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世界を救ったのは剣豪でもなく陰陽師でもなく薬師?だったんですよ!  作者: 氣愛注入


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調査報告、そして東の洞窟



「今の……なんだったんだ?」


ワイチは、竜らしきものが飛んで行った方を見ていた。驚きと美しさに見惚れていた。


ふと我に返ると、皆も同じだった。


「あんなもん初めて見たな。」


空海の声が弾む。


「よくは見えなかったが青いのは見えたよ。そして美しかった」


小次郎も空を見とれて言った。


「あれも魔物なんでしょうか?かなり大きかったですが。」


ワイチが口にする。


「わからんが、あまり切りたくないのぉ。」


武蔵はぼそっと呟いた。


「また見たいものですね。」


晴明は去っていった方角から視線が離せない。


「まずは報告しないとですよ。」


ナリアが皆に声をかけた。


「そうですね、急いで戻りましょう!」


ワイチ達は街へ向かった。



宿屋で泊まって翌日、ハロルドのところへ向かった。


扉を開けると、ワイチは戦いで手に入れた黒い結晶と拾った小さな結晶を机の上へ並べた。


「牙兎と風切り蛇を倒した後に出てきました。そして別の場所には、こういう小さな黒い結晶が落ちていたんです。」


「最初はただの石だと思ったんです。ですが牙兎がそれを食べました。」


ハロルドが小さな結晶を摘まむ。


「食べた?」


「はい。食べてすぐじゃありません。でもしばらくしたら体が大きくなって、目つきまで変わったんです。別の牙兎まで襲っていました。」


ナリアが続ける。


「あの牙兎、仲間まで蹴り飛ばしていました。」


「風切り蛇も凶暴化していた。同種も殺していたぞ!」


武蔵が身振り手振りで説明した。


「普通ではなかったな。ただ、おかしくなった奴同士では戦ってなかった。」


空海も腕を組みながら言う。


「黒い結晶を食べた個体だけが生き残るように見えました。」


晴明が静かに付け加えた。


部屋にはペン先を走らせる音だけが響く。


ハロルドは何かを書き留めながら考え込んでいた。


「そうだ! もう一つ報告があります。」


ワイチが思い出したように声を上げる。


「東の街道から少し戻った場所で休んでいたら、青い影みたいなものを見たんです。龍みたいで、はっきり見えたわけじゃないんですが、とても綺麗でした。」


ハロルドの顔が勢いよく上がった。


「なんだと、青い影じゃと。それは本当か?」


「全員見ています。」


「龍に見えましたよ。」


小次郎が答える。


「本当に綺麗でした。」


ナリアも頷いた。


「速かったし、かなり大きかったな。」


空海も興奮気味に言う。


ハロルドは立ち上がり、壁際の地図を持ってきた。


机に広げると、東のある地点を指差す。


「この先だ。この先には洞窟があると言われている。」


「洞窟?」


「青龍の洞窟だ。そう呼ばれている。だが、誰も本当に見たことはない。そしてそこは聖域でもある。」


ハロルドは地図を見つめながら続けた。


「ただ、お前たちが見たものは伝承の青龍とは違うかもしれん。」


「違う? なんで?」


「伝承の青龍は百メートルを超えると言われているからだ。」


ワイチは目を丸くした。


「そんなに大きくはなかったですね。大きく見ても十メートルくらいでした。」


「なら別物だろうな。」


ハロルドは頷く。


「それより東の街道のさらに奥を調べてほしい。小さな黒い結晶があるなら回収しなければならん。あと青白い男だ。そいつも見つけたい。」


そして指を突き付けるようにして念を押した。


「絶対に洞窟へ入るなよ。聖域だからな。本当に入るな。」



翌朝、一行は再び東へ向かった。


牙兎を倒した場所を越え、さらに奥へ進む。


しかし黒い結晶は見つからない。


青白い男の痕跡もない。


「昨日はあれだけ見つかったのに、今日は何もありませんね。」


ナリアが辺りを見回した。


「隠したか、撒く場所を変えたか。」


武蔵が答える。


「どちらにしても自然に落ちているものではなさそうですね。」


晴明も周囲へ目を配った。


さらに奥へ進むと、血の匂いが鼻を突いた。


「……あれ。」


ワイチが指差すと、草むらの先に剣虎が倒れていた。


腹が食い破られ、周囲には骨と黒い欠片が散らばっていた。


ワイチは欠片を拾い上げると、黒い結晶だった。


「仲間を食ったのか……?」


低い唸り声が響き、森の奥から剣虎が現れた。


さらにもう一体、反対側からももう一体。


三体とも口元が赤く染まっていた。


突然、三体が同時に襲いかかってきた!


シャキーン


その前を銀色が駆け抜けていった!


「飛燕」


小次郎の声と同時に、三体の剣虎が地面へ転がった。


ワイチは目を見開く。


「すご……何をした? 全然見えなかった。」


小次郎は刀を納めながら、


「飛燕、私の剣技の一だ。」


晴明が剣虎の腹を裂くと、黒い結晶が出てきた。


空海が拾い上げて、


「こいつらも食ったんだな……。」


嫌な予感が膨らんでいく。


武蔵はそのまま先へ進んだ。


木々がまばらになり、足元の土は岩混じりへ変わっていった。


「なんか景色が変わってきましたね。」


ナリアが辺りを見回した。


「東の奥なんて誰も来ないからな。」


空海が汗を拭きながら答えた。


さらに進むと、森が途切れて、明るくなった。


ワイチは思わず足を止めた。


「でか……。」


目の前には巨大な岩壁がそびえていた。


上を見上げても終わりが見えない。


「山じゃないのか?」


空海が声を漏らす。


「違います。あれを見て、」


晴明が前を指した。


岩壁の中央に、黒い穴が口を開けている。


「洞窟だよな……?」


ワイチが呟く。


「おいおい……洞窟って、まさか。」


空海が目を丸くした。


一行は洞窟の前まで歩いていくと、入口の奥は闇に包まれていた。


風が吹き抜けた。


洞窟の奥から流れてくる冷たい風だった。


皆、洞窟の闇を見ていた。


次回予告


小次郎です。


私の秘剣、飛燕。


どうでしたか?


少しは皆さんのお役に立てたなら嬉しいですね。


ですが、問題はまだ終わっていません。


次回、『青龍の洞窟』

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