↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を救ったのは剣豪でもなく陰陽師でもなく薬師?だったんですよ!  作者: 氣愛注入


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

107/121

炎の城の脅威

火雷の城を目指して進んでいたワイチたちは、岩山を越えた先で巨大な城を発見した。


城を中心に広大な土地が切り開かれ、その周囲にはいくつもの施設が建ち並び、城門前の訓練場では数え切れないほどの屍兵たちが隊列を組んでいた。


屍将軍の号令が響くと、槍を構えた一団が一斉に前進し、その後方から矢が放たれ、別の場所では屍盾武者たちが壁を作り、その隙間から槍が突き出される。


さらに屍忍者たちが標的の間を駆け抜け、手裏剣や吹き矢を次々と撃ち込んでいた。


「なんだよ、この数……」


小次郎の言葉が途切れた先にも、屍兵たちの隊列が続いている。


「伏雷のところとは規模が段違いですね」


その奥では巨大な建物がいくつも建ち並び、煙突から絶え間なく黒煙が噴き出していた。


ゴオオオオオ――。


低い音が大地を伝い、建物の中から金属を叩く音が響いてくる。


ガン!ガン!ガン!


その周囲では大量の屍兵たちが行き交い、木箱や樽を抱えた者たちが次々と建物の中へ入り、別の入口からは荷車が列を作って出てくる。


「おい、なんであの建物にあんな大勢が出入りしてんだ?」


「何か作ってるんじゃねえのか?」


ワイチたちが工場群を確認していると、しん吉が城から離れた高台にある巨大な物体に気づいた。


「ワイチ、あれ見てくれ!」


「あれは……なんだ?」


岩山の一部を削り取った高台には、巨大な亀のような骨の塊が鎮座していた。


何本もの太い骨が組み合わさった四肢の上に巨大な甲羅を背負い、その甲羅には城の塔ほどもある巨大な筒が据え付けられている。


筒の周囲には足場が組まれ、何十人もの屍兵たちが上り下りしながら資材を運び、別の屍兵たちは骨の亀の周囲で何かの作業を続けていた。


「なんだよ、あのでっけえ亀……」


「しかも背中に何か乗ってるぞ」


「大砲……でしょうか」


「大砲って、あんなでけえのかよ!」


訓練を続ける屍兵の大軍、黒煙を吐き続ける工場群、そして高台に鎮座する巨大な骨の亀と、その甲羅に据え付けられた巨大砲。


「何を始めるつもりなんだ、こいつら……」


「ここから見ているだけでは分かりませんね。やはり中に入って確認した方がよくないですか?」


「ただワイチ、全員で近づけばすぐに見つかるぞ?」


「やはり少人数で探りに行くしかねえな」


「それなら、きゅうすけさん、しん吉さん、私たち三人で行きます♪」


「おいら達なら風のように行けるから、大丈夫だよ。以前は屍達を連れ回したしな!」


阿国、きゅうすけ、しん吉の三人が偵察へ向かうことになった。


「無理に奥まで入る必要はないからな。何を作っているのか分かったらすぐに戻ってこいよ」


「分かりました♪無理しないでしっかり見てきます」


阿国の笛から軽快な音色が流れた。


♪~♪~♪~♪


笛の力で速度を上げた三人は、屍兵たちの巡回が途切れた瞬間に岩陰から飛び出し、工場へ向かって一気に駆け抜けた。


巡回する屍兵や荷車を避けながら進むにつれて工場から響く音が大きくなり、黒煙と熱気が辺りを覆う中、三人は大量の屍兵たちが行き交う隙間を抜け、やがて他の工場とは少し離れた場所に建つ施設へたどり着いた。


ドンッ!


内部から巨大な何かがぶつかるような音が響いた。


「何の音でしょう?」


三人が中を確認すると、広い研究所の中央で巨大な魔物が何本もの太い鎖につながれていた。


全身を硬い鱗に覆われ、鋭い三又に分かれた尾を壁に打ちつけ、鋭い眼が光っていた。


「え?毒棘竜!」


「なんでこいつがこんなところにいるんだ?」


ワイチたちが旅を始めた頃に苦戦した毒棘竜が、鎖を引き千切ろうと暴れながら咆哮を上げた。


グオオオオオオッ!!


