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世界を救ったのは剣豪でもなく陰陽師でもなく薬師?だったんですよ!  作者: 氣愛注入


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敵陣の奥へ


火雷の城を目前にして、ワイチたちは大吉と勘介に接触する方法を探っていた。


城の周囲では屍兵が絶えず行き交い、工場へ続く道にも屍将軍が配置されていた。このまま全員で近づけば、すぐに見つかってしまう。


「これじゃあ、大吉さんたちのところまで行くのは難しそうですね」


「だったら、俺たちが行ってくるよ!」


しん吉が懐から一枚の葉っぱを取り出すと、きゅうすけも同じように葉っぱを取り出した。


二人が葉っぱを頭へ乗せると、白い煙が一気に身体を包み込んだ。


「変幻!」


白い煙が風に流れ、その中から二体の屍将軍が現れた。


「これなら中まで入れそうだな!」


「気をつけろよ。バレたら、一目散で逃げてこいよ」


「分かったよ、とにかく頑張ってくる!」


屍将軍に化けたきゅうすけとしん吉は、ワイチたちと二つの里から連れてきた職人たちを残し、火雷の城へ向かった。


二人は城の周囲を行き交う屍兵たちの中へ紛れ込み、工場の並ぶ一帯へ入っていった。


武器や資材を運ぶ屍兵が次々と行き交い、その間を屍将軍たちが巡回していたが、二人の姿を見ても誰も呼び止めなかった。


そのまま奥へ進んでいたとき、前方から一体の屍将軍が近づいてきた。


「おい、お前らちょっと待てよ」


きゅうすけとしん吉の足が止まった。


「見かけねぇ顔だな、お前ら、どこの所属だったっけ?」


「えっ……えっと」


きゅうすけが答えに詰まった瞬間、尻から狐の尻尾が飛び出した。


しん吉はすぐにきゅうすけの後ろへ回り込み、尻尾を身体で隠した。


「おい、お前に言ってるんだ、聞いてんのか?」


「しょ、食料係の者だ!」


「食料係だと?」


屍将軍がきゅうすけの横へ回ろうとすると、しん吉も同じ方向へ動いた。


反対側へ回ろうとすれば、しん吉も反対へ動いて尻尾を隠した。


「……お前、さっきから後ろで何やってんだ?」


「いや、こいつ、服が大きいらしく、袴がずれているのを直してるんだ!」


「変な奴だな」


屍将軍はしん吉を見ていたが、きゅうすけへ向き直った。


「まあ、食料係なら見かけねえのも無理ねえか。火の七日間の準備に人手を取られて、あそこは今じゃほとんど残ってねえからな」


「そ、そうなんだよ!」


「だったら持ち場に戻れよ、こんなところをウロウロしてると、火雷様のところに連れて行かれて燃やされちまうぞ」


「すまんすまん、便所行っていたからさ!」


屍将軍が離れていき、きゅうすけとしん吉も歩き出した。


「ん?……ちょっと待て!」


二人の足が止まった。


「お前ら……食料担当と言ったよな?」


屍将軍が二人を睨みつけた。


「今度、俺の食料増やしてくれ、内緒だぞ!」


「あ、ああ!分かった、任せとけ!」


「あれだけじゃもたなくてな、頼んだぞ!」


屍将軍が今度こそ立ち去ると、しん吉はきゅうすけの尻尾を押し込み、二人は再び屍兵たちの中へ紛れながら、大吉と勘介を探して敵陣の奥へ進んでいった。


きゅうすけとしん吉は前回の偵察で確認した場所を頼りに、屍兵たちに紛れながら瘴気銃の研究所へ向かった。


研究所では職人たちが屍兵に監視されながら瘴気銃の製造を続け、金属を削る音や鉄を打つ音が絶え間なく響いていた。


その中に勘介の姿があった。


二人は屍将軍の姿のまま、勘介の近くまで進んだ。


「勘介さん、僕だよ。きゅうすけだ」


「誰だ、きゅうすけって?」


「前にここで会っただろ。赤い狐の里のきゅうすけだよ」


「お前、あのときの狐か!……その姿、変幻の術か?」


「そうだよ。これなら屍兵たちに紛れて中まで入れると思ってさ。しん吉も一緒だよ」


「この前預かった手紙、ちゃんと里の長老に渡したよ。それで、みんなで来たんだ」


「届けてくれたのか、ありがとうな!」


「赤い狐の里と緑の狸の里のみんなで来たんだ。今なら一緒に逃げられないかな?」


「それは無理だな。俺たちが一人でもいなくなったら、すぐに気づかれてしまう。特に俺はここでは重要人物だからな。それにこの警備じゃ、城の外まで逃げ切れねえだろうしな」


