炎の騎士アポロン
「姉上、どこへ行ったんだ……」
アルテミスの姿を捜し、アポロンは城内を回っていた。
火の七日間を目前に控えた中、何も告げずにアルテミスが姿を消したことが気になっていた。
部屋にも訓練場にもおらず、アポロンは武器工場へ向かった。
その頃、武蔵たちは天国たちの待つ工場へ戻るため、人目を避けながら城内を進んでいた。
「このまま工場まで行けりゃいいんだがな」
「アルテミスのことが知られる前に戻りたいところですね」
工場へ続く通路へ入り、角を曲がろうとしたところで向こうから足音が聞こえた。
武蔵たちは手前の物陰へ身を隠し、一人の屍兵が通り過ぎるのを待った。
「ここから先はさらに気をつけた方がよさそうですね」
再び工場へ向かい、通路を抜けた先にある扉へ近づいた、その時、扉が開いた。
中から1番出会いたくない男と武蔵たちが鉢合わせた。
「……人間!」
それは、火雷の息子、アポロンだった。
「侵入者だな!」
アポロンが剣を抜くと、刀身を炎が包み込んだ。
「見つかっちまったか!」
「ここまで入り込んで、ただで帰れると思うな!」
アポロンが斬りかかり、小次郎が刀で受け止めた。
ガキィィン!!
炎をまとった剣と刀が激突し、火花と炎が飛び散り、アポロンはそのまま剣を押し込み、小次郎が刃を滑らせて受け流すと、すぐに横薙ぎの剣が返ってきた。
ガンッ!!
小次郎が刀で受け止めた。
「随分と問答無用ですね」
「侵入者と話すことなどない!」
アポロンが剣を振り下ろし、小次郎が受け流して胴へ斬り返した。
キィンッ!!
アポロンも炎の剣で受け止め、続けて斬撃を放った。
キンッ!ガンッ!ギィンッ!!
二人の刃が次々とぶつかり、炎と火花が周囲へ散る中、アポロンが放った横薙ぎの一撃を小次郎が受け止め、二本の刃が噛み合った。
「邪魔だ!」
アポロンは鍔迫り合いのまま空いている左手を小次郎へ向け、掌から炎を噴き出した。
ゴオッ!!
小次郎は剣を弾いて炎をかわしたが、アポロンはすぐさま踏み込み、炎をまとった剣を振り下ろした。
ギィンッ!!
小次郎が刀で受け流して斬り返し、アポロンも剣で弾いた。
「剣だけではないのですね」
「俺の炎はこんなものじゃない!」
再びアポロンが斬り込み、小次郎も刀を合わせた。
ガギィィン!!
二本の刃が噛み合い、アポロンは小次郎を押し込みながら、空いている左手の指先へ炎を集めた。
小次郎が鍔迫り合いを解くと、炎が撃ち出された。
ゴオッ!!
炎が通路を走り、小次郎はその脇へ逃れた。
アポロンが追撃しようとした時、ナリアの持っていた弓に気づいた。
「……待て、その弓は姉上のものだ。なぜお前が持っている!」
「これは…拾ったものです」
「どこで拾った!」
「ここへ来る途中です」
「嘘をつけ!姉上があの弓を手放すはずがない!」
「落ちていたものを拾っただけです、それ以上のことは知りません」
「姉上はどこにもいない……そこへ侵入者が現れて、姉上の弓を持っている。偶然で済むと思うか!」
「何を言われても、私たちには分かりません」
「姉上に何をした!」
アポロンの剣を包む炎が大きく膨れ上がった。
ゴオオオオッ!!
「答えろぉぉぉ!!」
アポロンが小次郎へ斬り込み、炎の剣を振り下ろした。
ガギィィィン!!
小次郎が刀で受け止めると、激突した刃から炎が一気に噴き上がった。
「先ほどまでとは違いますね」
「姉上のことを吐くまで、誰一人ここから出さんぞ!」
アポロンは剣を押し込みながら左手から炎を放ち、小次郎は鍔迫り合いを解いてかわし、そのまま斬り返した。
キィンッ!!
アポロンが炎の剣で弾き、横薙ぎの一撃を返した。
ガンッ!!
小次郎の刀が受け止め、そこから二人の剣が激しく交差した。
キンッ!ギィンッ!ガンッ!!
アポロンが炎の剣を振るい、小次郎が受け流して斬り返した。刃がぶつかるたびに炎と火花が飛び散り、激しい剣戟が続いた。
「ちょこまかと……!」
アポロンが横薙ぎに剣を振り抜くと、小次郎は刃をかわして懐へ入り込んだ。
「瞬燕流――飛燕!」
飛燕がアポロンの胴を斬り裂いた。
ザシュッ!!
「ぐっ!」
アポロンは炎の剣を大きく振り回して小次郎を退かせると、そのまま剣を床へ叩きつけた。
ドゴォォン!!
炎が一気に広がり、武蔵たちへ襲いかかった。
「絶界!!」
空海が絶界を張り、押し寄せた炎を受け止めた。
ゴオオオオオッ!!
