黒き咆哮
武蔵と小次郎の合体技を受けた若雷は、胸から鮮血を噴き出して地面へ叩きつけられた。
「いや、おい見ろ!」
「なっ……あいつ、まだ生きてるのか!?」
「グフェ……まだ……終われない……。」
「俺の夢は……まだ潰えない……。」
若雷は胸から血を撒き散らしながら、四本の妖刀が置かれた場所へ這い進んでいった。
「若雷、何をする気だ!?」
「ダメだ! あいつを行かせちゃいけない! わからないけど、あそこへ行かせちゃ駄目だ!」
「止めろ! 奴を!」
「あと少し……あと少しなんだ……。」
若雷は四本の妖刀の中心へたどり着くと、胸から溢れ続ける血でその一帯を真っ赤に染めた。
ピカッ!
血を浴びた四本の妖刀が一斉に光り出した瞬間、その中心の地面が大きく抉れた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。
地の底から響く轟音とともに、大地全体が激しく揺れ始めた。
「何だ、この揺れは!?」
「地面が割れるぞ!」
「危ない! みんな下がれ!!」
抉れた地面から亀裂が四方へ走り、真紅のマグマが轟音とともに噴き上がった。
黒煙が空高く立ち昇り、戦場一帯を覆い尽くした。
「何だ……何が起きているんだ!?」
「はやく……。」
「早く姿を見せてくれ……。」
その瞬間、黒煙の中で巨大な影が姿を現した。
ズシン――。
「こ……これが……闇神獣……。」
「なんて、デカさだ!瘴気もヤバい!」
「あははははっ!」
「やっと……やっと会えたね!」
「さぁ、奴らを潰し――」
ガブッ――。
「若雷を咥えた!?」
「なっ……何をする!? やめろ! 俺様がお前を復活させて――」
グシャッ――。
「あいつ……食いやがった!!」
ゴオオオオオオオオオッ!!
闇神獣の全身から、それまでとは比べものにならないほど濃密な邪気が噴き出した。
四本の妖刀が宙へ浮かび上がった。
妖刀は漆黒の光を放ちながら闇神獣へ吸い込まれ、それぞれ四つの部位へ融合した。
ゴオオオオオオオオオッ!!
邪気はさらに膨れ上がり、戦場全体を飲み込んでいく。
ゴオオオオオオオオオッ!!
闇神獣は遠くそびえる山へ顔を向けると、赤黒い目を大きく見開き、大きく息を吸い込み、腹を大きく膨れ上がらせながら、逆立った尻尾を小刻みに震わせ始めた。
「まずい!」
「何か来るぞ!!」
ゴアアアアアアアアアッ!!
漆黒の咆哮が一直線に山へ突き刺さった。
ドゴォォォォォォォォン!!
閃光が走った直後、山全体が一瞬で消し飛び、巨大な爆炎と土煙が天高く舞い上がった。
轟音は戦場全体を揺るがし、爆風が木々を薙ぎ倒しながらワイチたちを襲った。
土煙がゆっくりと晴れていき、そこに山の姿は、もうなかった。
「うそだろ……。」
「山が……消えた……。」
闇神獣は巨大な翼を広げ、低空飛行で飛び立った。
「何!飛んだ!?」
巨大な翼を羽ばたかせるたび、炎を纏った無数の羽が四方八方へ降り注いだ。
着弾した木々は次々と燃え上がり、炎は瞬く間に森全体へ燃え広がっていく。
長い尾が大地を薙ぎ払い、巨大な爪が岩盤を切り裂き、行く先々が破壊されていく。
「こんなの……止められるのか!?」
「このままじゃ世界が滅ぶ!」
「このままじゃ放っておけない!」
「でも、どうやって?!」
「とにかく、みんな、行くぞ!!」
次回予告 阿国です。
「山まで一瞬で消えてしもうた……。」
「こんなん、どうやって止めればええん?」
「せやけど、ここで逃げたら、もっと多くの命が失われる。」
「みんなで知恵を合わせれば、きっと道は見つかるはずや。」
第58話 破滅の疫災
「絶対に、見届けてな。」




