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世界を救ったのは剣豪でもなく陰陽師でもなく薬師?だったんですよ!  作者: 氣愛注入


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悪の根を断ち切れ



「復活の雫がある限り、このままでは勝てません。でも、勝機はあります。」


「僕は若雷と二体の屍将軍、それから復活の雫をずっと観察していました。」


「若雷の気・血・潤水の流れは異常です。全身が瘴気にまみれ、とても正気とは思えません。」


「そして、一番厄介なのは、盾の屍将軍です。盾の屍将軍が若雷を守り続ける限り、若雷へ決定打は届きません。だから、まずあの盾を壊します。」


「攻撃力の高い二体の屍将軍を抑えながら、全員で盾を壊します。」


「復活の雫で屍将軍本体は復活できても、壊れた武器や盾までは復活できないはずです。」


「だから、一度盾を失わせれば、防御力は大きく落ちます。盾を壊したら、若雷へ攻撃を集中します。」


「若雷の力の源は瘴気です。このままでは傷を与えても塞がれてしまいます。この筒付きの霊杭を瘴気が溜まっている場所へ打ち込み、僕が霊出を行い、噴き出した瘴気をきゅうすけに焼いてもらいます。」


「瘴気を体の外へ排出できれば、若雷の力も弱まるはずです。」


「その間に、しん吉が復活の雫の袋を奪ってください。雫さえなければ、若雷は復活の雫を使えません。」


「そこからは、倒しやすくなった敵から順番に倒していきます。」


「空海さん、盾が壊れるまで絶界で若雷を閉じ込めてください。この作戦で一番負担をかけます。」


「ナリアさん、みんな必ず傷を負います。回復をお願いします。」


「阿国さん、みんなの速度を落とさないように支援をお願いします。」


「晴明さん、摩天狼五体で八本腕の屍将軍と盾の屍将軍を攪乱してください。」


「武蔵さん、小次郎さん、とにかく盾を壊すことだけに集中してください。」


「どれだけ早く盾を壊せるかで、この作戦の成否が決まります。」


「一つ確認していいか? 盾は一枚壊せば十分だな。」


「一枚壊れれば十分です。」


「復活の雫を奪えたら、あとは倒しやすくなった敵から順番に倒していけばいい。」


「その通りです。」


「なら、右の盾を先に壊す。」


「武蔵さんが正面を押さえてくれれば、僕が横から同じ盾へ攻撃を重ねられます。」


「よし、この作戦で行くぞ!」


空海が印を結ぶ。


「絶界!」


透明な壁が若雷だけを包み込んだ。


「何しやがる、殺すぞ!」


四刀を回転させ、絶界へ叩きつけた。


透明な壁が大きく軋み、無数の亀裂が走った。


バギィンッ!!


砕け散った光が地面へ降り注ぐ。


「絶界!」


新たな絶界が若雷を再び閉じ込めた。


「何度やっても無駄だ!」


休む間もなく叩きつけられる斬撃に絶界は激しく揺れ、空海の呼吸は次第に荒くなる。


印を結ぶ手は震え、それでも若雷を外へ出さないためだけに気力を絶界へ注ぎ続けた。


その間に武蔵と小次郎が右の盾へ迫り、武蔵の刃を受け止めた盾へ、小次郎の刃が横から食い込んだ。


ガキィィィィンッ!!


小次郎へ向いた盾へ武蔵が打ち込み、武蔵を押し返そうとした力が残るうちに小次郎の刃が同じ傷口をさらに深く裂いた。


受け止めるたびに火花が散り、削れた鉄片が足元へ降り積もっていった。


晴明が符を放った。


「行け、摩天狼!」


五体の摩天狼が八本腕の屍将軍と左手に盾を構えた屍将軍へ一斉に襲いかかった。


八本の刀が舞い、襲いかかった!


