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世界を救ったのは剣豪でもなく陰陽師でもなく薬師?だったんですよ!  作者: 氣愛注入


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決戦の果てに


「小次郎――!」


「お前……腕が――!!!」


小次郎はゆっくりとワイチを見つめた。


「無事だったな、良かった……あとは頼んだぞ……ワイチ……。」


その言葉を最後に、小次郎の体から力は抜けた。


「小次郎!!」


燃え続ける結界の炎が小さく揺らぎ、瘴気が渦を巻いていた。


武蔵は、懐から人用の霊杭を取り出すと、左足の流点へ一気に突き立てた。


突き立てたところから真っ赤に染まる。


「なぁ、新吉、きゅうすけ。俺に卍足をしてくれないか。」


「うん、わかったよ!」


きゅうすけの癒炎が霊杭を包み込み、赤く燃え上がった炎が霊杭を伝って武蔵の体内へ流れ込んだ。


「おいらは背中から卍足するね!」


新吉が卍足をしてからまもなく


「熱っ!」


思わず手を離した。


武蔵の目は真っ赤に染まり、握り拳から血がしたたっていた。


髪の毛は逆立ち、燃え盛る結界の炎が激しく揺らぎ、闇神獣が一瞬だけ怯んだ。


武蔵は太刀を闇神獣に向けて


「よくも……よくも小次郎をぉぉぉぉぉぉッ!!!」


怒号と同時に武蔵は、闇神獣へ突っ込んで行った!


闇神獣が爪撃を放った瞬間、武蔵は大きく振りかぶった!


「天魔剛衝斬」


風を裂いた斬撃が一直線に闇神獣へ突き抜け、爪撃もろとも巨体を切り裂いた!


闇神獣は咆哮を轟かせた時、重いニ撃目を放った!


「天魔絶界斬」


交差した巨大な斬撃が翼を深々と裂き、闇神獣の巨体が大きく傾いた。


口元から流れ落ちた血が胸元を赤く染めていたが、そのまま大きく太刀を振り抜いた!


右手の太刀から青龍の形をした水流が姿を現し、天を揺るがす咆哮を轟かせながら左手の小太刀が青龍を貫いた!


太刀を覆う玄武の力が巨大な甲羅となって青龍を包み、大きく打ち下ろした!


「奥義ィィィッ!!!


天魔龍覇玄甲斬ッ!!!」


玄武の力に撃ち出された青龍は神の刃へ姿を変え、天地を貫く轟音とともに闇神獣へ突き進み


巨大な胸を貫いた龍刃が瘴気を吹き飛ばし、闇神獣の巨体が初めて動きを止めた。


全ての力を出し切った武蔵は、そのまま倒れ込みながら


「あとは……頼んだぞ……ワイチ……晴明」


「武蔵、しっかりしろ!!」


ワイチは倒れ込んだ武蔵を受け止め、その体を地面へ横たえた。


武蔵の一撃を受けた闇神獣は起き上がれず、地面へ伏したまま全身を震わせていた。


胸から肩にかけて深い傷が刻まれ、傷口から黒い血が溢れていたものの、周囲を覆う瘴気が集まり、裂けた肉を少しずつ塞いでいった。


「私も、そろそろ限界のようです。今の私に残されているのは、渾身の術、太極陣を一度放つだけの魔力です。しかし、このままでは、どれだけ深い傷を与えても瘴気に塞がれてしまいます」


