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世界を救ったのは剣豪でもなく陰陽師でもなく薬師?だったんですよ!  作者: 氣愛注入


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俺たちができること

ナリアの声が、治療院の中に強く響いた。


ハロルドは険しい顔になり、


「駄目だ。相手は毒棘竜だぞ。」


「硬い、速い、凶暴で、討伐した記録もほとんど無く、弱点すら分かっていないんだ!」


「これ以上、怪我人や死人を出すわけにはいかないんだよ!」


ハロルドは背を向けて、


「街へ戻って兵を集めて、討伐隊の準備も進めないといけない。」


「とにかく、お前たちは安全なところにいてくれ。」


ナリアは悲しそうに頷いた。


「急いで戻らないといけない。皆、気をつけろよ。」


そう言い残し、ハロルドは治療院を出て行った。


扉が閉まる音だけが残った。


ワイチはナリアに声をかける。


「ナリアさん、どうしてそこまで参加したいんですか?」


ナリアはしばらく黙っていた。


やがて重い口を開く。


「私は昔、冒険者でした。」


「親友夫婦と三人で組んでいたんです。」


「私の住んでいたアーレ村は、ここから少し離れた場所にある小さな村でした。」


「景色も綺麗で、とても住みやすい村だったんです。」


「そこに突然、毒棘竜が現れたんです。」


ナリアの声が少し震えた。


「家は潰され、逃げ遅れた人も立ち向かった人も、親友夫婦も、みんな殺されました。」


誰も口を挟まなかった。


「あの時、生き残ったのは子供たちだけでした。」


「今いるあの子たちです。アーレ村の生存者なんです。」


「私が全員引き取りました。今は十人ほどいます。」


持っていた包帯を強く握りしめた。


「だから、私は放っておけないんです。」


重苦しい空気の中、ワイチがそっと話し始めた。


「そんな話を聞いてしまったら、もう関係ないとは言えないな。」


武蔵も小次郎も何も言わなかった。


その時だった。


奥の部屋から子供が飛び込んできた。


「ナリア姉ちゃん!大変だよ!」


「どうしたの!?」


「レオンがいないよ!」


ナリアの顔色が変わった。


「いつから!?」


「わかんない!」


「さっきまでいたの!」


奥の部屋から子供たちの声が聞こえる。


「レオン! レオン!」


必死に名前を呼んでいた。


女の子は困った顔で続けた。


「レオン、木の棒を持ってたの!」


ワイチに嫌な予感がした。


毒棘竜の話を、さっきまでしていた。


まさか――レオンは……。


「探すぞ。」


武蔵が立ち上がった。


「待ってください。」


ワイチが武蔵を引き留めた。


「何だ。」


「無策で飛び込んだら前回と同じになります。」


「その前に、ちょっと分かったことがあるんです。」


「何だ?」


「毒棘竜の攻撃です。」


全員の視線がワイチへ向く。


「僕には気の流れや血の流れ、水分の流れみたいなものが見えるんです。」


「前回の戦いで気付いたんです。毒棘竜がブレスを吐く前、その流れが変わっていました。尻尾で攻撃する前もです。」


「つまり?」


「次は分かると思うんです。ブレスが来る、尻尾が来る、その前に皆さんへ伝えることができるんです。だからもっと早く動けるはずです。」


「何でそれを早く言わねえ。」


「すみません。」


「でも、それだけじゃ勝てません。だから皆さんに何ができるのか教えてほしいんです。」


武蔵は鼻息を荒くした。


「俺は前に出て斬るのみ。」


「私は速さですね。」


小次郎は欠けた刀を見せながら続けた。


「ただ、あの硬さは厄介です。この刀でも欠けましたから。」


晴明は、懐から紙を取り出して前に投げると、三体の魔狼が晴明の前へ現れる。


「妖術と式神です。今は魔狼を三体出せます。」


「私は楽器ね。鼓で属性を強くできるし、笛なら味方を強くできる。琵琶なら相手を弱らせることもできるわ。」


「曲によって変わるけど、速さを上げたり、力を上げたり、逆に相手の力を落としたりもできるの。」


空海が数珠を鳴らす。


「わしは結界じゃな。回復もできるし、毒や痺れにも少しは対応できる。ただ、回復量はポーションよりはあるが、ハイポーションほどではないの。」


ナリアの手に淡い光が灯る。