摩天狼はその斬撃をかわし、空いた間へ別の一体が飛び込み、さらに横からもう一体が食らいついた。


左手に盾を構えた屍将軍が武蔵たちへ向きを変えるたび、摩天狼が飛び込み、その行く手を押し返した。


阿国の笛が戦場へ響き渡り、音色に後押しされるように武蔵と小次郎の踏み込みはさらに鋭さを増し、二人は休む間もなく攻め続けた。


ナリアの癒しの光が戦場を巡り、斬り裂かれた傷口は閉じ、失いかけた力が再び体へ戻っていく。


若雷の斬撃は止まらない。


「ヒャハハ、壊れろ壊れろ!」


絶界が砕ければ空海は張り直し、張り直した絶界へ再び斬撃が叩きつけられる。


その繰り返しに空海の額から汗が流れ落ち、肩で息をしていた。


それでも若雷を閉じ込めるため、印を解くことはなかった。


一方、武蔵と小次郎の攻撃も止まらない。


武蔵が盾を押し込み、その隙へ小次郎の刃が滑り込む。


押し返そうとした力ごと武蔵が叩き込み、その衝撃が消え切る前に小次郎が同じ場所を斬り裂いた。


繰り返し重ねられた衝撃が盾の内側へ蓄積していく。


ピシッ。


細い亀裂が右の盾を走り、武蔵の一撃で亀裂はさらに広がった。


そこへ小次郎の刃が重なった瞬間、


バギィィィンッ!!


右の盾は耐え切れず、轟音とともに砕け散った。


武蔵と小次郎は舞い上がる破片を突き抜け、一気に若雷へ迫った。


摩天狼は八本腕の屍将軍と左手に盾を構えた屍将軍を戦場の外側へ引きつけ続けた。


ワイチは二本の筒付きの霊杭を握り締め、武蔵と小次郎の後を追いながら、若雷との間合いを静かに詰めていった。


「何しやがる、殺すぞ!」


四刀が唸りを上げた。


ガガガガガンッ!!


武蔵の太刀が真正面からぶつかり、激しく散った火花の中を小次郎の刃が走った。


若雷は四刀を返して受け流し、返した刀へ武蔵が踏み込み、その一撃を受け止めた四刀へ小次郎が重ねた。


武蔵を止めれば小次郎が斬り込み、小次郎を払えば武蔵が叩き込む。


息をつく間もなく押し寄せる二人の連撃に、若雷は四刀を休ませる暇もなく応戦を続けた。


その後方では、晴明が放った五体の摩天狼が八本腕の屍将軍と左手に盾を構えた屍将軍へ絶え間なく襲いかかる。


八本の刀が舞い襲いかかり、摩天狼は牙をむいて飛び込み、一体が弾き飛ばされても次の一体が間へ割って入り、さらに横から別の一体が食らいついた。


左手に盾を構えた屍将軍が武蔵たちへ向きを変えようとするたび、摩天狼が飛び込み、前へ出ようとする巨体を押し返した。


晴明は絶えず摩天狼へ視線を送り、二体を前へ出させないよう操り続けていた。


武蔵の太刀が若雷の四刀を押し上げ、その刹那、小次郎の刃が横から走り、若雷は身を沈めてかわすが、着地した先へ武蔵が間合いを詰めていた。


武蔵の太刀が若雷の肩口を深く斬り裂き、小次郎の刃が脇腹をかすめる。


「入った!」


しかし、裂けた傷口から黒い瘴気が噴き出すと、開いた肉はみるみる閉じていく。


「ちっ、瘴気が傷を塞いでやがる!」


「くっ!」


四刀を交差させて受け止め、火花が弾けた。


押し返した力へ小次郎の刃が重なり、若雷の体がわずかによろめいた。


武蔵はその隙を逃さずさらに踏み込み、小次郎も半歩遅れて横へ回る。


四刀は二人をさばくため大きく左右へ開いたその一瞬、ワイチが地面を蹴った。


武蔵は若雷へ太刀を振り抜き、小次郎も間髪入れず刃を重ねた。


若雷は四刀で応じ、その攻防に意識を奪われた一瞬の隙を縫うように、ワイチは若雷との距離を一気に詰めた。


ワイチは筒付きの霊杭を右手に握り締めたまま、若雷の懐へ飛び込んだ。


「邪魔だぁっ!」


四刀が唸りを上げ、ワイチへ斬りかかる。


ガギィィィンッ!!