「んー、そっか。なら外のみんなと助け出す方法を考えるよ」


「それなら、渡してえもんがあるんだ」


勘介は隠していた設計図をきゅうすけへ渡した。


「俺がこっそり写した設計図だ。この設計図を里の職人たちに渡してくれ。この武器を完成させちゃいけない。なんとか破壊する方法を考えてくれ」


「瘴気銃の設計図か。分かった、必ず渡すよ」


「それから三条宗近って鍛冶師にも会ってくれ。あいつも瘴気銃を造らされてる。さっきの設計図を見せれば信用すると思うぜ」


勘介から居場所を聞いた二人は、屍将軍の姿のまま研究所の奥へ進んだ。


三条宗近のところまで近づくと、きゅうすけが声をかけた。


「お前が三条宗近か?」


「なんだ、俺はちゃんと作業してるぞ。何か用か?」


「三条宗近さんだね。勘介さんから聞いて来たんだ」


「勘介から?何で屍将軍のお前らがあいつの名前を知ってる?」


「僕たちは屍将軍じゃないよ。赤い狐の里のきゅうすけと、緑の狸の里のしん吉だ。敵に見つからないように化けてるんだ」


「そんな話、いきなり信じろってのか?」


「これ、勘介さんから預かったんだ」


きゅうすけは勘介から預かった設計図を宗近に見せた。


「……こいつは勘介が写してた設計図じゃないか。分かった、それで何の用だ?」


「二つの里のみんなが近くまで来てるんだ。職人たちも一緒だよ」


「なんだって、ならここから出られるのか?……いや、今、俺が逃げてもすぐに見つかるな」


「なら、一つ頼まれてくれ。ここには俺の師匠もいるんだ。天国って鍛冶師だ」


「どこにいるの?」


「あのでかい大砲のところだ。蹴萎慈疽瘴砲と、そいつを骨粗鬆亀に載せるための砲台を造ったのは天国師匠だ。師匠からも情報をもらえると思う」


「じゃあ、天国さんにも会ってくるよ」


「待て。師匠はかなり用心深い人だ。話をしたって信用しねえぞ」


宗近は「竹」の一文字が刻まれた指輪を取り出し、きゅうすけへ渡した。


「これを見せろ。師匠が俺に作った指輪だ。こいつを見れば話はしてくれるはずだ」


「分かった。預かっていくよ」


「その前に、粉露煮工場にも寄ってくれ。大吉って薬師がいるから、あいつにも会っていった方がいい」


「大吉さんには会ったことがあるよ。粉露煮工場だね、分かった」


二人は研究所を出ると、屍兵たちに紛れて粉露煮工場へ向かった。


巨大な炉ではいくつもの釜が煮え続け、屍薬師や屍陰陽師たちが大量の粉露煮を造っており、その中に大吉の姿があった。


しん吉は屍将軍の姿のまま大吉の近くまで進んだ。


「大吉さん、おいらだよ。しん吉だ!」


「誰だ、しん吉って?」


「前にここで会っただろ!緑の狸の里のしん吉だよ」


「お前、あのときの狸か!その姿……変幻の術だな?」


「そうだよ!きゅうすけと一緒に屍将軍に化けて入ってきたんだ!」


「大吉さんから預かった手紙も、ちゃんと長老に渡したよ。そうしたら、みんなが大吉さんを助けたいって来てくれたんだよ!」


「そうか!みんなが来てくれたんだ!」


「赤い狐の里のみんなも一緒だよ。勘介さんも助けたいから、二つの里の職人たちが来てるよ!」


「だったら、ちょうどいい。勘介も渡しただろ?設計図」


大吉は隠していた設計図をしん吉へ渡した。


「粉露煮について俺が書き写したもんだ。里の職人たちに渡してくれ」


「分かった!みんなに渡してくるよ!」


「頼んだぞ。俺たちは今ここから動けねえから、外にいる奴らと何とかする方法を考えてくれ」


「絶対に助けに戻ってくるからな!」


勘介と大吉からそれぞれ設計図を預かった二人は、宗近から託された「竹」の指輪を持ち、蹴萎慈疽瘴砲が置かれた場所を目指して、さらに敵陣の奥へ進んでいった。


きゅうすけとしん吉は屍兵たちに紛れながら、蹴萎慈疽瘴砲が置かれている場所へ向かった。


巨大な蹴萎慈疽瘴砲の周囲では多くの屍兵が警備にあたり、捕らえられた職人たちはその監視の中で作業を続けていた。


宗近から聞いた場所まで進むと、砲台の近くで作業をしている天国の姿があった。


きゅうすけは屍将軍として振る舞いながら天国へ近づいた。


「お前が天国だな、ちょっとこっちへ来い」


「なんだ?俺は言われた通り作業してるぞ、何か問題でもあったのか?」