炎が絶界を覆い尽くし、激しい勢いで燃え上がった。
「そんなもので俺の炎を止められると思うな!」
アポロンが剣を振り抜くと、さらに巨大な炎が絶界へ叩きつけられた。
ドゴォォォン!!
絶界が大きく揺れた。
「このままでは破られます!」
ナリアがリカバリーベルを鳴らし、澄んだ音色が広がった。
小次郎の傷が癒えていく中、阿国が尺八を構えた。
「そんなに熱くなってたら、嫌われちゃうわよ♪」
尺八の音色が響き渡り、アポロンを包む炎の勢いが弱まった。
「俺の炎が……!」
「少し頭を冷やした方がいいんじゃない♪」
火属性を下げられたことで炎の温度が落ち、絶界を焼いていた勢いも弱まっていった。
「ふざけるな!」
アポロンが剣を振り抜き、阿国へ炎を放った。
ゴオッ!!
「阿国、危ねえ!奥へ避けろ!」
村正宗が玄武の盾を出し、阿国へ迫った炎を受け止めた。
ドゴォン!!
炎が盾へ直撃して左右へ弾け、その間に阿国が後方へ下がった。
「狙うならこっちを狙いやがれ!」
「邪魔をするな!」
アポロンが村正宗へ炎の剣を向けたところへ、小次郎が斬り込んだ。
キィンッ!!
アポロンが炎の剣で受け止め、小次郎は続けて斬撃を放った。
ガンッ!ギィンッ!!
アポロンは剣で弾き返すと、左手を小次郎へ向けて炎を放ったが、その勢いは先ほどよりも落ちていた。
「効いてるみたいね♪」
「黙れ!」
アポロンが再び阿国を狙おうとしたところへ、小次郎が斬り込んだ。
ザンッ!!
アポロンは炎の剣で受けたが、小次郎の一撃に押し返された。
「彼女を狙わせるわけにはいきません!」
「どいつもこいつも……!」
アポロンの身体から炎が噴き上がった。
ゴオオオオッ!!
阿国の尺八が響く中、弱まっていた炎が再び勢いを増した。
「あら……また熱くなってきたわね♪」
「姉上に何をしたのか吐くまで、俺の炎は止まらねえ!」
アポロンが炎の剣を振り抜くと、いくつもの火球が武蔵たちへ飛んだ。
「散れ!まとまってたら狙い撃ちにされるぞ!」
武蔵たちが散開し、火球が次々と床や壁へ炸裂した。
ドンッ!ドゴォン!!
小次郎が横からアポロンへ斬り込んだが、アポロンは炎の剣で受け流し、左手から火球を撃ち返した。
ゴオッ!!
小次郎が身をかわした先へアポロンが剣を振り抜き、炎が弧を描いて追いかけた。
「絶界!」
空海の絶界が小次郎の前に広がり、炎が激突した。
ドゴォォン!!
「同じものが何度も通じると思うな!」
アポロンが左手を突き出し、炎を一点へ集中させた。
ゴオオオオッ!!
絶界が激しく揺れ、炎が一点を焼き続けた。
バキッ!
亀裂が走った直後、アポロンが炎の剣を叩き込んだ。
バキィィン!!
絶界が砕けた。
「ワシの絶界を破りおったか!」
アポロンが小次郎へ迫ろうとしたところへ、武蔵が横から斬り込んだ。
ガキィィン!!
「こっちにもいるぜ!」
武蔵が太刀を押し込み、アポロンが炎の剣で弾き返したところへ、小次郎が反対側から斬り込んだ。
キィンッ!!
アポロンは身体をひねってかわし、二人まとめて薙ぎ払うように炎の剣を振り抜いた。
ゴオオオッ!!
武蔵と小次郎が炎から離れると、アポロンは追わず、ナリアへ向きを変えた。
「姉上の弓を返せ!」
アポロンの左手から火球が放たれた。
「ナリア、そこから離れろ!」
村正宗が玄武の盾を火球へ向けた。
ドゴォン!!
火球が盾にぶつかって弾け、ナリアはその間に距離を取った。
「邪魔だ!」
アポロンが村正宗へ炎を放とうとしたところへ、阿国の尺八が強く響いた。
炎の勢いが落ちた。
「まだまだ下げるわよ♪」
「何度やっても無駄だ!」
アポロンの身体から炎が噴き上がった。
ゴオオオオオッ!!
熱気が一気に広がり、アポロンの足元から床が赤く変色し始めた。
ジュウウウウ……
「おい……床が溶け始めてんぞ」
武蔵の目の前で床が崩れ、赤く溶けた石がアポロンの足元へ広がっていった。
「火属性を下げ続けてるのに、どうしてここまで……♪」
「俺の炎を抑えられると思ったか!」
アポロンが左手を開くと、その掌から炎が噴き上がった。
ゴオオオオッ!!
噴き上がった炎が細長く伸び、一本の剣へ形を変えていった。
「炎で剣を作りやがったか……!」
右手には炎をまとった剣、左手には炎そのものから生み出された剣。
「姉上を奪った報い、その身で受けろ!」
アポロンが二本の剣を振り抜いた。
ゴオオオオオッ!!
