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世界を救ったのは剣豪でもなく陰陽師でもなく薬師?だったんですよ!  作者: 氣愛注入


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新たなる脅威


「これより緊急会議を始める。」


「ハロルド、若雷についての報告せよ。」


「蛇骸ヶ原一帯を調査いたしましたが、若雷の素性や目的を示す手掛かりは発見できませんでした。」


「分かった。ワイチ、現場で起きたことを最初から報告してくれ。」


「かしこまりました。俺たちが蛇骸ヶ原へ到着した時に、色々な魔物を放ち、若雷も私達を襲いました。

若雷に深傷を負わせて止めようとしましたが、若雷はすでに四神の血を使って儀式を始めていました。


自分の血を妖刀に使い儀式によって闇神獣が誕生し、若雷は闇神獣と何かをさせようとしましたが、若雷は闇神獣に喰われました。


そのまま闇神獣との戦いになり、全員で力を合わせてなんとか討伐しました。


戦いが終わったあと、闇神獣に刺さっていた四本の妖刀を回収しようとしたところ、すべて黒い塵となって消えました。


その直後、虚無僧姿の男が現れ、男は土雷と名乗り、若雷は自分たちの中で最も弱い存在だったこと、他にも仲間がいることを話しました。


さらに黒い水晶を取り出し、その中からイザナミと名乗る者の声が聞こえてきました。


イザナミは、俺たちとこの世界への敵意を示し、黄泉の扉が開く日も近いと告げ、最後に土雷は、再び会うことになると言い残し、姿を消しました。


報告は以上です。」


「若雷がこの首謀者ではなかったのか。」


「はい。若雷の背後に、別の者たちがいたことが分かり、土雷の言葉が事実なら、同じような敵が他にもいるようです。」


「イザナミという者が、その者たちを従えている可能性もあります。」


「黄泉の扉とはなんだ?その言葉を知る者はいるか。」


「聞いたことがありません。」


「私も存じません。」


「王宮に残されている文献にも、その名が記されていた覚えはございません。」


「イザナミについてはどうだ。」


「その名も、これまでの記録にはありません。」


「姿を見せず、黒い水晶を通して声だけを届けてきたということは、どこにいるのかも分からないか。」


「はい。土雷がどこから現れ、どこへ消えたのかも分かりませんでした。」


「所在も正体も不明で、黄泉の扉が何を意味するのかも分からない。」


「このままでは、敵が次に動くまで待つことになる。」


「国王様、以前、青龍様が『根の者』という言葉を口にされていました。」


「根の者?!」


「はい、その時は詳しく語られませんでしたが、今回現れた者のことかもしれません。」


「四神であれば、イザナミや黄泉の扉についても何か知っているかもしれません。」


「手掛かりがない以上、青龍様に尋ねるしかないな。」


「ハロルドは王国中へ通達し、土雷、イザナミ、黄泉の扉について情報を集めよ。古い伝承や記録もすべて調べさせろ。」


「承知いたしました。」


「ワイチたちは体制が整うまでは、休養を優先せよ。」


「回復後、青龍様のもとへ向かい、根の者、イザナミ、黄泉の扉について聞いてきてくれ。」


「承知しました。」


やっと倒せた敵、でも本当の戦いは、これからのようだ


会議を終えた一行は、王の間を出た。


「王様は身体を治すことを優先しろと言っていましたけど、これからどうしますか?」


「今日はもう休むしかねぇだろ。今の状態で動いても、何もできねぇ。」


「……小次郎さんは、もう目を覚ましているでしょうか?」


「どうだろうな。あれだけの傷だ。まだ眠っていてもおかしくねぇ。」


「一度も話せていませんし、容態だけでも確かめに行きませんか?」


「俺も気になってた。闇神獣を倒したことも早く伝えてやりてぇ。」


「小次郎さんは、自分が倒れたあとのことを何も知りませんからね。」


「病室へ行ってみましょう。まだ眠っていたら、顔だけ確認して戻ればいいです。」


一行は王城を出ると、小次郎が運び込まれた治療院へ向かった。


治療院の中には薬草の匂いが漂い、奥の部屋から負傷者のうめき声が聞こえていた。


