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世界を救ったのは剣豪でもなく陰陽師でもなく薬師?だったんですよ!  作者: 氣愛注入


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火の七日間阻止計画開始

火雷の城への潜入を前に、小次郎は狐の里の者とともに三種の神器を取りに向かい、勾玉、剣、鏡を受け取ると、そのまま黄泉川へ向かった。


川岸へ着くと、持ってきた桶で黄泉川の水を汲み、小次郎は勾玉、剣、鏡を順番に水の中へ入れていった。


「これで本当に霊水になるのか?」


狐の里の男が桶を覗き込む中、最後に鏡を水へ浸すと、三種の神器から青い光が広がり、桶の中の水を包み込んだ。


青い光は次第に強くなり、桶から溢れるほどの輝きが川岸を青く照らす中、水の濁りが少しずつ消えていき、やがて底まで見通せるほど澄み切った水へと変わった。


「おお……すげえ、本当に水が綺麗になったぞ!」


狐の里の男が桶から水をすくうと、掌から零れ落ちる雫まで淡い青色の光を帯びていた。


小次郎も桶の中を確かめ、


「これなら使えるな。必要な分を作って、みんなのところへ運ぶぞ」


二人は黄泉川の水を次々と汲み上げ、三種の神器を使って霊水へ変えていった。


水を汲んだ桶へ三種の神器を入れるたびに青い光が川岸を照らし、その光が収まる頃には、黄泉川の水は澄み切った霊水へと変わっていた。


こうして小次郎たちは、火の七日間を阻止するために必要な霊水を確保していった。


一方、ワイチたちは火雷の城の近くまで進み、工場を行き来する屍兵たちに紛れ込む機会をうかがっていた。


城の周囲では屍将軍が兵を連れて行き交い、工場からは金属を叩く音や怒鳴り声が絶え間なく響いていた。


やがて二人の屍薬師が城から離れ、人目の少ない場所へ入った。武蔵たちはそのまま後を追い、周囲から屍兵がいなくなったところで一気に襲いかかり、声を上げる間もなく二人を仕留めた。


