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世界を救ったのは剣豪でもなく陰陽師でもなく薬師?だったんですよ!  作者: 氣愛注入


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からくり人形をぶっとばせ!



第一の門の前で、全員が風雷の墓へ手を合わせた。


灯籠の火が揺れ、供えられた花を黄泉坂の風が撫でていく中、武蔵が墓へ向けて声を届けた。


「風雷、今度こそ仇を討つ。ここから先は俺たちに任せろ」


小次郎、晴明、空海、阿国、ナリア、村正宗、しん吉、きゅうすけも祈りを終え、ワイチが立ち上がり、


「さあ、行こう。風雷の仇を討ちに!」


全員が第一の門を離れ、灯籠の並ぶ坂を第二の門へ向かった。


坂を上り切ると、閉ざされた門の前で一本の蝋燭が細い炎を揺らしていた。


ボウッ!!


近づいた全員の前で炎が天井近くまで噴き上がり、渦を巻いた黒煙の奥からギギ……ギギギギ……と軋む音が響き始めた。


刀を握った腕が煙を突き破り、その左右からさらに三本の腕が押し広げるように現れると、両脇から伸びた回転ノコギリが唸りを上げ、黒煙を吹き散らしながら巨大なからくり人形が第二の門の前へ踏み出した。


六本の腕がゆっくりと広がり、歯車の音を鳴らしながら首が傾き、


「や、や、やっと……き、き、来たかぁ……」


四本の刀が持ち上がり、二つの回転ノコギリが左右へ開いた。


「ま、待って……い、いたぞぉ……」


柞雷の後ろには、二体の屍武者と一体の屍薬師がすでに並んでいた。


「おいおい、屍武者が一体増えてるぞ」


ワイチの視線を追い、武蔵たちも二体の鎧武者へ目を向けた。


「ま、ま、前と……お、おなじでは……つ、つまらんからなぁ……」


阿国が横笛を構え、最初の音を響かせた。


澄んだ旋律が門の前を駆け抜け、武蔵と小次郎の足を包み、村正宗の盾から晴明たちの身体へ流れていく。


旋律が速さを増すたびに、刀を握る腕へ力が満ち、踏み出す足が軽くなっていった。


「最初から全開でいきますよ〜♪」


最後の高い音が響くと、空海が錫杖を石畳へ打ちつけた。


「後光!」


金色の光が足元から広がり、全員の身体を包み込む。門の前に漂っていた瘴気が光に押され、柞雷の足元まで退いていった。


晴明が五枚の式紙を取り出し、金色の光の中へ放ち、


「参りなさい」


宙を舞った式紙が燃え上がり、二体の鬼が金棒を手に降り立つと、その頭上を二体の天狗が飛び越え、摩天狼が地面へ爪を立てた。


「屍武者を分断してください」


二体の鬼が左右へ分かれ、それぞれの屍武者へ向かって駆け出した。


右の鬼が振り下ろした金棒を屍武者の刀が受け止め、重い音を門の前へ響かせた。


鬼は金棒を押し込みながら屍武者を後ろへ下げ、離れたもう一体の前でも、刀と金棒がぶつかり合った。


二体の屍武者が引き離されたところへ、武蔵と小次郎が右側から踏み込んだ。


屍武者が鬼の金棒を弾き、武蔵へ刀を振り下ろした。


武蔵は太刀で刃を受け流し、空いた鎧の脇へ脇差を叩き込む。屍武者が身体をよろめかせながら刀を横薙ぎに返すと、小次郎が武蔵の前を横切った。


「瞬燕流 飛燕!」


銀の軌跡が屍武者の胸元を斬り裂き、小次郎の姿が反対側へ抜けた。


屍武者は振り向きざまに小次郎へ刀を振り上げたが、武蔵の太刀がその刃を横から弾いた。


「こいつは俺たちでぶっ壊す!」


武蔵が踏み込み、太刀と脇差を続けて鎧へ叩き込む。屍武者も刀を振り回して二人を退けようとするが、小次郎が刃を受け流しながら側面へ回り込み、肩口へ斬撃を走らせた。


柞雷の歯車が激しく回り始めた。


「や、やらせるかぁ……」


四本の刀が一斉に動き、二本が鬼へ、一本が天狗へ振られ、最後の一本が武蔵と小次郎の間へ突き込まれた。


武蔵が身をひねって刃をかわし、小次郎も後ろへ抜けた。


その直後、右の回転ノコギリが唸りを上げた。


ギュイィィィン!!