受付で小次郎の病室を尋ね、案内された廊下を進んだ。


「面会しても大丈夫でしょうか?」


「先ほど目を覚まされました。ただ、無理はさせないでください。」


「分かりました。」


病室の扉を軽く叩いた。


「誰だ?」


「俺たちです。入っても大丈夫ですか?」


「その声はワイチか? 早く入ってくれ。」


扉を開けると、小次郎は寝台の上で上半身を起こしていた。右肩から先は厚い布で覆われている。


「もう起きていたんですね。痛みはどうですか?」


「薬が効いてる間は何とかな。なくなった右腕が、まだそこにあるみてぇに痛むよ。」


「無理に起きていて大丈夫なのか?」


「ずっと寝てたから、逆に身体が痛くなってきた。それより、闇神獣はどうなった?」


「倒しました。晴明さんの太極陣で、跡形もなく消えました。」


「本当に倒したのか?」


「間違いありません。」


「そうか……。あれを倒せたのか。」


「小次郎さん……僕を庇ってくれて、本当にありがとうございました。」


「ワイチ、お前はどこもやられてねぇのか?」


「はい。小次郎さんが庇ってくれたから、僕はこうして生きています。」


「僕を助けるために、小次郎さんは右腕を……。」


「そんな顔をするな。俺が自分で決めたことだ。」


「でも、僕は何もできませんでした。目の前で小次郎さんが傷つくのを、見ていることしかできなかった。」


「お前が生きてるなら、それでいい。あの時は、それしか考えてなかったからな。」


「小次郎さんが助けてくれた命を、絶対に無駄にはしません。」


「それなら十分だ。」


「そのあと、俺が倒れてから何があった? 武蔵は無事なのか?」


「武蔵さんも無事です。しん吉さんもきゅうすけも、全員生きています。」


「全員、生きて帰れたのか?」


「誰一人欠けていません。小次郎さんも含めて、全員です。」


「そうか……。みんな、生きて帰れたんだな。」


「剣だって、左腕で振れるようになればいい。」


「簡単に言いやがって……。」


「簡単じゃねぇことくらい分かってる。それでも、失った腕を悔やみ続けたって戻ってこねぇだろ?」


「今は治療に専念してください。」


「分かってるよ。」


「実は先ほど、王城で緊急会議がありました。」


「緊急会議? 闇神獣を倒したのに、何を話し合う必要があった?」


「闇神獣が消えたあと、妖刀が落ちていました。俺が拾おうとしたんですが、触れた途端に崩れてしまったんです。」


「妖刀が崩れた?」


「その直後、黒い水晶を持った男が現れました。」


「男? 若雷の仲間か?」


「土雷と名乗っていました。」


「土雷……? そんな奴がいたのか?」


「若雷を叱りに来たと言っていました。ところが、闇神獣に若雷が喰われたと知ると、あいつを殺してくれたのかと笑ったんです。」


「待て。若雷を殺した俺たちを恨むどころか、喜んだのか?」


「若雷は勝手な奴だったと言っていました。」


「どういうことだ? あれだけのことをしておいて、若雷が勝手に動いていただけだっていうのか?」


「詳しいことは分かりません。土雷が何者なのかも、若雷とどんな関係なのかも、何も話しませんでした。」


「じゃあ、その男は何をしに来た?」


「黒い水晶から、女の声が聞こえました。イザナミと名乗っていました。」


「イザナミ? 誰だ、それは?」


「俺たちにも分かりません。ただ、私の大事な一部を壊したなと言っていました。」


「大事な一部って、若雷のことか? それとも闇神獣のことなのか?」


「そこも分かりません。」


「何一つ分からねぇじゃねぇか。」


「そのあと、この世界を許さない、黄泉の扉が開くのも近い、止められるものなら止めてみろ、と言い残しました。」


「黄泉の扉……? 何なんだ、それは?」


「王様もハロルドさんも知りませんでした。」


「ちょっと待てよ。若雷を倒して、闇神獣まで倒したんだぞ? 俺は右腕を失って、みんなも死にかけた。それでも勝ったから、ようやく終わったと思ったんだ。」


「それなのに、あいつらの後ろにまだ何かいるっていうのか? 俺たちが命懸けで倒した相手は、いったい何だったんだよ?」