「ワイチ、正宗、こいつらの服を使うぞ、誰か来る前に急いで着替えろ」


屍薬師の衣服を奪い、ワイチと村正宗が着替えた。


「俺が薬師かよ。こんな格好で本当にバレねえのか?」


「屍兵がこれだけいるんです。堂々としていた方が怪しまれませんよ」


きゅうすけとしん吉は屍将軍へ姿を変え、狐の里から同行してきた鍛冶屋たちも変装を済ませると、一行は屍兵たちの流れへ紛れ込み、そのまま工場へ向かった。


城へ近づくほど兵の数は増え、槍や刀を抱えた屍兵たちの間を、鉄材や木箱を山積みにした荷車が行き交っていた。


「お前ら、そこを空けろ!」


荷車が目の前を横切り、その後ろから数人の屍将軍が現れた。


「お前たち、どこの持ち場だ?」


「蹴萎慈疽瘴砲の工場だ。人手が足りないからこいつらを連れていくところだよ」


「だったら急げ。火雷様から作業を遅らせるなと言われているからな」


屍将軍たちが通り過ぎると、一行は工場が並ぶ場所まで進み、そこで二手に分かれた。


ワイチたちは粉露煮が作られている工場へ向かい、村正宗と狐の里の鍛冶屋たちは、きゅうすけとしん吉に連れられて蹴萎慈疽瘴砲の工場へ入った。


巨大な砲身の周囲では何人もの屍兵が鉄板や部品を運び、金槌が鉄を打つたびに火花が散っていた。


「天国さん、俺だ!きゅうすけだよ。この連中もみんなこっちの仲間だから安心して」


「お、お前ら、よく来てくれたな。ここじゃ大きな声では話せねぇ、すぐそこに火雷の兵がいるからな」


「分かってるよ、これから蹴萎慈疽瘴砲を改造する計画を伝えるから、作業しながら聞いてくれ」


「改造?こいつをどうするつもりだ?」


「火雷の城を攻撃するための切り札に変えるんだ」


「こいつを火雷の城に撃ち込むってのか。そりゃまた、とんでもねえこと考えたな」


「そのために天国さんの力を借りたいんだ。俺たちだけじゃ、こいつをどう弄ればいいか分からないからな」


「分かった、それなら詳しく聞かせてくれ。ここなら作業に紛れて話せる」


村正宗たちも鍛冶屋たちに混じって蹴萎慈疽瘴砲の周囲へ入り、運ばれてきた工具や部品を使って作業を始めた。


「おい、お前その指輪どうした?」


「これか?師匠からもらったんだよ」


「師匠?お前の師匠って誰だ?」


「俺の師匠は、三条宗近だよ」


「宗近だと?なんだ、お前、あいつの弟子だったのか」


「知ってんのか?」


「知ってるも何も、あいつは俺の弟子だぞ。まさかこんなところで宗近の弟子に会うとはな」


「なんだって!ということは、俺の師匠の師匠なのか!」


周囲では何も知らない屍兵たちが、火雷の命令を受けて蹴萎慈疽瘴砲の完成を急いでいた。


その同じ工場の中で、火雷の兵器を火雷自身へ向けるための改造計画が動き始めた。


一方、粉露煮の工場へ入ったワイチとだいすけは、屍薬師たちに紛れながら完成した粉露煮を調べていた。


工場の中にはいくつもの粉露煮が並び、屍薬師たちが完成したものを次々と運び出していた。


「設計図だけでは分かりませんでしたけど、実物を見ると外側にはかなり厚みがありますね。これなら三寸ほど杭を刺して、そこから霊水を流し込めそうです」


「これ以上刺したら危ないんですか?」


「内部には圧縮された瘴気が溜まっていますから、深く刺しすぎると杭がそこまで届いて爆発する危険があります。三寸以上入らないように途中で止まる形にすれば、安全に霊水を送り込めると思います」


「それなら杭の形を決めないといけませんね。向こうの工場にいる天国に相談してみましょう、狐の里の鍛冶屋たちも一緒なら作れるはずです」


「そうですね。実際に作れる形まで決めておかないと使えませんから、行ってみましょう」


ワイチとだいすけは粉露煮の工場を出ると、屍兵たちに紛れながら蹴萎慈疽瘴砲の工場へ向かった。


巨大な砲身の周囲では屍兵たちが鉄材や部品を運び、鍛冶屋たちが金槌を振るう音が響いていた。


「ワイチ、こっちだよ」


屍将軍の一人がワイチを呼んだ。


「え、誰だ?」


「俺だよ、きゅうすけだ」


「きゅうすけか、その姿じゃ分からねえよ」


「ワイチは屍薬師に着替えるところを見てたから分かったけど、そっちは誰だ?その格好じゃ全然分からないよ」


だいすけは左手首の裏側を見せた。そこには味方同士を見分けるために付けた小さなバッテンの印があった。


「だいすけです」


「だいすけか。バッテンがあるから仲間だとは分かったけど、そこまで変装してたら誰なのかまでは分からないよ」


「俺も声を聞くまで、きゅうすけだとは分かりませんでした」


「これなら敵にも簡単にはバレないな。二人ともこっちだよ、天国さんのところへ連れていく」


きゅうすけはワイチとだいすけを天国のところへ連れていった。


「天国さん、先に一つ伝えておくよ。俺たちは変装して城の中に入ってるから、これから知らない姿の奴がここへ来ることもあるんだ。仲間はみんな左手首の裏側に小さなバッテンを付けてるから、誰か来たらまずそこを確認してくれ。バッテンがあれば俺たちの仲間だよ」


「左手首の裏側だな。分かった、顔も格好も違うんじゃ俺には見分けがつかねえから、その印を目印にすればいいんだな」


「そういうこと。それで、こっちがワイチで、もう一人がだいすけだよ」


「初めまして、ワイチです」


「お前がワイチか。待ってたぞ、こいつをどう使って火の七日間を止めるつもりなのか聞かせてくれ」


「まず粉露煮を調べてきました。実物を見ると外側にはかなり厚みがあって、表面から三寸くらいまでなら内部の瘴気に触れずに杭を刺せそうなんです。ただ、それ以上深く刺すと圧縮された瘴気に届いて爆発する危険がありますから三寸未満で霊水を流し込める杭を作って欲しいんです」


