第14話 砂王━━ファラオ討伐
太陽が燦々と照りつける灼熱の砂漠を、俺はただひたすらに進んでいた。
行く手を阻むのは、特殊な包帯と【土魔法】を駆使して襲いかかるマミー達。
一体倒せば砂塵が舞い、また一体が現れる。終わりの見えない襲撃が続く。
十体目のマミーを討伐したところで、【砂上疾走】のレベルアップを知らせる通知が耳に届いた。
そして━━遠方に、果てしなく続く地平線を切り裂くようにして、巨大なピラミッドが聳えていた。
その麓には、砂漠には似つかわしくない石畳の道が、一直線に入口へと延びていた。
「……あれが、ボス部屋へ続く道か」
慎重に周囲を警戒しながら、砂をサクッサクッと踏みしめ、ピラミッドへと向かう。
内部は静寂に包まれていた。等間隔に灯された松明の炎が、長い廊下の石壁に揺らめく影を落としている。
その奥に聳える重厚な扉に手をかけ、ボス部屋へ踏み込む。
扉の先に広がっていたのは、これまでと変わらぬ広大な砂漠だった。
そして静寂に終わりを告げるように、頭上から十一個の光球が降ってきて、砂の中へと沈んでいく。
直後、十体のマミーが全身から砂を垂れ流すように次々と起き上がり——その中央に、金と麻布に包まれた王が立っていた。
煌びやかな冠と装飾品。威厳を帯びた眼差し。ツタンカーメンを思わせるその姿は、紛れもなくファラオだった。
マミーのような特殊な包帯こそ身に付けていないが、見慣れないスキルを所持している。
油断はできない。
「まずは……取り巻きから片付けるか」
【砂上疾走】を発動し、砂上を滑るように駆け抜ける。そして【氷魔法】の広範囲殲滅魔法を行使する。
「氷柱雨」
上空から無数の氷柱が、豪雨のように降り注ぐ。さらに【同時行使】で、同じ魔法をさらに九つ展開した。
無数の氷柱が、強靭な包帯ごとマミー達を貫いていく。
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『魔力が36UPしました』
『筋力が36UPしました』
『頑丈が54UPしました』
『敏捷が33UPしました』
『知力が32UPしました』
『精神が58UPしました』
『器用が33UPしました』
『幸運が32UPしました』
『【土魔法】Lv.9にUPしました』
『【土魔法強化】Lv.9にUPしました』
度重なる通知が響き、能力値が軒並み上昇していく。
だがその間も、ファラオは微動だにしなかった——そして、静かに腕を横へ払う。
その一振りで周囲の砂が寄り集まり━━瞬く間に百を超える砂の兵が形を成した。
「……コイツらは、魔物なのか?」
一体に【看破】を発動するが、ステータス情報は一切視られない。
試しに【斬撃術】を発動し、〈水龍海戦の短剣〉を振るう。砂の兵は真っ二つに裂けたが、通知は鳴らない。
しかも崩れた砂がすぐに集まり、瞬く間に再生を果たした。
「経験値にもならない雑魚か……時間の無駄だな」
舌打ちとともに砂を蹴り上げ、砂の兵を斬り払いながら、一直線にファラオへ突き進む。
疾風のように駆け抜ける俺の背後で、砂の軍勢が遅れて一斉に動き出す。
ファラオまであと僅かというところで、視界が砂嵐に閉ざされた。
「くっ……! 【神隠】【短距離転移】!」
砂嵐の中でも、ファラオの【生命感知】が俺を追い続ける。
ならば——【神隠】で完全に姿を消し、【短距離転移】でファラオの背後へ躍り出る。
ファラオが振り向くより早く、〈水龍海戦の短剣〉が斬光を放ち、王の首を一閃した。
静寂。
ファラオの頭部が砂に沈み、同時に砂の軍勢が——嵐が風化するように——音もなく消えていく。
『魔力が46UPしました』
『筋力が42UPしました』
『頑丈が69UPしました』
『敏捷が42UPしました』
『知力が41UPしました』
『精神が74UPしました』
『器用が37UPしました』
『幸運が41UPしました』
『【砂場支配】Lv.9を獲得しました』
戦いの終わりを告げる通知音が、静かなピラミッドの中に静かに響いた。