「ワイチさん、あの瘴気をどうにかできませんか?」


「わかりました。必ず太極陣が届く状態にします!」


ワイチは闇神獣へ駆け出し、全身に浮かぶ無数の流点と瘴気の流れを追った。


「どこだ……。」


傷を塞いでいた瘴気は全身から集まっているのではなく、いくつかの場所を通って傷口へ流れ込んでいた。


「ここじゃない……。」


「こっちも違う……。」


「あ……あそこか」


複雑に絡み合う流れの中で、四か所だけ瘴気が濃く滞り、そこから全身へ送り出されていた。


頭、甲羅の際、翼、そして尾。


「あの四か所だ。あそこへ霊杭を打ち込んで瘴気を体外へ出せば、傷を塞ぐ力を弱められる!」


ワイチは闇神獣の頭へ駆け上がり、一つ目の流点へ霊杭を突き立てた。


闇神獣の首が大きく跳ね上がり、噛み合わされた巨大な牙がワイチの足元で激しい音を立てた。


武蔵の一撃に封じられた巨体は起き上がれないものの、頭だけを何度も振り回し、ワイチを振り落とそうと暴れ続けた。


ワイチは頭部へ霊杭をさらに押し込み、そのまま一気に引き抜いた。


流点から黒い瘴気が噴き上がり、途切れることなく流れ出した。


闇神獣の咆哮が戦場を震わせ、牙が地面を抉った。


ワイチは頭部から甲羅へ飛び移り、二つ目の流点へ向かった。


闇神獣の四肢が地面を掻き、巨体が僅かに持ち上がった。


甲羅が激しく揺れ、ワイチの足元が大きく跳ね上がった。


ワイチは揺れる甲羅を駆け抜け、際に浮かぶ流点へ霊杭を振り下ろした。


闇神獣が巨体を捻り、霊杭の先が流点から逸れた。


「ここで逃がすか!」


ワイチは踏み込み直し、二つ目の流点へ霊杭を深く突き立てた。


「ここはおいらが霊出する! ワイチは次へ行け!」


しん吉が霊出を始めると、霊杭の周囲から黒い瘴気が引き出されていった。


闇神獣は苦悶の咆哮を上げ、甲羅を地面へ何度も打ちつけた。


ワイチは甲羅を駆け抜け、翼へ飛び移った。


闇神獣は霊杭を打たせまいと巨大な翼を持ち上げ、ワイチごと地面へ叩きつけようと振り下ろした。


傾いた翼から体が滑り、朱雀の羽から噴き上がる炎がワイチの眼前を覆った。


ワイチは霊杭を翼へ突き立てて落下を止め、炎の隙間を縫って付け根へ駆け上がった。


翼が再び振り上げられた瞬間、ワイチは三つ目の流点へ霊杭を突き立てた。


闇神獣は翼を激しく振り回したが、ワイチは両手で霊杭を握り締め、そのまま奥まで押し込んだ。


「抜けろ!!」


霊杭を引き抜くと、翼の付け根から大量の瘴気が噴き上がり、周囲の炎が紅蓮の火柱となって立ち昇った。


闇神獣は天地を震わせる咆哮を放ち、ワイチの体を翼から甲羅へ振り落とした。


背中を強く打ちつけ、肺から息が押し出された。


それでもワイチは霊杭を離さず、甲羅へ手をついて体を起こした。


「ここは俺が焼き続ける! ワイチは最後の流点へ行け!」


きゅうすけの癒炎が翼から噴き出す瘴気を包み、黒煙へ変えながら浄化していった。


頭部からは瘴気が流れ続け、甲羅の際ではしん吉が霊出を続けている。


胸と肩の傷へ流れ込む瘴気は目に見えて細まり、裂けた肉を塞ぐ動きも遅くなっていた。


ワイチは甲羅から滑り下り、最後の流点がある尾へ向かった。


青龍の顔をした尾が牙を剥き、近づくワイチへ噛みついた。


ワイチが横へ飛ぶと、巨大な顎が地面を抉り、砕けた石が周囲へ飛び散った。


尾はすぐさま向きを変え、逃げ道を塞ぐようにワイチへ襲い掛かった。


「ワイチさん、危ない!!」


阿国の鉄扇が青龍の横面を強く打ち据え、迫っていた牙の軌道を逸らした。


怒り狂った尾が阿国へ向きを変え、その体を噛み砕こうと大きく口を開いた。


「今です! 最後の流点を!」


ワイチは尾へ飛びつき、最後の流点へ霊杭を深く突き立てた。


闇神獣の巨体が大きく跳ね上がり、青龍の顔をした尾がワイチを振り落とそうと激しく暴れた。


「これで……最後だ!!」


ワイチが霊杭を一気に引き抜くと、尾から黒い瘴気が噴き上がった。


阿国へ迫っていた牙から力が抜け、青龍の顔をした尾は地面へ崩れ落ちた。


四か所から瘴気が流れ出し、武蔵が刻んだ胸と肩の傷は塞がらなくなっていた。


地面を掻いていた四肢から力が抜け、闇神獣の巨体が地面へ沈んだ。


「晴明さん、今がチャンスです!!」


「武蔵さんが命を懸けて時間を繋ぎ、皆さんが瘴気を断ってくれました。託された思い、決して無駄にはしません」


「これで最後です」


「陰陽の理、天地の調和を以て、穢れを払わん」


『太極陣』


パチンッ――!


白と黒の光が闇神獣の巨体を包み込んだ。


闇神獣は傷を塞ぐこともできないまま、肉も骨も音なく細かな塵へと崩れていった。


次回予告


小次郎だ。


闇神獣は倒したが、俺は片腕を失い、武蔵も全ての力を使い果たして倒れた。


ワイチたちも、度重なる戦いで限界を迎えている。


勝利を掴んだというのに、誰一人として無事では済まなかったな。


次回、第60話


「ズタボロの一行」


まったく……我ながら、ひどい有様だ。

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