「三寸で止めるなら、杭の途中に鍔を付ければ問題ねぇよ。中を空洞にして、先端の少し上に穴を開けておけば、そこから霊水を流し込めるぞ」


「お願いします。粉露煮の何箇所かに打ち込める分を用意してもらえますか。何箇所からも霊水を流し込めれば、浸透も早くなると思います」


「分かった。狐の里の鍛冶屋たちにも手伝ってもらえば間に合うだろ」


「それと蹴萎慈疽瘴砲の方なんですけど、装填部の近くに霊水を入れるタンクを取り付けてもらいたいんです」


「タンクを増設するのか」


「そこへ小次郎たちが運んでくる霊水を入れて、装填した粉露煮へ霧状にして浴びせられるようにしたいんです」


「分かった。それなら装填部の近くに取り付けて、霊水を流せるようにしておこう」


「お願いします。それと、この蹴萎慈疽瘴砲を火雷の城へ向けられるようにしておきたいんです」


「今は現世へ撃つための向きで造ってるからな。城へ向けるなら砲台の固定部分も弄る必要がある」


「そこもお願いします。火雷の城へ向けたあと、撃てる状態にできれば大丈夫です」


「分かった。杭を作る連中とタンクを取り付ける連中、それから砲台を弄る連中に分けよう。材料も道具もここに揃ってるから、すぐ始められる」


天国と狐の里の鍛冶屋たちは、杭の製作と蹴萎慈疽瘴砲の改造を始めた。


三寸以上刺さらない杭が作られ、蹴萎慈疽瘴砲では装填部の近くへ霊水を入れるタンクを取り付ける作業が進められた。


さらに、火雷の城へ砲身を向けられるよう、砲台の固定部分にも手が加えられていった。


その作業の途中、数人の屍将軍が工場へ入ってきた。


「おい、お前ら何やってんだ?さっきまでそんなもの付いてなかっただろ」


「蹴萎慈疽瘴砲をもっと強くできねえか試してるんだよ。このまま完成させるより、粉露煮の力をもっと引き出せるようにしておいた方が、現世を攻撃するときに役に立つだろ」


「そんな勝手なことして、火雷様に怒られねえのか?」


「威力を上げるための改良だよ。今から作業を止めて許可を取りに行ってたら、その分完成が遅れるだろ」


「火雷様からは作業を遅らせるなって言われてるんだ。余計なことして間に合わなかったら、俺たちまで巻き添えになるからな」


「予定には間に合わせるさ。そっちはそっちの仕事を進めてくれ」


屍将軍たちは工場の奥へ向かい、天国たちはそのまま作業を続けた。


敵の兵器工場の中で、火の七日間を阻止するための準備が進められていった。


黄泉川で霊水を作り終えた小次郎たちは、火雷の城から離れた場所で屍兵の装束へ着替え、左手首の裏側に仲間の印である小さなバッテンを付けると、桶に入れた霊水を荷車へ積み、その上から布をかぶせた。


小次郎たちは荷車を押しながら城へ向かい、資材や食料を運び込む屍兵たちの列へ紛れ込んだ。


城門では屍兵たちが次々と荷物を確認していた。


「止まれ、その荷車は何だ?」


「工場で使う水だ。急いで運べと言われてる」


「水か……行け、そこで止まるな」


小次郎たちは門を抜け、鉄材や木箱を積んだ荷車が行き交う中を進み、蹴萎慈疽瘴砲の工場へ入った。


巨大な砲身の周囲では屍兵たちが鉄材や部品を運び、狐の里の鍛冶屋たちは天国とともに改造作業を続けていた。


「小次郎、無事に戻ってきたんだね」


屍将軍の一人から声をかけられ、小次郎は聞き覚えのある声に答えた。


「その声、きゅうすけか?」


「そうだよ。霊水は?」


「ちゃんと作れたぞ。全部ここに積んである」


「よかった。天国さん、霊水が届いたよ」


「おお、待ってたぞ。こっちへ持ってきてくれ」


小次郎たちは荷車にかけていた布を外し、霊水の入った桶を天国たちのところへ運んだ。


「黄泉川の水に三種の神器を入れたら、青い光が出て、水がこんなに澄んだんだ。これだけあれば足りるだろ?」


「これだけありゃ十分だ。これで必要なものは揃ったな」


工場では、粉露煮へ打ち込むための杭が何本も作られていた。杭の途中には鍔が付けられ、三寸以上刺さらないようになっており、内部へ霊水を流し込むための穴も開けられていた。


蹴萎慈疽瘴砲の装填部では霊水を入れるタンクの取り付けが進み、そこから霊水を霧状にして粉露煮へ浴びせるための仕掛けも組み込まれていた。


さらに砲台の固定部分では、現世へ向けて造られていた砲身を火雷の城へ向けられるよう、天国と鍛冶屋たちが改造を進めていた。


そのすぐ近くでは何も知らない屍兵たちが鉄材や部品を運び、蹴萎慈疽瘴砲の完成を急いでいた。


「天国さん、霊水はここに置いておくぞ」


「ここは任せろ。こっちはこのまま作業を続けて早く終わらせる」


「ワイチ、俺としん吉は三条宗近さんのところを見てくるよ」


「分かった。何かあったらすぐ戻ってこいよ」


きゅうすけとしん吉は屍将軍の姿のまま工場を出ると、屍兵たちに紛れながら三条宗近のいる工場へ向かった。

【次回予告】


村正宗だ。


ったく、敵の城ん中で兵器を改造するなんて、よくこんな無茶なこと考えつくよな。


きゅうすけとしん吉は宗近のところへ行ったみてえだけど、余計な騒ぎ起こしてなきゃいいんだがな。


次回、第112話「最悪の瘴気銃」。


あいつら二人なら……何かやらかしそうで嫌なんだよな。

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