武蔵の太刀が四刀を真正面から受け止め、弾けた火花の脇を小次郎の刃が駆け抜ける。


若雷は四刀を返して小次郎を払うが、その返した刀へ武蔵が踏み込み、押し返そうとした力へさらに小次郎の刃が重なった。


武蔵を止めれば小次郎が斬り込み、小次郎を払えば武蔵が押し込む。


二人の猛攻に若雷は四刀を休ませる暇もなく応じ続け、ワイチへ意識を向ける余裕を失っていた。


ワイチは若雷の右腰へ筒をしっかりと押し当てた。


ガンッ!!


「いけー!」


金槌の衝撃で霊杭が筒の中を走り、右腰へ深く打ち込まれた。


「ぐああぁっ!」


若雷は腰へ走った激痛に顔を歪めながら右腰へ手をやり、霊杭を力任せに引き抜いた。


「いてぇ、こんなものぉっ!」


引き抜いた霊杭を投げ捨てた。


「きゅうすけ、燃やせ!」


「ここはおいらの出番だ!」


きゅうすけの口から噴き出した炎が右腰を包み込んだ。


ボォォォッ!!


「ぎゃあああぁぁぁっ!」


焼けつく炎に若雷は絶叫し、腰を押さえたまま大きく身を折った。


「ワイチ、あとは任せた!」


武蔵は若雷との間合いを切ると、八本腕の屍将軍へ駆け出した。


「こちらは僕たちが引き受けます!」


小次郎も左手に盾を構えた屍将軍へ斬りかかった。


晴明が操る摩天狼は二体へ飛びつき、武蔵と小次郎を追おうとする屍将軍へ牙を立てながら足止めを続けた。


ワイチは二本目の筒付きの霊杭を左腰へ当てた。


「もう一本!」


ガンッ!!


再び金槌が振り下ろされ、霊杭が左腰へ深く打ち込まれる。


「ぐああぁぁっ!」


ワイチは金槌を放り捨てると若雷の背後へ回り込み、左腰へ打ち込まれた筒付きの霊杭へ両手を添え、そのまま霊出を施した。


「瘴気よ、出ろー!」


次の瞬間、左腰の筒から黒い瘴気が勢いよく噴き上がった。


「きゅうすけ、こっちも燃やせ!」


「全部焼き尽くす!」


きゅうすけの炎が噴き出した瘴気を包み込んだ。


ゴォォォォッ!!


「やめろぉぉぉっ!! 熱い! やめろぉぉぉっ!!」


瘴気を焼かれた若雷は絶叫しながら地面をのたうち回る。


「その袋は、おいらがもらった!」


しん吉は若雷の腰から袋をひったくると、大きく飛び退いた。


「取ったぞ!」


袋を抱えたしん吉は仲間のもとへ駆け戻った。


炎はなおも瘴気を焼き続け、若雷の絶叫は戦場へ響き渡っていた。


しん吉が復活の雫の袋を抱えて戦場を離れた途端、若雷は左腰から噴き上がる瘴気を炎に焼かれながら地面を転げ回った。


「返せぇぇぇっ! それは僕のだぁぁぁっ!」


「もう屍将軍は復活できません!」


ワイチの声が戦場を突き抜けると、小次郎は八本腕の屍将軍へ向かって駆け出した。


八本の刀が四方八方から舞い襲い、小次郎の全身を一斉に切り刻もうとするが、武蔵の太刀が右から迫る三本を弾き上げ、そのまま正面の二本を受け止める間に、小次郎は左から交差する三本の下へ身を沈めながら巨体の懐へ潜り込んだ。


「瞬燕流・奥義――」


低く構えられた刃へ白い光が集まり、地面すれすれから螺旋を描いて一気に駆け上がる。


「飛燕一閃!!」


ズバァァァァッ!!


