第1話 歓迎という罠
アメリカやロシアと並び、ハンター大国として名を馳せる中国。
その首都・北京に聳え立つ巨大な建物━━ハンターギルド本部の一室で、会長と秘書が向かい合っていた。
「リー・ウェイ会長。先程、日本のハンターギルドから連絡が入りました」
「内容は?」
「Sランクハンターの松原唯人が、我が国を訪れたいと申しているようです。おそらく、我が国のダンジョン攻略が目的かと」
「ハンターが他国を訪れる理由など、それしかあるまい━━とは言いたいところだが、今回はそれだけが目的ではないだろう」
「先の襲撃の件ですね」
「あぁ。向こうのギルド長から話を聞けば、襲撃者が我が国だと分かっているはずだ……で、そいつは一人で来るのか?」
「そのようです」
「ふむ……目的が読めないな。ハンター大国であり、事実上の敵国だと知りながら、わざわざ単身で乗り込んでくるというのか?」
「松原唯人がパーティーを組んだという情報もなく、現在も単独行動のようです。連れていく仲間がいないというのも理由の一つでしょうが……仮に同行を依頼したところで、わざわざ敵国へ足を踏み入れるような無謀者はいないでしょう」
「いや、今まさにその敵国へ乗り込もうとしている無謀者が一人いるわけだが?」
「……そうでしたね。それで、いかがなされますか?」
「我が国を訪れたいというなら、歓迎してやろう。しかし、目的が不明なままというのはよろしくない。万が一、余計な傷でも負うことになれば、ハンター大国の面子が丸潰れだからな」
「ごもっともです」
「目的を探るためにも、そいつを監視する者が必要だ」
「では、九龍か、傘下のクランに依頼しますか?」
「いや、主要戦力を割く必要はない。それに、前回の襲撃では傘下のクランマスター三人が、そいつ一人に仕留められている。なるべく消耗は避けたい」
「となると……裏の連中ですか?」
「それが望ましいだろう。万が一、監視を嫌ったそいつが連中を始末したとしても、こちらは何ら痛くも痒くもない」
「ただ、連中への依頼料は安くないですよ」
「金など、稼ぎ口はいくらでもある。それより、目的が判明した後の動きの方が重要だ」
「何をなされるおつもりで?」
「決まっている━━そいつを殺す。こちらは貴重な戦力を三人も失ったんだ。相応の報いは受けてもらわなければな」
「どのような手順で始末しますか?」
「まず、そいつの首に懸賞金を懸け、他のクランや裏の連中をけしかける」
「なるほど」
「それで片が付けば一番良いが、仮に生き延びたとしても、相当に消耗しているはずだ。そこへ我々の主要戦力を投入し、確実に仕留める━━まぁ、概ねそういったところだ」
「承知いたしました。では、そのように手配しておきます」
「頼んだぞ」
秘書が退室すると、リー・ウェイ会長はおもむろに立ち上がり、窓辺へと歩み寄った。
その窓ガラスに映り込んだ顔には、粘りつくような笑みが浮かんでいた。
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