第38話 黒鬼皇帝の戦利品、ギャルと乾杯
オーガ・キングの変異強化種━━オーガ・エンペラーを討伐し、目の前に出現した宝箱を開ける。
宝箱の中には、ボスの素材と並んで、鈍い光沢を湛えた漆黒のガントレットとグリーブが収められていた。
手に取ると、早速【鑑定】を発動し、詳細情報を確認する。
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・名称 黒鬼皇帝のガントレット
・分類 籠手
・効果
①魔法事象の破壊。
破壊確率は、自身の精神値と相手の知力値によって決まる。
②不壊特性
③筋力値+80、精神値+80
・等級 神話級
・名称 黒鬼皇帝のグリーブ
・分類 脛当て
・効果
①魔法事象の破壊。
破壊確率は、自身の精神値と相手の知力値によって決まる。
②不壊特性
③筋力値+80、精神値+80
・等級 神話級
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なるほど。
拳撃や蹴撃で、飛来する魔法を直接破壊できるのか。ただし破壊確率は、自身の精神値と相手の知力値によって複合的に決まるらしい。
広範囲殲滅魔法には対応しきれないだろうが、単体攻撃魔法であれば、Sランク相当の魔物やハンターが放った魔法でさえ破壊可能ということだ。
早速ハイオーガシリーズから黒鬼皇帝シリーズへ装備を換装し、魔法陣でダンジョンの外へ戻る。
そのまま出張所へ立ち寄り、オーガ・ベルセルク十七体分の素材を売却した。
「オーガ・ベルセルク十七体分の買取額は、1億7,000万になります。こちらのオーガ・エンペラーの素材につきましては、査定結果が判明次第、振り込ませていただきます」
「よろしくお願いします」
出張所での用事を済ませ、一度宿泊先のホテルへ戻る。
ダンジョン攻略でかいた汗を流してから、着替えて外へ出た。
「さて、夜飯でも食いに行くか」
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夜の繁華街に繰り出した俺は、目についた焼き鳥屋に立ち寄り、串と白飯と酒で腹を満たすと、今度はガールズバーかキャバクラを探して人通りの多い通りをぶらつき始めた。
「痛ッ……テメェ、どこ見て歩いてやがんだ! コラァ!」
前方から千鳥足で近づいてきた男と、肩がぶつかった。
かなり酔っているらしい。男は鼻先が触れそうなほど顔を近づけ、一方的にいちゃもんをつけてくる。
「すみませんでした。あの……少し、落ち着いてもらえますか」
下手に出てなだめようとするが、男の勢いは衰えるどころかむしろ増していく。
もうそろそろ手が出かねない雰囲気だった。
「お、おいッ! やめろって! す、すみません! 松原ハンター!」
最初は様子見で笑みを浮かべていた連れの二人が、いつの間にか顔面蒼白になっていた。
必死に男の肩を掴んで引き留めようとしている。
「ま、松原ハンター! 本当に申し訳ありません! こいつには後でよく言い聞かせますので!」
「分かりました。飲み過ぎは体に毒ですよと、本人にも伝えておいてください。それと……お二人も、調子に乗りすぎないように」
「「は、はい! 申し訳ありません!」」
頭を下げる二人を残してその場を離れ、再び女の子のいる店を探して歩き始めた、その時だった。
「あ、Sランクハンターの唯人じゃん! ねぇねぇ、ウチとおしゃべりしない?」
バニーガールの格好をした金髪の女の子に声をかけられた。店に来ておしゃべりしようという誘いだ。
「いいよ」
「やったー! お客さん全然捕まらなくて、めっちゃ怠かったんだよね〜。マジタイミング神っ」
めっちゃギャルだなぁ。
胸の谷間と網タイツから覗く尻をちらりと眺めながら、促されるままに店へ入る。
「ねぇ、飲み放題60分3,000円なんだけど、それでいい?」
「いいよ」
「じゃあ最初、何飲む? 私はコークハイ」
「俺はウーロンハイで」
「オーケー、ちょっと待ってて」
キャッチの女の子――ナナさんが一度奥へ消え、しばらくしてグラスを二つ持って戻ってきた。
「じゃあ、乾杯!」
「乾杯」
「あぁ美味しい〜。ねぇ、唯人は何しに広島へ来たの?」
「Aランクダンジョンを攻略しに来たんだ」
「あぁーあのゴツくて怖そうな……確か……オーガなんとかって奴を倒しに来たんだ。で、どうだった?」
「ボスを討伐して、完全攻略したよ」
「マジッ!? 私、Huntubeで討伐の配信とか見るけどさ、他のハンターって結構倒すのに苦労してて、ボスと戦ってる場面なんて一度も見たことないんだよね」
「Aランクからさらに難易度が上がるからね。それでも討伐できているなら、みんな凄いよ」
「魔物と戦えるってだけで、もう十分凄いと思う。私なら絶対無理。それで、ボスってどんな感じだったの?」
「オーガ・ベルセルクより、倍近くデカくて強かった。しかも十体のオーガ・ベルセルクを引き連れているから、数の上ではハンター側が不利なんだよね」
「それでも唯人は倒したんでしょ?」
「まぁ、一応Sランクハンターだから。それに、Sランクダンジョンのボス━━ファイアー・ドラゴンよりは弱いし、苦戦するほどじゃなかったよ」
「あ、そっか。唯人ってSランクダンジョンをソロで攻略したんだっけ。その時の動画とかないの?」
「Huntubeで配信とかやってないから、撮ってないんだよね」
「えぇ〜勿体無い! 唯人が配信とかしたら、再生数めちゃくちゃ回ると思うなぁ。かなり稼げるよ絶対」
「配信かぁ……」
その後もナナさんはハンター活動についてあれこれ質問を投げかけてきて、俺はそれに答えながら、気づけば楽しい時間を過ごしていた。




