第8話 裏サイトの依頼
ダンジョンの入口前で待ち伏せ、問答無用で襲いかかってきたハンター達は、運良く生き残った数名を残し、全滅した。
戦場となったダンジョン入口前の広場には、大きな円形の焦げ跡だけが刻まれていた。
ハンター達の装備も所持品も、血肉の一欠片すら残さず、消し炭と化していた。
今回の襲撃に関する情報を聞き出すため、恐怖に染まった表情の生き残り達の元へと駆け寄り、【弱化魔法】を行使して拘束する。
抵抗や逃走を警戒していたが、彼等の表情は恐怖から絶望へと塗り替わり、力なく項垂れたまま、拘束に応じた。
奴等を引き連れて目的の人物を探していると、大声で俺の名を呼びながら駆け寄ってくるジンさんの姿を見つけた。
「松原ハンター! 無事ですか?」
「はい、この通り無事です。ジンさんは、避難されていたんですか?」
「喉が渇いたのでコンビニに寄っていたんです。戻ってみれば、大勢のハンターと松原ハンターが交戦中で……人が密集しすぎていて、手出しできなくて」
「そうでしたか。突然の襲撃で一瞬混乱しましたが、なんとか撃退できました。こうして情報源も確保できましたし」
「それは良かった。では、その者達とお話しさせていただけますか? どういう経緯で松原ハンターを襲撃したのか、私が聞き出しますので」
「よろしくお願いします」
素直に奴等を引き渡すと、ジンさんはその場で口を開いた。当然、中国語で話しているので、会話の内容は一切わからない。
短いやり取りを終えると、ジンさんはこちらに向き直った。
「結論を申し上げると、裏サイトで松原ハンターが他国を訪れた目的を探る依頼が出回っているそうです」
「そうですか。ですが奴等の態度は、目的を探るというより、俺を殺す気満々に見えましたよ?」
「手段を問わない依頼だからだと思われます。それに……これはあくまで私の予測ですが、松原ハンターを始末した後で適当な結果を報告し、依頼料を掠め取ろうと目論んでいたのかもしれません」
「確かに、あり得る話ですね。となると、依頼が取り消しにでもならない限り、監視や今回のような襲撃が続くということですか?」
「……それは何とも言えません。今回の顛末を知れば、依頼をキャンセルするか、監視に留めようとする者が大半でしょう。ただ……命知らずな馬鹿も、一定数はいますからね」
「ですね……」
「もし宜しければ、私から会長に掛け合いましょうか? 実力のあるサポートスタッフを増員して、ダンジョン攻略にもお供します。そうすれば、今回のような事態は未然に防げるかと」
有難い提案だが、まだ完全には信用しきれない相手とのダンジョン攻略は避けたかった。
ダンジョン内は無法地帯だ。
隙を見て仕掛けてくる可能性は否定できないし、そうでなくとも手の内を晒しすぎるのは得策ではない。
それに、四六時中狙われるのは煩わしいが、自身の成長と中国の戦力削減という観点で見れば、むしろ手出しする馬鹿が増えた方が都合がいい。
「お心遣いはありがたいのですが、現状維持で構いません」
「承知いたしました」
その後、現場に駆けつけた警察官や救急隊員への事情説明はジンさんに一任し、俺は車のドアに背を預けたまま、事態が収束するのを静かに待ち続けた。