村正宗が二人の前へ踏み込み、玄武の盾を正面へ突き出し、


ガァン!!


回転する刃が盾へぶつかり、火花を散らしながら村正宗を押し込んでいった。


「この程度で、通すと思うな!」


村正宗が足を踏ん張り、盾を斜めへ傾けると、回転ノコギリが表面を滑って横へ逸れた。


「今だ、行け!」


武蔵が盾の左から飛び出し、柞雷の膝へ太刀を振り下ろす。木と鉄の継ぎ目へ刃が食い込み、巨体が僅かに傾いた。


小次郎が反対側の膝へ回り込むと、もう一つの回転ノコギリが向きを変えて迫ってきた。


「瞬燕流 飛燕!」


小次郎が正面から消え、回転ノコギリが空を切った。


柞雷の背後へ抜けた小次郎が膝の裏へ刀を走らせると、ギギィッ!! と軋みながら巨体が半回転し、四本の刀が背後へ続けて振られた。


小次郎は一太刀目をかわし、二太刀目の下を抜け、三太刀目を刀で受け流す。下から迫った四太刀目へ天狗の術が横からぶつかり、刃の軌道を上へ逸らした。


「こ、こ、小賢しいぃ……」


晴明の式神が柞雷の腕へ攻撃を重ねる間に、武蔵と小次郎が屍武者へ戻った。


武蔵の太刀が正面から刀を押さえ、小次郎の斬撃が胸当ての割れ目を広げる。屍武者が小次郎を斬ろうと腕を上げた瞬間、武蔵が二刀を重ねた。


「天魔剛衝斬!」


太刀と脇差が屍武者の刀ごと胸当てへ叩き込まれ、鎧が大きく砕けた。


上半身が後ろへ折れたところへ、小次郎が一気に間合いを詰め、


「瞬燕流 飛燕返し!」


最初の一閃が肩口を裂き、振り返した刃が首元を斬り抜けた。


兜が宙へ飛び、屍武者の身体が石畳へ崩れ落ちた。


柞雷の六本の腕が再び動き、鬼と天狗を追い払うように四本の刀を振り回した。


続けて二つの回転ノコギリが左右から迫ると、村正宗が右側へ盾を向け、空海が左側へ錫杖を構えた。


「結界!」


透明な壁が立ち上がり、回転ノコギリを受け止めた。


刃が結界を削り、細い亀裂を走らせる。空海が錫杖へ力を込めると亀裂は広がらず、回転ノコギリが押し返された。


柞雷は腕を引くと、間を置かずに四本の刀を振り下ろした。


鬼が一本目を金棒で止め、天狗の術が二本目を弾き、三本目が結界へぶつかる。四本目は村正宗の盾へ受け止められた。


その攻防の中で、全員を包んでいた金色の光が次第に薄れていく。


光が消えた瞬間、柞雷の掌から黒い仮面が飛び出した。


一枚が空海の顔へ張りつき、続いて放たれたもう一枚がナリアの顔を覆う。


「ぐっ……!」


空海の結界が消え、止められていた回転ノコギリが前へ出た。


村正宗が玄武の盾を滑り込ませ、正面から刃を受け止める。


ワイチが封術弱薬を取り出し、ナリアへ向けて投げた。


ナリアは小瓶を受け取り、黒い仮面へ薬をかける。


仮面の縁が僅かに浮き上がったものの、すぐに顔へ張りつき直した。残った薬を重ねても、黒い仮面は震えるだけで外れない。


ナリアは腰の袋から完全なる解除薬を取り出し、自分の身体へかけた。


白い光が全身を包み、仮面の中央から亀裂が広がっていき、


パリンッ!