「イザナミの言葉が本当なら、若雷との戦いは終わりではありません。」


「そんな話、すぐに受け入れられるわけねぇだろ……。」


「俺たちも同じです。会議が終わっても、まだ頭の整理ができていません。」


「王様は何て言ってる?」


「ハロルドさんたちが土雷とイザナミについて調べることになりました。俺たちは身体を治したあと、青龍様のところへ向かうよう命じられています。」


「青龍様のところへ?」


「以前、青龍様が根の者ではないかと口にしていました。イザナミや黄泉の扉について、何か知っているかもしれません。」


「根の者……。そういえば、そんなことを言っていたな。」


「今のところ、青龍様だけが手掛かりです。」


「いつ向かう?」


「全員の傷が癒えてからです。王様からも、今は休むように言われました。」


「俺も行く。」


「小次郎さんは重傷なんですよ?」


「だから早く治す。刀を振れなくても、自分の足で歩けるなら行く。戦えねぇなら、話を聞くだけでもいい。」


「今のお前を連れていったら、道中で倒れるかもしれねぇ。まずは身体を治せって言ってるんだ。」


「俺だって、じっとしてられねぇんだよ。イザナミも黄泉の扉も知らねぇまま、ここで待ってろっていうのか?」


「出発できるかどうかは、ナリアさんと治療師に判断してもらいます。それならいいですか?」


「それでいい。」


「お前たちも、ゆっくり休めよ。そんな顔で心配されても、説得力がねぇぞ。」


「今日は宿に戻ります。また明日、様子を見に来ます。」


一行は小次郎に別れを告げ、病室をあとにした。


治療院を出ると、王都の空は夕焼けに染まっていた。


「思ったより元気そうで良かったです。」


「終わったと思っていた戦いが、まだ続くと聞かされたんだ。すぐに気持ちを切り替えられる話じゃねぇ。」


「今度は何が待っているか分かりません。まずは全員で身体を治しましょう。」


「青龍様のところへ向かうためにも、今は休むしかねぇな。」


一行は翌日から、それぞれの回復に専念した。


傷が癒えるまで身体を休め、失った体力と魔力を戻していった。


小次郎は治療師の許可が下りると、左手で木刀を握った。


慣れない左腕では思うように振れず、木刀は何度も床へ落ちた。それでも小次郎は、毎日左手で木刀を振り続けた。


数日後、一行は再び小次郎の病室を訪れた。


「左腕だけで、そこまで振れるようになったんですか?」


「まだ思ったところには振れねぇけどな。」


「傷口は大丈夫なのか?」


「治療師から許可された範囲でしか動かしてねぇよ。」


「青龍様のところまで行けそうですか?」


「歩くことには問題ねぇ。戦うなと言われたら戦わない。それなら連れていけるだろ?」


「ナリアさんは何と言っていますか?」


「長時間歩き続けず、途中で休息を取るなら構わないと言われた。」


「それなら、一緒に行きましょう。少しでも身体に異変があったら、すぐに伝えてください。」


出発の日の朝、一行は王都の門前に集まった。


小次郎は右肩を布で覆い、背中に刀を背負っていた。


「刀まで持ってきたのか?」


「左手で扱う重さに慣れておきてぇんだ。無理に抜いたりはしねぇよ。」


「必要な薬と食料は揃っています。小次郎さんの痛み止めも預かりました。」


「世話をかけるな。」


「ハロルドさんたちの調査結果を待たなくていいんでしょうか?」


「王様からは、こちらはこちらで青龍様に話を聞くよう命じられています。土雷たちの情報が見つかれば、使いを送るそうです。」


「なら、俺たちは青龍様から聞けることを聞くしかねぇな。」


「何も知らないままでは、これからどうすればいいのかも分かりません。まずはイザナミと黄泉の扉について確かめましょう。」


王都の門がゆっくりと開いた。


その先には、青龍の待つ地へ続く道が伸びていた。


次回予告


武蔵だ。


小次郎が目を覚まして、本当に安心した。


右腕を失っても、あいつは前を向いて歩こうとしている。


俺たちも立ち止まるわけにはいかねぇ。


次回――「青龍が語る」


必ず見届けてくれ。

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