第15話 奇跡の代償
百を超える砂兵を従えた砂の王━━ファラオ。
Sランクダンジョンのボスとして君臨していたその存在を、俺は討伐した。
目の前に出現した豪奢な宝箱に手を伸ばし、蓋を開ける。
中にはボスの素材と━━ひときわ強い輝きを放つ黄金の砂時計。
早速【鑑定】を発動し、その正体を探る。
━━━━━━━━━━
・名称 砂王の砂時計
・分類 時計
・効果
①一日だけ時を戻せる。
ただし、使用者の寿命が一年縮む。
②不壊特性
・等級 神話級
━━━━━━━━━━
「…時を戻せる、だと?」
一日分の時間を巻き戻せる奇跡。
確かに神の領域に踏み込む力だが、代償は寿命一年。
「流石、神器!」と称賛したくなるが、使い道を誤れば命を削る凶器にもなり得る。
それでも、いざという時には━━。
だからこそ、安易に使うべきではない。心のどこかで、これを使う日が来ないことを祈りながら、砂時計をそっとしまった。
宝箱の確認を終え、転移用の魔法陣へと歩み寄る。
魔法陣が足元で光を放ち、視界が一瞬白に塗り潰される━━次の瞬間には、外の空気を吸い込んでいた。
「…なんだ、杞憂だったか」
いつでも戦闘体勢に入れるよう警戒しながら周囲を見渡したが、敵影は無し。
先の襲撃の件が広まって様子見をしているのか、あるいは実力が判明して手出しするのを止めたか。
理由はどうであれ、余計な騒ぎが減るのは有難い。
報酬の素材を売却するため、ジンさんの車が待つ地点へ向かう。
この後は夜の繁華街を見て回りたいし、ジンさんにオススメの店でも聞いてみようかな。
「お待たせしました」
声をかけると、ジンさんが軽く頭を下げる。
「お疲れ様です、松原ハンター。ダンジョンは無事に攻略できましたか?」
「はい、中々楽しめましたよ。素材の売却をお願いできますか?」
「承知いたしました」
ジンさんが手続きを進めてくれて、素材はすぐに査定へ。
結果、買取額は7,700万元━━およそ17億円。前回のSランクダンジョンより、2億ほど高い。
「ジンさん、ありがとうございました」
「いえ、これも仕事のうちです。それで、この後は?」
「夜の繁華街を見て回りたいですね」
ジンさんは一瞬、表情を曇らせた。
「……先の襲撃の件もありますし、お出かけは控えた方がよろしいかと」
「他のお客がいるのに、店中で堂々と襲撃してきますか? それこそお店にも迷惑がかかりますし、警察だって動きますよね?」
「普通のハンターなら、そうでしょう。ですが、高ランクハンターや裏の連中となれば、暴力や権力、金の力で周囲を黙らせます」
「だとしても、俺には関係ありません。何故、被害者である俺が見境なく襲ってくる連中に気を遣って自粛しないといけないんですか?」
「……」
「そういう動きがあると分かっているなら、ハンターはハンターギルドが、裏の連中は警察が事前に対応するべきです」
「……そうですね。では、どのようなお店に行きたいですか?」
「うーん…最初は━━」
行き先を告げ、車の後部座席に乗り込む。
エンジン音とともに、車はダンジョン前の広場を静かに離れた。
窓の外には、夜の街の灯りが流れていく。
目標1,000PTを目指しています!
読了後、ブックマーク登録とリアクションを忘れずにお願いします。
一言でもいいので、レビューを書いてください。




