第22話 神託の波紋
二つ目のSランクダンジョンから、真っ直ぐハンターギルド本部へ向かった。
エレベーターに乗り、最上階の執務室へ向かう。中では何やら忙しそうにしているギルドマスターの姿があったので、声をかけた。
「ギルドマスター、少しよろしいですか?」
「松原ハンター? えぇ、大丈夫ですよ。ご用件はなんですか?」
「ダンジョン攻略を終えましたので、ギルドマスターが用意してくださった私の家に案内していただこうかと思いまして」
「おっと、そうでしたね。住居はすでに整っておりますので、すぐにご案内します」
再び外へ出て、停めてある車へ戻る。
オリヴァーさんの運転で俺の住居へと向かった。
車が発進してすぐ、隣に座るギルドマスターに尋ねた。
「ギルドマスター。先ほどはずいぶん忙しそうでしたが、何かありましたか?」
「ん? 松原ハンターは、“世界改変の神託”を聞いていなかったんですか?」
「いえ、ちょうどダンジョンから出たタイミングでしたので、しっかり聞きました。ギルドマスターが忙しそうだったのは、その件と関係が?」
「はい。神託によって三つの改変が行われましたが、私が忙しいのは”SSランクダンジョンの出現”についてです」
「そうでしたか。現在の状況はどんな感じですか?」
「他国でも同様かと思いますが、ハンターギルドではランクを問わず、すべてのダンジョンの位置を把握しております。ですので、すでにSSランクダンジョンの出現位置も特定済みです」
「では、実際の攻略に向けて慌ただしくされていたと」
「その通りです。SSランクダンジョンに出現する魔物の強さは、最低でもSランク上位ダンジョンのボスと同等だと考えています」
「SSランクというからには、通常個体でその強さはあると見るべきですね」
「はい。そうなると、攻略の資格を持つのは〈狩猟王〉だけです。他の〈十三英雄〉では、力不足でしょう」
「Sランク上位ダンジョンを単独で攻略できる力がなければ、無駄死にしかねませんからね」
「えぇ。なので、レックス、アンジェリカ、そして松原ハンターを招集するつもりでした」
「なるほど。他の二人とは、すでに連絡が取れたんですか?」
「はい。レックスとアンジェリカはすでにSSランクダンジョンへ向かっています。レックスはずいぶん楽しみにしているようでした。松原ハンターはいかがされますか?」
「……これは強制ではないんですよね?」
「もちろんです」
「なら、二人の攻略結果が出てから判断します」
「分かりました。〈狩猟王〉が一人控えていてくださると、こちらとしても安心できます」
そんな話をしているうちに、俺の住居へ到着した。
車を降りると、まず目に飛び込んできたのは高さ二メートルほどの外壁だった。
その向こうに広がる庭の奥に、どっしりとした大きな屋敷が構えている。
ギルドマスターが入口の門を開き、石畳の道を踏みながら庭を抜け、屋敷の重厚な扉を押し開いた。
天井から下がる大きなシャンデリアがロビーを煌々と照らし、その下には、派手なタイトドレスに身を包んだ美女たちが一列に整列していた。
「生活に必要なものはすべてご用意しました。そして、ご要望通り選りすぐりの美女もお揃えしております」
「何から何までありがとうございます」
「いえ、これくらいは当然のことです。サポートスタッフのオリヴァーは屋敷の近くに住居を移しましたので、何かご用があればいつでもお申し付けください。他にご要望はありますか?」
「今のところは特に」
「それでは、私はこれで失礼します」
ギルドマスターはオリヴァーさんを連れ、屋敷を後にした。
「さて━━」
目の前で姿勢よく立ち並ぶ美女たちを寝室へ連れ込み、本能の赴くままに抱きたいところだが、SSランクダンジョンの件がある。
これから日本へ向かわなければならない。
「悪いが、しばらくの間は寛いで待っていてくれ。デリバリーで料理や酒を好きなだけ頼んでいいし、映画を観ていても構わない」
「承知しました。大人しく待機しております」
真ん中に立つ女性が答えた。
「いや、別に寛いでいても問題な━━」
「いえ、大人しく待機しております。それが”王”をもてなす者の務めです」
一人一人と視線を交わす。全員、同じ意志を宿した目をしていた。
「それが皆の総意なら、好きにしろ」
そう告げると、俺は【空間魔法】で日本のハンターギルド本部へ転移した。