斬撃は八本腕の屍将軍の腹を深く抉り、胸から首へ螺旋状に切り裂きながら頭頂まで抜けた。


八本の刀が一斉に宙へ舞い、斬り上げられた巨体が大きく仰け反ると、全身から黒煙を噴き出しながら黒い結晶へ戻り、地面へ落ちる前に粉々に砕け散った。


残された盾の屍将軍は左手に残った盾を前へ突き出し、復活の雫を抱えて逃げるしん吉を追おうとする。


「百鬼夜行!」


五体の摩天狼が盾の屍将軍を中心に五つの方向へ散り、地面へ五芒星の頂点を刻むように位置を揃えた。


五体の摩天狼は五芒星を描く軌道で一斉に駆け始めた。


頂点から頂点へ走るたび、その中心を通過した牙と爪が盾の屍将軍を幾重にも切り裂く。


五本の軌跡は一瞬たりとも途切れることなく中心を貫き続け、盾の屍将軍は五芒星の檻へ閉じ込められたかのように削られていく。


牙が胸を抉った直後には爪が背を裂き、その傷へ別の牙が食い込み、五本の軌道が幾重にも交差しながら盾の屍将軍を中心から逃がさない。


五体の摩天狼が速度を増すほど地面には五芒星の軌跡が鮮明に浮かび上がり、無数の牙と爪が一つの塊となって屍将軍を削り続けた。


盾を構え直す暇もなく、左腕から金属片が飛び散った。


バギィィィンッ!!


残された盾が砕けた直後も五芒星の軌道は止まらず、五体の摩天狼が同じ中心を通過するたびに鎧が剥がれ、肉が抉られ、黒い瘴気が引き裂かれていく。


最後の一周で五本の軌跡が中心へ重なった瞬間、盾の屍将軍の巨体が内側から弾け、黒い結晶へ戻りながら五芒星の中央で粉々に砕け散った。


二体の屍将軍を失った若雷は、炎に焼かれていた左腰から黒煙を噴き上げながら四刀を地面へ突き立て、ふらつく体を無理やり起こした。


「殺す……お前ら全員、絶対に殺す!」


「小次郎、あれやるぞ!合わせろ!」


「わかった!ここで終わらせます!」


若雷が四刀を振り回しながら突進すると、武蔵と小次郎が左右へ分かれ、迫る刃を弾きながら同時に間合いを詰めていく。


小次郎が低く呟き、


「瞬燕流・奥義――」


小次郎の刃が地面すれすれから螺旋を描いて駆け上がる。


「飛燕一閃!!」


ズバァァァァッ!!


若雷の体は腹から胸、肩口へと螺旋状に斬り上げられ、その勢いのまま空中へ打ち上げられた。


武蔵は宙へ浮いた若雷を見据えながら二刀を交差させる。


「二刀流・終技――」


交差した二刀から巨大な十字の斬撃が膨れ上がる。


「天魔絶界斬!!」


空中へ打ち上げられた若雷へ、巨大な十字斬撃が正面から叩き込まれた。


「巌流――!!」


二人の声が重なる。


「断閃双燕斬!!」


ズガァァァァンッ!!


飛燕一閃の螺旋斬撃が若雷の体を空中へ押し上げ続け、その中心へ天魔絶界斬の巨大な十字斬撃が食い込み、二つの奥義が逃げ場のない一撃となって若雷を地面へ叩き落とした。


若雷の体は地面へ激突し、何度も跳ねながら土を深く抉って仰向けに倒れた。


胸には巨大な十字の傷が刻まれ、裂けた傷口から黒い瘴気と黒い血が勢いよく噴き出し続けた。


「手応えありだ。」

次回予告


阿国です。


みんな、ほんまに頼もしかったわ。


うちも、まだまだ負けてられまへん。


次回、第57話「黒き咆哮」。


ぜひ、見に来ておくれやす。


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