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世界を救ったのは剣豪でもなく陰陽師でもなく薬師?だったんですよ!  作者: 氣愛注入


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ズタボロの一行

ワイチは倒れている小次郎のもとへ駆け寄ると、失われた右腕から流れ続ける血を見て顔を強張らせた。


「ナリアさん、小次郎は大丈夫ですか?」


「かなり重症です。やれるだけやってみます。」


ナリアは傷口へ両手をかざした。


治癒魔法を発動させようとした光は一瞬だけ灯り、段々と光が消えていった。


「すみません、魔力が足りません……。」


その時。


「おーい! 大丈夫か?」


崩れた山肌の向こうから駆けてくる足音が近づき、ハロルドが兵たちとともに戦場へ飛び込んできた。


「やはり、お前たちだったか。山が吹き飛ぶのが見えたから急いで駆けつけたが……小次郎!」


「すみません、ハロルドさん。魔力回復薬はありませんか? このままでは小次郎さんが危険です!」


「待っていろ。おい!魔力回復薬を早く持ってこい!」


兵がすぐに小瓶を持って戻ってきた。


「これだ。使ってくれ。」


「ありがとうございます。助かります!」


ナリアは魔力回復薬を飲み干すと、再び小次郎の傷口へ両手をかざした。


傷口を包んだ光は少しずつ血の流れを抑え、裂けた肉を閉じ合わせるように広がっていく。


やがて傷口から血が流れ出ることはなくなり、ナリアは安堵の息を漏らした。


「応急処置は終わりました。腕は戻せませんが、王都へ運べば命は助けられます。」


「よくやってくれた。兵士たち、小次郎殿を担架へ。傷口に負担を掛けるな。」


兵たちは近くの木を切り出して担架を組み上げ、小次郎を慎重に寝かせた。


「武蔵、大丈夫か? 立てるか?」


「……ちょっと無理だ。ズタボロだ。」


「お前ら武蔵を二人で支えて馬まで連れて行け、丁重にな。」


「晴明、阿国、お前たちは怪我をしていないか?」


「怪我はありません。ただ、式神も魔力も使い切りました。」


「私は軽傷です。皆さんが前で戦ってくださったおかげで、最後まで支えることができました。」


「空海、ワイチ、お前らも大丈夫だったのか?」


「魔力はもう空っぽですわ。あれほど結界を張り続けたのは初めてでした。疲れました。」


「俺は大丈夫です。でも、小次郎さんが助かって本当に良かった……。」


「いやぁ、今回は本当に疲れたよ。おいらあんなに卍足を何度も使ったのなんて初めてだ。」


「俺だって頑張ったんだぞ。いっぱい燃やしたから、もうヘトヘトだ。」


その言葉に、一行の間へようやく小さな笑みが広がった。


「さて、皆で王都に帰るぞ。」


兵たちは負傷者を馬へ乗せる準備を進め、一行も帰還の支度を整え始めた。


ワイチが霊杭を拾い集めていると、崩れた地面の先で鈍い光が目に映った。


「あれは……妖刀。」


闇神獣の体へ突き刺さっていた四本の妖刀だけが、崩れた岩肌へ静かに残されていた。


ワイチは妖刀へ歩み寄ると、そのうちの一本へ静かに手を伸ばした。


指先が妖刀へ触れた瞬間――。


妖刀は黒い塵となって崩れた。

崩壊は残る三本へも広がっていった。


四本の妖刀は風にさらわれるように跡形もなく消え去った。


「あれ、これやったの、君達?」


聞き慣れない男の声に、一行は一斉に振り向いた。


虚無僧笠を深くかぶった男が立っていた。


「なんだ、お前は誰だ?」


「質問してるのは、僕なんだけどなー」


「そうだ、闇神獣を倒したのは俺たちだ!」


「そうか、そうか。やってくれたか。」


「君達が若雷を潰してくれたんだね。若雷は勝手なやつだったからさ、良かったよ。本当、死んでもなんも気にしない、ただね!」


男は黒い水晶を取り出し


「俺はどうでもいいんだけど、この方は話があるみたいよ」


黒い水晶から低く重い声が響き渡った。


「貴様らか……私の大事な一部を壊してくれたのは?」


「貴様らは許さん、この世界も許さん、全て許さん。」


「このイザナミを怒らせたことを後悔させてやるぞ!」


「今のうちにせいぜい楽しんでおけ。」


「黄泉の扉が開く日も近い。」


「楽しく待ってろよ。ははははは。」


黒い水晶の光が静かに消えた。


「あーあ、やっぱり怒っていたな。まあいいや。俺も準備があるから今日は帰る。」


「若雷は一番弱い出来損ないの奴だからさ。」


「あんなのに手こずっていたら、僕達に勝てないよ?」


「俺は土雷。その名前だけ覚えてね、もう少ししたら、素敵な地獄絵図が見えるよ。ではまたねー。」


土雷は瘴気を漂わせながら姿を消した。

次回予告


ハロルドだ。


闇神獣は倒した。だが、あれで終わりじゃなかった。


傷ついた仲間たちは治療を受け、それぞれ束の間の休息を取る。


そして王都へ集められた俺たちを待っていたのは、新たに判明した恐るべき敵と、この先の戦いを左右する重大な話だった。


次回、第61話――『新たなる脅威』


覚悟を決めて、王都へ集まってくれ。


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