ワイチの力
「それで……俺には何が見えてるんですか?」
「まず、ワイチ殿が見ているという白い流れです。私は見えていません。ですが、おそらく気ではないかと思います。」
「気?」
「ええ。生きるための力です。」
ワイチは白い流れを見る。確かに全身を巡っていた。
「赤なのは、多分、血でしょう。」
「じゃあ青は?」
「最初は水分かと思いました。ですが、それでは曖昧です。」
「体の中を巡る水、循環する水。ですから潤水と呼びましょう。」
「潤水……」
青い流れも絶えず流れている。
「もう一つあります。」
晴明は火を灯した。(火)
風が吹く。(風)
土が盛り上がる。(土)
水が現れる。(水)
青白い光が走る。(雷)
「私が扱う五属性です。ワイチ殿は、これも見ている可能性があります。」
ワイチは少し考えた。
あの巨大なトカゲ。
口の中に何かが集まっていた。
ただ、あの時は白い流れしか見えなかった。
属性なら色付きで見えるのだろうか。
「では、戻りましょう。皆さんが待っています。」
治療院に戻ると、扉の向こうから子供たちの声が聞こえてきた。
「ナリア先生!終わったよ!」「これも持っていく!」
けたたましい音と共に扉が開き、薬草を運ぶ子もいれば包帯を抱える子もいて、机を拭く子など、ナリアの周りには子供たちが集まっていた。
「ありがとうね。そちらへ置いてください。慌てなくて大丈夫ですよ。」
子供たちの元気な返事が響く。
「今、戻りました。皆さんはどこにいるんですか?」
「奥だ。」
武蔵の声が返ってくる。
「おっ、戻ってきたか。」
空海が手を上げた。
「どこ行ってた。」
「少し話をしてました。」
「そうか。」
部屋の空気が少し止まる。
小次郎が武蔵の脇腹を肘で小突いた。
「いてぇな。」
「言うことあるだろ。」
「……悪かった。言い過ぎた。そこは謝る。」
ワイチは黙っていた。
「でもな。次は死ぬと思った。回復が足りねぇ。それは今も思ってる。」
「俺もそう思いました。ポーションだけじゃ足りないです。」
「だろ。だから回復役が必要だ。だが、それを考えるのは俺の仕事じゃねぇ。俺は前で戦うだけだ。」
「武蔵殿の言葉にも一理あります。」
晴明が話を引き継ぐ。
「ワイチ殿も理解しています。ですが、今回一つ分かったことがあります。」
「分かったこと?」
「ワイチ殿は回復を得意としていません。ですが、それ以上に価値のある力を持っています。」
「価値のある力?」
「私は今回、その力に助けられました。戦い方そのものを変える力です。」
コンコン――
「失礼します。」
「おや、皆さん揃っていましたか。」
ハロルドが神妙な顔で部屋へ入ってきた。
「ワイチさん、もう傷は大丈夫なんですか?」
「ええ、なんとか。」
「それは良かった。今回は本当に大変でしたね。正直、生きて戻ってきたと聞いた時は驚きましたよ。」
「そんなに危険だったのか?」
「ええ、あなた方が戦った相手ですが、おそらく毒棘竜でしょう。」
「毒棘竜?」
「森では毒の悪魔とも呼ばれています。討伐隊も何度か出ていますが、倒せていません。追い払うのが限界でした。」
部屋がハロルドの言葉で凍り付く。
「今、この街は警戒態勢に入っています。周辺の住民にも注意を呼びかけています。森へ近付かないよう知らせているところですが、本来なら街の近くに現れる相手ではありません。」
「なぜ現れたのか。私も大変驚いているのですよ。」
ガシャン――
皆が振り返ると、床には包帯と薬が散らばり、その先でナリアが驚いた表情のまま立ち尽くしていた。
「それは……本当ですか?毒棘竜だったんですか?」
「間違いありません。草木が枯れた跡と足跡が残っていましたからね。」
ナリアは歯を食いしばる。
「お願いします。私も参加させてください。」
次回予告
ワイチです。
俺たちは一度、毒棘竜に負けています。
正直、あんな強い奴に勝てる気がしません。
でも、このまま放っておくこともできません。
このままじゃ勝てない。
だから知りたいんです。
みんなに何ができるのか。
どんな力を持っているのか。
それが、あいつを倒すヒントになるかもしれません。
次回、俺たちができること