その正面では、アポロンが握る黒い拳銃を見ながら、


「準備はできているのか?」


「いつでも撃てます。あとはアポロン様が引き金を引くだけです」


バァァァーーン


銃口から黒い瘴気をまとった弾丸が飛び出し、黒い渦となって毒棘竜の額へ当たった。


ギャャャャァァァ


額に穴が空き、着弾した場所から黒い炎が噴き上がった。


ボオオオオオオッ!!


毒棘竜の身体が膨らみ、額の鱗から黒炎が飛び出し、身体全身へと広がり、黒い炎が飲み込んでいった。


あっという間に、燃え尽き、焼けた鎖だけが残った。


「毒棘竜が……一発で……」


「成功です!毒棘竜を一撃で消滅させました!」


「威力は問題ない。だが、着弾してから黒炎が全身を包むまでが遅すぎるし、弾速もまだまだ足りない。この速度では動いている相手には簡単に避けられるぞ。反動が大きいうえに重心が前に寄りすぎているから、撃った瞬間に照準もぶれるんだよ」


アポロンは近くにいた屍将軍の腕へ熱を帯びた銃身を押しつけた。


ジュウウウウウッ!


「ギャアアアアッ!」


肉の焼ける音と悲鳴が研究所に響いた。


「一発撃っただけでこの熱だ。二発目の照準も定まらない、速射も連射もできないだろ。お前ら、こんな状態で本当に使えると思ってんのか?」


「申し訳ありません。反動と重心を調整し、銃身の冷却機構も見直します。弾速と黒炎の広がる速度についても改良します」


「次の試射までに仕上げておけ」


「分かりました。すぐに調整に入ります」


研究員たちが試作拳銃の改良へ取りかかる中、研究所の奥では鉄球付きの足枷につながれた一人の男が作業を続けていた。


「おい、宗近!次の試射までに銃身の冷却機構を改良しろ!弾速も今のままじゃ足りねえそうだ!」


「反動と重心も調整しろとの命令だ。急げ!」


三条宗近と呼ばれた男の作業台には、分解された試作拳銃といくつもの部品が並べられていた。


「そんなに一度に言われても無理じゃ。弾速を上げれば今以上に反動が強くなる。銃身の熱も逃がさねばならんとなれば、内部から作り直す必要があるぞ」


「アポロン様の命令だ!できるかどうかなど聞いていない!」


「まったく……人を無理やり連れてきておいて、好き勝手言いおって」


宗近は試作拳銃の改良へ取りかかった。


「しん吉さん、あの方……」


「ああ、捕まって無理やり作らされてるみてえだな」


「三条宗近って言ってたよ」


三人は研究所の中をさらに確認した。


壁には何枚もの設計図が貼られ、作業台には形の異なる黒い銃がいくつも並んでいる。その周囲では屍たちが部品を組み立て、別の場所では黒い瘴気を込めた弾丸が次々と作られていた。


「こんなものをたくさん作るつもりなんでしょうか……」


「さっきのが全部の屍に渡ったら、とんでもねえことになるぜ」


「ここはもう十分見たよ。ほかの建物も調べよう」


三人は研究所を離れ、屍兵たちに見つからないよう工場群の奥へ進んだ。


いくつもの建物を抜けた先では、先ほどとは比べものにならないほど多くの屍たちが一つの巨大な工場へ出入りしていた。


「ここ、さっきのところよりずっと多いですね」


中では何千もの屍陰陽師と屍薬師が休むことなく作業を続けていた。


巨大な炉がいくつも並び、その周囲を屍陰陽師たちが取り囲んでいる。


「火力を落とすな!まだ煮込みが足りん!」


「次の材料を入れろ!」


屍陰陽師たちが一斉に術を放つと、炉の下で炎が激しく燃え上がった。


ゴオオオオオオッ!!