「私は回復と状態異常解除です。継続回復もできます。」


ワイチは頷いた。


「ありがとうございます。」


「前回、一番最初に来たのは毒の火炎でしたよね。」


「そうだ。」


「だから最初に阿国さんの笛で全員の速度を上げてください。その直後に空海さんが結界を張る。結界だけに頼るんじゃなくて、避けることも前提です。」


「もし結界が破られても、ナリアさんの回復と状態異常解除があります。継続回復も先にかけてもらえると助かります。」


「分かりました。」


「次に危険なのは尻尾です。」


「晴明さん。魔狼で注意を散らせませんか?」


「可能です。」


「お願いします。その間に小次郎さんは目を狙ってください。」


「目ですか?」


「はい。見えなくなれば暴れるはずです。」


「面白いですね。」


「そして武蔵さん。その時に足を狙ってください。」


「切るのか?」


「切れなくてもいいです。体勢を崩してください。」


「なるほどな。」


「あと、これは確証がありません。」


「何だ?」


「お腹です。」


「腹?」


「犬も猫もお腹は守りますよね。切腹もお腹です。だから、もしかしたら毒棘竜もお腹が弱点なんじゃないかと思うんです。」


「確かに腹は急所だ。」


「ただ、これはまだ分かりません。実際に毒棘竜を見た時に確認します。」


「もし予想通りなら、体勢が崩れてお腹が見えた瞬間が最大のチャンスです。その時は迷わず攻撃してください。」


「外れてるかもしれません。でも、今ある情報の中ではこれしか思いつかないんです。」


「理にはかなっています。」


「面白くなってきたじゃない♪」


「やるだけやってみる価値はありそうじゃな。」


ナリアは強く頷いた。


「ありがとうございます。」


武蔵がニヤリと笑う。


「お前。」


「はい?」


「そこまで見えていたのか。」


「見えてました。だけど何が見えていたか、わからなくて、晴明に説明されて。」


「なるほどな!」


「異論ある奴はいるか?」


誰も答えない。


「よし。」


「話はまとまった。」


「レオンを探しに行くぞ。」


全員が治療院を飛び出した。


森へ続く道を風を切るように走る!


晴明の魔狼が先頭を走って匂いを追っている。


「見つかるか?」


武蔵が聞いた。


「魔狼は、子供の匂いは拾っていますから大丈夫!」


魔狼は深い森へと入っていく。


草が踏み潰され、小さな足跡に折れた枝。

子供一人が通った跡だった。


「レオン……。」


ナリアの足が速くなる。


さらに奥へ進むと、突然、先頭の魔狼が立ち止まった。


「近いです。」


その先には草木が黒ずみ、地面には深い爪痕、木の幹にも大きく抉られた跡が残っていた。


武蔵が二本の刀に手を添える。


「いるな。」


森の奥から、グシャリ、バキリと何かを噛み砕く音が聞こえきた!


全員が足を止めて、音のする方を見ると――


木々の隙間にレオンを見つけた!

木の棒を握っているが動けない様子。

目の前にいる奴から目を離せずにいたのだった。


やはり、毒棘竜だった!


巨大な口が開き、ツノネズミを丸呑みすると骨が砕ける音が森に響いていた。


レオンの顔が青ざめ、腰が抜けて動けないようだ。


毒棘竜の黄色い瞳がゆっくり動き、レオンを捉えた。


シャァァァ……


低い威嚇音に、レオンは尻もちをついたまま後ずさりし、木の棒を震わせている。


その時、小次郎が飛び出した。


「レオン、こっちです!」


毒棘竜の視線が向くより早く、レオンの脇へ滑り込んだ。


レオンの腕を掴むと、そのまま地面を転がった。


毒棘竜の黄色い瞳が小次郎を追う。


ワイチは毒棘竜を観察し始めた!

気の流れ、血の流れ、そして潤水の流れを。前回は見えていなかったものが、今回はハッキリ見える!


あれ?


腹の辺りだけ青い流れが集まっているぞ!

背中にもなく、足にもなく、首にもない。


なのに腹だけ潤水が集まっている。


なぜだ?もしかして、毒の火炎を吐くから体を冷やしているのではないのかな?!


だが、もしそうなら――。


「作戦通りに行こう。」


次回予告


阿国です♪


役目は決まりました。


あとは本番ですね♪


私は今回、皆さんを速くします♪


次回、『それぞれの役目、作戦開始』

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