「いいから来い」


きゅうすけとしん吉は天国を連れ、作業場から少し離れた物陰へ移動した。


周囲から姿が見えにくくなり、屍兵たちの声も遠ざかったところで、きゅうすけは声を落とした。


「驚かせてごめん、僕たちは敵じゃないよ」


「敵じゃない?お前ら、どう見たって屍将軍じゃねえか」


「この姿は化けてるだけなんだ、僕は赤い狐の里のきゅうすけ、こっちは緑の狸の里のしん吉だよ」


「赤い狐の里と緑の狸の里だと?そんな話、簡単に信用できるわけねえだろ」


「三条宗近さんから天国さんのことを聞いたんだ、これも宗近さんから預かってきたよ」


きゅうすけは宗近から預かった「竹」の一文字が刻まれた指輪を天国に見せた。


「……その指輪、ちょっと見せてくれ」


天国は指輪に刻まれた「竹」の文字を確かめた。


「間違いねえ、俺が宗近に作った指輪だ。あいつがこれをお前らに渡したってことは、本当に宗近から来たんだな」


「そうだよ、宗近さんも無事だったし、勘介さんと大吉さんにも会ってきたよ」


「勘介と大吉にも会ったのか、あいつらも無事なんだな?」


「無事だよ。それに二人が前に僕たちへ預けてくれた手紙も、それぞれの里の長老にちゃんと届けたよ。火雷が火の七日間を始めようとしてることも長老からみんなに伝わって、このまま現世を攻撃させるわけにはいかないって、赤い狐の里と緑の狸の里のみんなが自分たちから集まって、城の近くまで来てるんだ、二つの里の職人たちも一緒だよ」


「そうか……あいつらの手紙がちゃんと届いたのか。二つの里のみんながそこまで来てくれてるなら、まだ火の七日間を止められるかもしれねえな」


「勘介さんからは瘴気銃、大吉さんからは粉露煮について書き写した設計図を預かってきたよ、外にいる職人たちに見てもらって、火の七日間を止める方法を考えてもらうんだ」


「職人たちまで来てるのか……だったら俺にもできることがある、俺からも渡してえもんがあるんだ」


天国は周囲を警戒しながら、隠していた設計図を取り出した。


「これは蹴萎慈疽瘴砲の設計図だ、俺が造らされてる大砲の構造を書き写してある、こいつを外にいる職人たちに渡してくれ」


「分かったよ、これも必ずみんなに届けるから」


「それから、あの大砲を運ぶ骨粗鬆亀のことも伝えてくれ、あいつは骨を食う生き物で、骨を食わせなきゃ動かねえんだ、火雷の奴らが大量の骨を集めてるのも、あいつを動かすためなんだよ」


「だから前に見たとき、骨を運んでる部隊がいたんだね」


「あいつのために骨調達部隊がいるんだ、俺はここで屍兵どもに監視されてるから動けねえんだ、下手に姿を消せばすぐに騒ぎになって、他の捕まってる奴らまでどうなるか分からねえ。だからこの設計図を外にいる職人たちに見てもらって、蹴萎慈疽瘴砲を止める方法を見つけてほしいんだ。このまま火雷の好きにさせたら、あの大砲から現世へ粉露煮を撃ち込まれちまう、俺たちがここから動けない分、お前たちと外にいる奴らの力で、何としてでも火の七日間を阻止してほしいんだ!」


「分かったよ!絶対みんなに伝えるからさ、この設計図を職人たちに見てもらって、火の七日間を止める方法をみんなで考えるよ、それに天国さんたちをここに残したままにはしないからね、絶対に助け出す方法も考えるから!」


「頼んだぞ、俺たちもここでできることはやるから、何としてでも火雷の計画を止めてくれ!」


きゅうすけとしん吉は天国から蹴萎慈疽瘴砲の設計図を預かると、再び屍将軍として振る舞いながら作業場へ戻り、そのまま屍兵たちの中へ紛れた。


勘介から預かった瘴気銃の設計図、大吉から預かった粉露煮の設計図、そして天国から預かった蹴萎慈疽瘴砲の設計図を携え、二人はワイチたちが待つ場所を目指して敵陣を戻っていった。


【次回予告】


おいら、しん吉だ!


なんとか無事に戻ってこられたけど、あの城の中は本当に危なかったぞ!


それに、大吉さんたちから大事なものも預かってきたんだ!


これをみんなに渡せば、何か分かるかもしれないぞ!


次回、第110話「恐ろしい武器」。


あんなもん、絶対に好き勝手使わせちゃダメ

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