砕けた仮面が足元へ落ち、ナリアが空海へ両手を向けた。


「ディスペル!」


白い光が空海の顔を包み込み、黒い仮面を内側から押し広がり、亀裂が縦へ走り、割れた仮面が石畳へ落ちた。


空海が錫杖を握り直し、足元へ打ちつけ、


「後光!」


金色の光が再び広がり、仲間たちを包み込むと、迫っていた瘴気が柞雷の後ろまで押し戻された。


村正宗が玄武の盾を前へ構え、武蔵と小次郎の進む道を開けた。


残った屍武者が二人へ刀を振り下ろした。


村正宗が刃を盾で受け止め、そのまま横へ弾き、


「行け!」


武蔵が左から回り込み、太刀で屍武者の腰の鎧を打ち砕いた。


身体が傾いたところへ小次郎が正面から踏み込む。


「瞬燕流 神風牙!」


刀の切っ先が胸当ての割れ目へ突き刺さり、そのまま背中まで貫いた。


屍武者が残った力で刀を持ち上げようとするが、武蔵の脇差が肘を断ち、腕が石畳へ落ちた。


武蔵の太刀と小次郎の刀が左右から重なり、屍武者の胴を斬り裂き、鎧が砕け、身体がその場へ崩れ落ちた。


柞雷が黒い小瓶を取り出した。


「く、黒の……し、雫……」


瓶が握り潰された。


「ギャァァァァァァッ!!」


地の底から無数の絶叫が噴き上がった。


黒い地面から半透明の亡霊たちが次々と這い上がる。


「早く成仏させてくれぇぇぇ!!」


「お願いだぁぁ!!」


「もう離してくれぇぇぇ!!」


亡霊たちが天へ向かって必死に手を伸ばした、その瞬間、地面から無数の黒い腕が這い出し、亡霊たちの足や腕、身体へ一斉に絡みつき、


「いやだぁぁぁ!!」


「助けてくれぇぇぇ!!」


必死にもがく亡霊たちは黒い腕に地の底へ引きずり込まれ、黒い靄となって先に倒された屍武者へ吸い込まれていった。


砕けた鎧が音を立てて繋がり、斬り飛ばされた兜が首へ戻り、屍武者は刀を支えに立ち上がり、再び武蔵たちへ向き直った。


「ふざけやがって!」


武蔵が復活した屍武者へ踏み出そうとすると、小次郎がまだ倒れたままのもう一体へ駆けた。


「先にこちらを仕留めます!」


屍武者が起き上がるより早く、小次郎が胸元へ刀を振り下ろした。


武蔵もすぐに続き、太刀を横薙ぎに叩き込んだ。


屍武者が片腕で身体を起こそうとするが、武蔵の脇差がその腕を断ち、小次郎の刀が首を斬り落とし、胴だけになった屍武者へ二人の刃が続けて突き刺さり、身体が内側から崩れて鎧だけが石畳へ落ちた。


「今だ! 打ち込め!」


村正宗は玄武の盾を石畳へ置き、背中の金槌を抜くと、倒れた屍武者へ一直線に駆けた。


「滅魂打!」


振り下ろされた金槌が屍武者へ届く寸前、


ギィンッ!!


柞雷が横へ滑り込み、四本の刀を交差させて村正宗の前へ割って入った。


火花が散り、村正宗は弾かれながらも踏み止まり、


「どけぇ!」


身体を回して二撃目を倒れた屍武者へ振り抜く。


ギギギッ!!


柞雷が回転ノコギリを突き出し、村正宗を押し返した。


村正宗は石畳を蹴って再び屍武者へ踏み込んだ。


「今度こそ終わらせる!」


三度目の滅魂打が倒れた屍武者へ振り下ろした。


ギュイィィィン!!


柞雷は回転ノコギリを石畳へ突き刺し、その反動で巨体を跳ね上げると、再び屍武者の前へ割り込んだ。


ドォン!!


金槌が石畳を砕き、砕けた石が周囲へ飛び散った。


離れた場所へ着地した柞雷は四本の刀を前へ揃え、二つの回転ノコギリを回し始めた。


ギュイィィィン!!


「ざ、ざ、残念だったなぁ……」


六本の腕が二体の屍武者を守るように大きく広がった。

次回予告


村正宗だ!


滅魂打を当てる相手は決まってる。


だが、あのからくり人形が何度も邪魔に入りやがる。


屍武者の復活を止められなきゃ、この戦いは終わらねえ。


仲間が作ってくれた一瞬の隙、その一撃にすべてを懸ける!


次回、第79話「届け!滅魂打」。


見逃すんじゃねえぞ。

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