左右から炎が広がり、武蔵と小次郎がそれぞれ別方向へかわした。
アポロンはそのまま武蔵へ右の剣を振り下ろし、武蔵が太刀で受け流したところへ左の炎の剣を突き出した。
「ちっ!」
武蔵が身を引くと、今度は背後から小次郎が斬り込んだ。
キィンッ!!
アポロンは右の剣で小次郎の刀を弾き、左の炎の剣を横薙ぎに振り抜いた。
小次郎がかわしたところへ、さらに右の剣が追いかけた。
ガンッ!!
刀で受け流した小次郎が斬り返そうとしたが、足元へ流れてきた熱で動きを止めた。
赤く溶けた床がさらに広がっていた。
「こいつは剣だけ見てる場合じゃねえぞ!」
「足場まで奪われ始めましたね」
アポロンは溶けた床の中央で二本の炎の剣を構えた。
「もっとだ……もっと燃えろ!」
ゴオオオオオオオッ!!
アポロンの全身から炎が噴き上がり、周囲の床がさらに赤く溶けていった。
「これじゃ近づけねえぞ!」
武蔵が間合いを測る中、アポロンが二本の炎の剣を振り抜いた。
ゴオオオオオッ!!
二方向から炎が広がり、武蔵と小次郎が左右へかわした。
「逃がすか!」
アポロンが左手の炎の剣を小次郎へ投げつけた。
ゴオオッ!!
小次郎が刀で軌道を逸らすと、炎の剣は壁へ突き刺さり、激しく燃え上がった。
その隙に武蔵がアポロンへ迫った。
「天魔流――天魔剛衝斬!!」
太刀と脇差が同時に炎の剣へ叩きつけられた。
ドガァァン!!
アポロンの右腕が大きく弾かれた。
「小次郎!右は俺が押さえる!左から斬り込め!」
「瞬燕流――飛燕返し!」
小次郎の刃が左からアポロンへ迫ったが、アポロンは全身から炎を爆発させた。
ゴオオオオッ!!
武蔵と小次郎が炎に押し戻された。
「何度来ても同じだ!近づいた奴から焼き殺してやる!」
アポロンの左手に再び炎が集まり、炎の剣が作り出された。
阿国の尺八が響き、炎の勢いがわずかに落ちた。
「これ以上は下げきれないわよ♪」
「阿国!少しでも下がりゃ十分だ!そのまま火の力を抑えてくれ!」
武蔵と小次郎が左右へ分かれてアポロンへ斬り込んだ。
アポロンは右の剣を武蔵へ、左の炎の剣を小次郎へ振るった。
ガキィン!!ギィン!!
武蔵と小次郎が同時に剣を受け流した。
「小次郎!両腕を外へ弾くぞ!合わせろ!」
武蔵が右の剣を太刀で押し上げ、小次郎も左の炎の剣を刀で弾き上げた。
ガギィィン!!
アポロンの両腕が左右へ開いた。
「晴明!今だ!左腕に水を叩き込め!」
晴明が印を結んだ。
「水術・蒼流波!!」
大量の水が一本の奔流となり、アポロンの左腕へ集中した。
ジュワァァァァァァァァ!!
極限まで熱せられていた腕へ水が触れた瞬間、凄まじい量の蒸気が噴き上がった。
ドゴォォォォン!!
爆発した蒸気がアポロンの左腕を吹き飛ばし、炎の剣も消し飛んだ。
「ぐあああああああっ!!」
アポロンが体勢を崩した。
「ここで決める!」
武蔵が太刀と脇差を振りかぶった。
二本の刀から凄まじい力が噴き上がった。
「終技――天魔剛界断!!」
太刀と脇差が振り抜かれ、巨大な十字の斬撃がアポロンへ飛んだ。
ズガァァァァァン!!
十字の斬撃がアポロンを正面から捉え、燃え上がる身体を斬り裂いた。
「ぐああああああっ!!」
アポロンの身体を包んでいた炎が大きく揺らぎ、右手の剣からも炎が消えていった。
「姉上……すまない……」
アポロンはそのまま崩れ落ちた。
全身から噴き上がっていた炎が消え、赤く溶けていた床だけが残った。
「危なかったな。あと少し長引いてたら、こっちが焼け死んでたぜ」
「それほどまでに、戦えば戦うほど熱を増していく相手だったということですね」
「もうしばらく炎は見たくないわね♪」
ナリアがリカバリーベルを鳴らし、武蔵たちの傷を癒していった。
次回予告
ワイチです。
敵さんが王都を滅ぼすために用意した、とんでもねえ大砲。
そこへ詰め込むのは、瘴気を固めて作られた粉露煮。
だったら全部ひっくり返して、こっちから撃ち返してやりますよ!
一万の屍兵を相手に、いよいよ火の七日間阻止作戦の本番です!
次回、第114話『唸れ大砲!忌まわしき記憶とともに』
さあ、派手にぶっ放しますか!




