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世界を救ったのは剣豪でもなく陰陽師でもなく薬師?だったんですよ!  作者: 氣愛注入


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崩れ去る野望

彌玖慈砲から放たれたアクシズが、火雷の城を守る屍兵の大軍、その真ん中へ着弾した。


地面を揺らす轟音とともにアクシズが砕け、染み込んでいた霊水の力が青い浄化の霊気となって一気に広がった。


「な、なんだこれは!?」


青い霊気が地面を這い、屍兵たちの足元を次々と呑み込んでいった。


霊気に触れた屍兵の身体から黒い瘴気が噴き出し、その姿が崩れるように消え始めた。


「ぎゃあああああっ!」


「身体が、消える!」


着弾地点から広がった浄化の霊気は止まらず、逃げようとする屍兵たちを次々と包み込んでいった。


一体、また一体と屍兵が消え、その勢いは止まらなかった。


城門へ殺到した屍兵も、武器を捨てて逃げ出した屍兵も、青い霊気に包まれたところから黒い瘴気を噴き上げ、その姿を失っていった。


やがて城を埋め尽くしていた屍兵たちは跡形もなく消え去り、火雷の城から怒号も足音も消えた。


残ったのは、風が城壁を抜ける音だけだった。


「ん?なんか妙に静かですね。……何かあったのかしら。佐助、外を見てきなさい、そして報告しなさい」


「やっぱり俺かい?!へいへい、見てきますよ」


佐助は城外へ向かった。


その頃、彌玖慈砲の周囲では、アクシズの着弾地点から広がった青い浄化の霊気が、最後まで残っていた屍兵を包み込んだ。黒い瘴気が身体から噴き出し、その姿が青い霊気の中へ消えていった。


「おー!やったぞ!」


歓声が一気に上がった。


「成功したぞー!」


「あんなにいた屍兵が全部消えたぞ!」


喜びの声が次々と重なった、その瞬間――


ドゴォォォォン!!


工場の壁が内側から吹き飛び、砕けた石と木片が激しく飛び散る中、土煙とともに正宗の身体が弾き出され、地面へ激しく叩きつけられたまま勢いよく転がり、ワイチの足元で止まった。


「ま、正宗さん!どうしたんですか?しっかりしてください、何があったんですか!」


「ワイチさん!大変です。とにかく、こちらへ来てください!」


ナリアのそばでは武蔵が火傷を負って倒れ、治療を受けていた。


「武蔵さん、そのまま動かないでください!」


「む、武蔵さんまで、どうしたんですか?」


「くそっ……あいつ、とんでもねえぞ……」


ガツン、ガツン


静まり返った工場の奥から鈍い音が響き、土煙が揺れた。


そこから槍の穂先が煙を突き抜け、その後ろから鎧を着たオーディンがゆっくりと現れた。


「オ、オーディン?!正宗さんと武蔵さんを、こいつが……!」


オーディンは瓦礫を踏み越え、ワイチと晴明へ迫った。


「貴様ら、死ぬ準備はできているか?すぐには殺さない、じっくり痛ぶって、苦しみを味わわせてやる」


槍が振り上げられた。


「ワイチさん、危ない!」


オーディンがワイチへ向けて槍を振り下ろしたが、ワイチは間一髪で身をかわした。


槍の穂先が地面へ突き刺さり、土と石片が激しく跳ね上がり、その拍子にワイチが持っていた杭が地面へ散らばった。


オーディンはすぐに槍を引き抜き、逃れたワイチを追うように横薙ぎに振り抜いた。


ガキィン!!


小次郎が二人の間へ割って入り、刀で槍を受け流した。


「ワイチさん、ここは私が引き受けます、下がっていてください!」


オーディンが小次郎へ槍を突き出し、小次郎が刀で穂先を弾くと、そのまま横薙ぎに振り回された槍を受け流して斬り込んだ。


オーディンは槍の柄で刀を受け止め、返す穂先を小次郎へ突き出した。


ガキィン!ガキィン!!


小次郎が槍を弾きながら間合いを詰め、二体の酒呑童子も左右からオーディンへ迫った。


一体が腕をつかもうとしたところへ槍の柄が叩きつけられ、もう一体も横薙ぎの一撃に阻まれた。


「二体の酒呑童子を出したままでは、これ以上術は使えません、小次郎さん、何とか奴を引きつけてください!」


「何かあるんですか?こいつはかなりしんどいんですよ!」


小次郎が一気に踏み込み、突き出された槍を刀で弾いて胴へ斬り込んだ。


刃が鎧に当たって火花が散り、直後に返された槍の柄を刀で受け止めると、その身体が大きく押し戻された。


オーディンは間を与えず槍を突き出し、小次郎もその攻撃をかわしながら斬撃を重ね、二体の酒呑童子も何度も左右から腕や身体をつかもうとしたが、オーディンは槍を振るって三人を寄せつけなかった。


晴明の鼻から血が流れ落ちた。


「晴明さん!鼻血が出てます、もう限界なんじゃないですか!」


「酒呑童子を二体維持するだけで精一杯です、ですが、ここで消すわけにはいきません……」


小次郎が再びオーディンの正面へ飛び込み、振り下ろされた槍を受け流した。


二体の酒呑童子が左右から同時に迫ったが、オーディンは力任せに振りほどき、槍を大きく振り回した。


そのとき、晴明はワイチが槍を避けた場所に散らばっていた杭に気づいた。


「……あれなら!」


「一体は後ろから押さえてください、もう一体は杭を拾って両膝と肘の内側へ!」


小次郎が正面から斬り込み、オーディンが槍で刀を受け止めた瞬間、一体の酒呑童子が背後へ回り込んで羽交い締めにした。


もう一体の酒呑童子が地面の杭を拾い、思いっきり打ち込んだ!


「右膝の裏」


「左膝の裏」


オーディンの両膝が崩れると同時に、槍を持っていない腕の籠手の隙間から肘の内側へ打ち込んだ。


「ぐああっ!」


オーディンの両膝と片腕から力が抜けた直後、


「邪魔だー!」


炎が背後の酒呑童子を包み、その身体が焼かれて消えた。


残った酒呑童子はすでに四本目の杭を握り、槍を持つ腕の肘へ打ち込もうと飛び込んだ瞬間、


「させるか!」


オーディンが残された腕で槍を突き出し、その穂先が酒呑童子の身体を貫き、酒呑童子が消え、四本目の杭が地面へ落ちた。


オーディンが酒呑童子を見ながら槍を突いたと同時に、


「瞬燕流――飛燕!」


その瞬間、オーディンが見ていた景色が回った。


小次郎の刃がオーディンの首を斬り抜き、その頭が胴体から離れて宙へ舞ったが、オーディン自身は斬られたことに気づいていなかった。


宙を舞うオーディンの目に、両膝をついて倒れていく自分の身体が映っていた。


次回予告


小次郎です。


オーディンは倒しました、そして火雷が誇った屍軍団も、彌玖慈砲によって消え去りました。


ですが、これで終わったわけではありません。


すべてを知った火雷が、黙っているはずがありませんからね。


次回、第116話「烈火の怒り」。


いよいよ火雷との戦いが始まりそうですね。

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