炉の中では大量の黒い液体が煮えたぎり、屍薬師たちが次々と材料を投入していく。


別の場所では煮詰められた黒い物質が巨大な球体へと固められ、何人もの屍兵たちによって慎重に運び出されていた。


「なんだ、あのでっけえ玉?」


「かなり重そうだよ。何人もいないと運べないみたい」


完成した巨大な黒い球体は工場の一角へ集められ、ずらりと並べられていた。


「二十八……二十九……三十。これでようやく三十発か」


「まだ三十発しかねえのかよ。いつになったら必要な数が揃うんだ?」


「仕方ねえだろ。粉露煮一発作るだけでもこれだけ手間がかかるんだ。薬師も陰陽師も総動員してんだぞ」


「それにしたって急がねえとオーディン様に何をされるか分からねえぞ」


「分かってるよ。あの亀に乗っかってる大砲で撃つらしいけど、こんなもん何発作らせるつもりなんだよ」


「大砲?」


阿国たちが先ほど高台で見た巨大な骨の亀と、その甲羅に据え付けられた巨大砲につながった。


「じゃあ、この大きな玉をあそこから撃つってこと?」


「何のためにあんなものを……」


「そこまでは分からねえけど、ろくなことじゃねえな」


工場では次の粉露煮を作るため、新たな材料が次々と炉へ投入されていた。


「次の炉を開けろ!」


「陰陽師、火力を上げろ!」


再び巨大な炎が立ち上がり、工場全体が熱気に包まれる。


三人は工場を離れ、高台へ向かった。


近づくにつれて、遠くから見ていた巨大な骨の亀がさらに異様な姿を現していく。


太い骨で組み上げられた四本の脚、その上を覆う巨大な甲羅。そして甲羅の上には、何十人もの屍兵が作業できるほど巨大な蹴萎慈疽瘴砲が据え付けられていた。


その周囲には大量の骨が積み上げられ、屍兵たちが次々と骨を運び込んでいる。


「骨ばっかりだな」


「何に使うんでしょう?」


その時、何頭もの骨馬を引き連れた屍兵たちが骨粗鬆亀の前へやってきた。


骨粗鬆亀が巨大な頭を伸ばした。


バリッ!


骨馬の一頭が巨大な口に噛み砕かれた。


バリバリバリッ!


「うわっ!骨馬食べてるよ!」


骨粗鬆亀は次の骨馬へ食らいつき、骨を砕きながら次々と飲み込んでいく。


「もっと持ってこい!こんな量じゃ足りん!」


「周辺の骨はほとんど集めています!」


「なら範囲を広げろ!こいつは骨を食わせ続けねえと動かねえんだ!大砲が完成しても、こいつが動かなきゃ運べねえだろうが!」


「すぐに骨集めの部隊を向かわせます!」


屍兵たちが新たな骨を集めるために動き出す中、骨粗鬆亀は積み上げられた骨へ巨大な口を突っ込んだ。


バリバリバリバリッ!


