆黒へ踏み込んでいった。


次回予告


空海じゃ!


ついに第二の門を越え、ワシらは根の国へ足を踏み入れた。


灯籠の明かりも届かぬ漆黒の世界、枯れ木ばかりが立ち並び、どこを見ても嫌な気配しかせんのう。


黄泉坂とはまるで違う、この先にはどんな魔物が待ち受けておるのか。


次回、第八十話「根の国への一歩」。


ぜひ、お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。