「この亀、骨を食べないと動けないんだ……」


「それであんなに骨を集めてるんですね」


「大砲の弾はあの工場で作ってる。こいつは骨を食わせねえと動かねえ。だいぶ分かってきたな」


三人がさらに大砲の周囲を確認していると、屍兵たちに囲まれながら作業を続ける二人の男がいた。


二人とも両足に鉄球付きの足枷をつけられていた。


一人は巨大砲の下で部品を調整し、もう一人はその近くで金属部品を加工している。


「おい、大吉!そっちはまだ終わらんのか!」


「急かすな!こんなでかいもん、すぐに終わるわけないだろ!」


「勘介!お前も手を止めるな!」


「分かってる!壊れたって知らねえからな!」


「また捕まってる人がいる……」


きゅうすけが勘介を、しん吉が大吉を見た。


大吉がしん吉の姿に気づいた。


「お前……緑狸の里の者か?」


「え?おいら?」


「やっぱりそうか!その姿、間違いねえ。緑狸の里の狸だな?」


その声を聞いた勘介も、きゅうすけに気づいた。


「おい!そっちの狐、おめえ赤狐の里の者じゃねえか!」


「僕を知ってるの?」


「知ってるも何も、その姿を見りゃ分かる!頼む、ちょっとこっちへ来てくれ!」


周囲の屍兵たちが別の作業へ移った隙に、三人は大吉と勘介の近くへ向かった。


「おいら、しん吉。緑狸の里から来たんだ」


「僕はきゅうすけ。赤狐の里から来たよ」


「やっぱりそうか……まさかこんなところで里の者に会えるとはな」


「頼みがある。俺たちはここから動けねえ。これを里まで持っていってくれ」


大吉と勘介は、それぞれ一通の手紙を取り出した。


「これは緑狸の里の長老へ渡してくれ」


「こっちは赤狐の里の長老に頼む」


しん吉ときゅうすけが、それぞれの手紙を受け取った。


「分かった。おいらが必ず届けるぜ!」


「僕もちゃんと長老に渡すよ!」


「私たちは仲間にここのことを知らせて、その後、必ず戻ってきますね」


「頼んだぞ。ここで何が作られているのか、外の連中にも知らせてくれ」


三人は手紙を持ち、火雷の城を離れてワイチたちのもとへ戻るため、来た道を引き返した。


火雷の城を離れた阿国、きゅうすけ、しん吉は、屍兵たちの巡回を避けながら岩山を駆け抜け、ワイチたちが待つ場所まで戻ってきた。


「戻ってきたぞ!」


「おかえり!三人とも大丈夫だったか?」


「はい♪かなり大変なことになっています」


「何があった?」


三人は偵察で見たものを順番に話した。


「まず、最初に入った建物では、アポロンとかいうのが見たことのない武器を作っているみたいで、その武器で撃った弾が毒棘竜に当たったら、黒い炎が全身に広がって……毒棘竜が一発で消えてしまったんだよ」


「毒棘竜を一発だと?」


「でもね、まだ完成してないみたいだよ。撃った後にすごく熱くなって、続けて撃てないって言ってた。それに弾も遅くて、動いてる相手には避けられるって」


「反動も大きくて、狙いがずれるって言ってたぜ」


「それなら、まだ改良の途中ということですね」


「それだけじゃないんだ。そこには捕まって武器を作らされている方がいました。三条宗近という方だったよ」


「三条……宗近だと?本当に三条宗近なのか?」


「そう言ってたよ。その人に注文つけてた。正宗、知ってるのか?」


「三条宗近は、俺の師匠なんだ」


「ええっ!?」


「突然いなくなったから心配していたんだが、まさか師匠が火雷のところにいたとは」


「両足に鉄球をつけられて、無理やりあの武器を作らされていたんだよ」


「クソッ、ふざけやがって……」


「正宗、まだ話は終わってない。最後まで聞こう」


「……ああ。続けてくれ」


「次に大勢の屍陰陽師と屍薬師がいる工場では、大きな炉を使って粉露煮という巨大な玉を作っていたんだよ」


「粉露煮ってなんだろ?」


「分からない。でも今できているのは三十発だって言ってたよ」


「しかも、あの馬鹿でけえ大砲から撃つらしいぜ」


「やはり、あれはどデカい大砲だったのか」


「ただ、何のために撃つのかまでは分からないよ」


「三十発作って、それでもまだ足りねえって、何発作る気だろ?」


「それは分からないけど、あの大砲を背負っていた亀なんですけど……骨を食べていました」


「骨?」


「骨馬をバリバリ食ってたよ。それだけじゃなくて、周りに集めてあった骨も全部食べてた」


「屍たちの話では、骨を食べさせ続けないと動かないらしいよ。だから骨を集めるための部隊まで出していたよ」


「アポロンは新しい武器を作り、大量の屍陰陽師と屍薬師は大砲の弾を製造し、そして巨大砲を運ぶために、骨を食べて動く亀まで用意しているのか……」


「完全に戦の準備じゃねえか」


「それから、まだ大事なことがあるんです」


「大砲の近くにも、鉄球をつけられて働かされている狸と狐の二人がいました。大吉さんと勘介さんという方です」


「大吉?」


「勘介?」


「大吉さんはしん吉さんが緑狸の里の者だと気づいて、勘介さんはきゅうすけさんが赤狐の里の者だと気づいて、それで二人から、それぞれの里の長老へ手紙を渡してほしいと預かってきました」


「こいつは大吉って人からだ。緑狸の里の長老に渡してくれって頼まれたんだ」


「僕のは勘介って人から。赤狐の里の長老に渡してほしいって」


「三条宗近さんも含めて、少なくとも三人が無理やり兵器を作らされています」


「新しい武器に、巨大な大砲、それに粉露煮が三十発……」


「しかも、まだ作り続けてるんだろ?このままここにいたらまずいんじゃねえか?」


「まずは急いで、狸と狐の里に行こう!これからどうするか考えないとまずい」


ワイチたちは火雷の城から急いで離れ、偵察で得た情報を整理し、預かった二通の手紙を届けるため、赤狐の里と緑狸の里へ向かった。


その間にも火雷の城では、巨大な工場から黒煙が絶え間なく噴き上がり続けていた。

【次回予告】


しん吉だ!


火雷の城、とんでもねえところだったぞ!

あんなでっけえ大砲に、変な玉まで山ほど作ってやがった。

それに、大吉って狸から大事な手紙を預かったんだ。

早く里の長老に届けねえとな!


次回、第108話「二通の手紙」。


大吉、一体何を書いたんだろうな?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。